滑稽おどけ)” の例文
「いや、まじめだよ。この擂粉木と杓子しゃもじの恩を忘れてどうする。おかめひょっとこのように滑稽おどけもの扱いにするのは不届き千万さ。」
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宿に歸ると、否でも應でもお芳の滑稽おどけた顏を見ねばならぬ。ト、其何時見ても絶えた事のない卑しい淺間しい飢渇の表情が、直ぐ私に
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と私のかおを見て微笑にッこりしながら、一寸ちょいと滑稽おどけた手附をしたが、其儘所体しょていくずして駈出して、表梯子おもてはしごをトントントンとあがって行く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あれは日がけの集めとしるく土手を行く影そぞろ寒げに、折ふし供する三五郎の声のみ何時に変らず滑稽おどけては聞えぬ。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
下男の太助はよく滑稽おどけを言うおもしろい男、愛子は小学校にも行かぬせいかして少しも人ずれのしない、何とも言えぬ奥ゆかしさのあるかあいい少女おとめ
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
植物あるいはまた滑稽おどけ人形の絵を切って湯に浮かせ、つぶつぶと紙面に汗をかくのを待って白紙しらかみに押し付けると、その獣や花や人の絵が奇麗に映る西洋押絵というものを買いに行った。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
大口開きて咬まんとする態すこぶる滑稽おどけたりといった。
口にさえ出せば再びそれを可愛い滑稽おどけなこと
橡の花 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
宿に帰ると、否でも応でもお芳の滑稽おどけた顔を見ねばならぬ。ト、其、何時いつ見ても絶えた事のない卑しい浅間しい飢渇の表情が、直ぐ私に
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あれはがけのあつめとしるく土手どてかげそゞろさむげに、をりふしともする三五らうこゑのみ何時いつかはらず滑稽おどけてはきこえぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
峠路とうげじで売っていた、さるの腹ごもり、大蛇おろちの肝、獣の皮というのはこれだ、と滑稽おどけた殿様になってくだんの熊の皮に着座に及ぶと、すぐに台十能だいじゅうへ火を入れて女中ねえさんが上がって来て
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よんどころなくほたほたしながら頭をでて遣るだけで不承ふしょうして、又歩き出す。と、ポチも忽ち身をくねらせて、横飛にヒョイと飛んで駈出すかと思うと、立止って、私のかおを看て滑稽おどけ眼色めつきをする。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
幇間ほうかんなかまは、大尽客を、獅子ししなぞらえ、黒牡丹と題して、金の角の縫いぐるみの牛になって、大広間へ罷出まかりいで、馬には狐だから、牛に狸が乗った、滑稽おどけはては、縫ぐるみを崩すと
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや何うも團子を喰べさせる事が出來ぬとて一日大立腹であつた、大分熱心で調製こしらへたものと見えるから十分に喰べて安心させて遣つて呉れ、餘程うまからうぞと父親の滑稽おどけを入れるに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すると、芳ちゃんは屹度きつと怒つた樣な顏をして見せるが、此時は此女の心の中で一番嬉しい時なので、又、其顏の一番滑稽おどけて見える時なのだ。が、私は直ぐ揶揄からかふのが厭になつて了ふので、其度そのたび
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いやどうも団子を喰べさせる事が出来ぬとて一日大立腹であつた、大分熱心で調製こしらへたものと見えるから十分に喰べて安心させて遣つてくれ、余程うまからうぞと父親てておや滑稽おどけを入れるに
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
例の枯荵かれしのぶの怪しい短冊の舌は、この時朦朧もうろうとして、滑稽おどけが理に落ちて、寂しくなったし、鶏頭の赤さもやや陰翳かげったが、日はまだ冷くも寒くもない。娘の客は女房と親しさを増したのである。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると、芳ちやんは屹度怒つた様な顔をして見せるが、此時は此女の心の中で一番嬉しい時なので、又、其顔の一番滑稽おどけて見える時なのだ。が、私は直ぐ揶揄ふのが厭になつて了ふので、其度そのたんび
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いやうも團子だんごべさせること出來できぬとて一日いちにち大立腹おほりつぷくであつた、大分だいぶ熱心ねつしん調製こしらへたものとえるから十ぶんべて安心あんしんさせてつてれ、餘程よほどうまからうぞと父親てゝおや滑稽おどけれるに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
滑稽おどけた眉毛を、寄せたり、離したり、目をくしゃくしゃと饒舌しゃべったが
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折ふし供する三五郎の聲のみ何時に變らず滑稽おどけては聞えぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)