波風なみかぜ)” の例文
四方よも波風なみかぜしづかにして、世はさかりとこそは見ゆれども、入道相國が多年の非道によりて、天下の望みすでに離れ、敗亡の機はや熟してぞ見えし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
前言ぜんげん前行ぜんこうただたわぶれのみと、双方打解けて波風なみかぜなく治まりのついたのは誠に目出度めでたい、何もとがめ立てするにも及ばぬようだが、私には少し説がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
十時近く、一家五人は、別れ別れになって、おのが居住にひきとったが、この一日は、なにかと波風なみかぜが立ち、百々子までが昂奮して、遅くまで寝つけなかった。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
私はこの氷を頂きていささかの眠りを求めさふらひき。またのあかつきより波風なみかぜややぎしを覚え申しさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
成程なるほど太郎たらうわかれてかほられぬやうにならば此世このよたとて甲斐かひもないものを、たゞまへをのがれたとてうなるもの御座ござんせう、ほんにわたしさへんだにならば三ぱうはう波風なみかぜたゝず
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
榮燿ええうくらすやに相見あひみさふらふ、さるにても下男げなん下女げぢよどもの主人しゆじんあしざまにまをし、蔭言かげごとまをさぬいへとてはさらになく、また親子おやこ夫婦ふうふ相親あひしたしみ、上下しやうか和睦わぼくして家内かない波風なみかぜなく、平和へいわ目出度めでたきところはまれさふらふ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
波風なみかぜまれて死人しにんのようになつて磯端いそばたたふれてゐました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
あゝ斯かる身は枯れても折れても野末のづゑ朽木くちきもとより物の數ならず。只〻金枝玉葉きんしぎよくえふの御身として、定めなき世の波風なみかぜたゞよひ給ふこと、御痛はしう存じ候
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
父祖ふそ十代の御恩ごおんを集めて此君一人にかへし參らせばやと、風のあした、雪のゆふべ蛭卷ひるまきのつかのも忘るゝひまもなかりしが、思ひもかけぬ世の波風なみかぜに、身は嵯峨の奧に吹き寄せられて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)