じゅん)” の例文
けれども終生しゅうせい芸に捧げじゅんずるというような激しい精進は得難いもので、ツボとかコツを心得てそれで一応の評価や声名が得られると
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
妻、その子、弟の彦之助も、相次いで、くれないの中に伏した。一族の三宅肥前、老臣の後藤将監基国、小森与三左衛門などもことごとじゅんじた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我輩の如きは、君も見て知っているだろうが、小鳥峠の上で、仏頂寺と見事に心中をげたんだ、仏頂寺の友誼ゆうぎじゅんじたんだぜ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
徳川のそんする限りは一日にてもそのつかうるところに忠ならんことをつとめ、鞠躬きっきゅう尽瘁じんすいついに身を以てこれにじゅんじたるものなり。
彼は知己の感を以て、その子弟を陶冶とうやせり、激励せり、彼は活ける模範となりて、子弟にさきだちて難にじゅんぜり。否な、子弟のために難にじゅんぜり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
『それは彼等の主張は間違っていたかもしれない。しかし彼等がその主張にじゅんじた態度は、同情以上に価すると思う。』
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
殊にその妻のルイズという女が、あだし男をはねつけて、夫にじゅんじて自害したというのは、何と見上げた心持であろう。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
正義にじゅんじた父をただの犬死にさせ、あのえられないほどなはじな最後にも相当していたような、醜い人間にしてしまおうとするのか。(俊寛につめ寄せる)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
戸浪は、探偵小説家の名をけがし、彼の変態的な純情(?)にじゅんじた、とでも結んで置きますか、ねえ帆村さん
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
真の憂国者は国にじゅんずるのは覚悟の前であるから、忠君愛国のためならば、火の中へでも水の中へでも這入はいる。進歩の途上にある国家の政治を行うものは、並み大抵の苦労ではない。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
既に気をまれていてたゝかう意志はないのだが、主人にじゅんずる一念だけで蹈み止まっていたのであろう、彼は法師丸の鋭く打ちおろす剣の光に、眼をつぶるようにして二三合斬り結んだが
うつくしさにじゅんじて悔いない君のほうこそ、人魚よりよっぽど美しいなんて。
人魚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「すみません。私をてないで、私にじゅんじてくださるとは、あなたは何という義に厚い方でしょう。しかし、今世ではどうすることもできないのですから、どうか来世をちかってください。」
連城 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
だが、すでにこの道に入った以上、左顧右眄さこうべんすべきではない。じゅんずることこそ、発見の手段である。親も子もやるところまでやりましょう。芸術の道は、入るほど深く、また、ますます難かしい。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その不義暴逆な国へ味方して、自ら孤立を招き、自ら滅亡を遂げたところで、誰があなたを武門の本道にじゅんじた人だとたたえましょう
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真に守ることを知る犬が、その天職にじゅんずる時は獅子と相当ることすらできるのであります。ムク犬はそのよく守ることを知る犬でありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
イネ国滅亡の日に、魂ある男子はもちろん、女子も共に祖国にじゅんじた。魂のない生残り者として生れた子等は、ついに永遠に、魂を持つ機会を与えられないのであろうか。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのまた生命は誰のでもい、職にじゅんじた踏切り番でも重罪犯人でも同じようにやはり刻薄に伝わっている。——そういう考えの意味のないことは彼にも勿論もちろんわかっていた。
寒さ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
秀吉のまえに、もろかったのは、かれらが結束を欠いていることにもよるが、そのため、根来にじゅんぜず、高野一山は、兵燹へいせんと、流血をまぬがれた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近藤勇は野猪やちょのような男である。感情に走りやすく、意気にじゅんじやすい代りに、事がわかれば敵も味方もなくカラリとれる、その剣の荒いこと無類、術よりは気を以て勝つ。
「職にじゅんじても?」
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
敵にくだるも、長政にじゅんじるも、去就きょしゅうは各〻が選むところで、いたずらにののしるべきでない。——この戦い、信長にも名分あり、長政にも名分がある。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多年の盟国めいこくたり親友たる信長の非業ひごうな死をかなしんで、その傷心のあまりには、ふと、腹でも切って、故人に、じゅんじそうな気ぶりすら見られたのである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、検使に首桶を渡して帰ると、郎党の七郎次郎も、介錯人の市之丞も、主人にじゅんじてともに後を追った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妙恵の末子、頼尚には弟にあたる宗応蔵主ぞうすは、まだいと若い仏門の人だが、父にじゅんじて、おなじく自殺した。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千種忠顕をはじめ、新田義貞、名和長年、ほか十指にも余るお味方武門が、たれひとり、宮にじゅんじようとはせず、また宮のお体を奪回するのきょにも出ていない。
ひとりの卑怯者ひきょうものもいなかった。ひとりの死汚しにぎたない者も出なかった。ことごとくみな信長にじゅんじた。外泊していた者まで駈けつけて来て、主君の側に忠誠の枕をならべた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし、わが子官兵衛が獄中に殺さるるとも、それ君命にじゅんずるは武士の本分。宗円とてなに悔もうぞ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荘丁いえのこ雇人も多かったが身を挺してじゅんじるほどな者もない。だから蓄えの金銀もすうの叔父おいが「残して行くのも、もったいない」と、馬の背に付け放題な始末であった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも城主長政は、もう内外に決死を宣言しているし、夫人も良人おっとじゅんじる覚悟でいるという。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやなお、みいくさのためにもあらず、正成にじゅんずるでもなく、領主の命ゆえと、すすまぬながら、ぜひなく応じて来た将士もある。それらの者とはここで別れるにくはない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし! わしがおまえにそんな悪の血を生みつけたとすれば、この父も、獄門の根に坐って、わが子の罪にじゅんじて舌を噛む。それが、社会へ対して、当然なるわしの申し訳だ。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ程の忠臣をじゅんじさせ、彼の忠魂に報いぬは、敵たりとも、心なきわざ、かつは中国の名族毛利に、全土の半ばをかしむるのも気のどくの至り、五ヵ国の移譲の約束であるが
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長にじゅんじて、二条城で戦死した嫡男信忠の次弟たる信雄か信孝にゆくであろうという見解には、何人なんぴとも疑う余地のないこととしていたが、その二人のうちの、いずれが立つか、また
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われわれ一族、主君山城守様にじゅんじて、ここに討死して果てましょうとも、土岐とき源氏このかた、数百年、われわれに至るまで、不義不道の賊子は一族から遂に出しませんでした。誇りですッ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それも、泣く子にあめねぶらすように、われわれを鎮撫ちんぶに来るというのだ。俺たちが、君家の名を重んじ、武士の第一義にじゅんじようとするのが、大石殿には、唯、無謀な血迷い事と見えるらしい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……どうかよろこんでください、私は、だんだんと、新政府にも重用され、国家のため身をじゅんじるつもりでおります。微力ですが、兄上とても、いつまでかような職業をさせてはおかんつもりです。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゅんじよう。師の大不幸に殉じるのも、ふかい因縁だ、運命だ)
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)