つき)” の例文
そうして、森からは弓材になるまゆみつきあずさが切り出され、鹿矢ししやの骨片の矢の根は征矢そや雁股かりまたになった矢鏃やじりととり変えられた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
信州高遠たかとお町少林寺の境内につきの古木がある。これを矢立の木という(木の下蔭)。矢をもって神を祭り武運を祈るというのも、また領内の安全の祈祷であろう。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彦山村からつきへ抜ける薬師峠の山路に沿うて、古ぼけた一軒茶屋が立つてゐます。その店さきに腰を下ろして休んでゐるのは、松井佐渡守の仲間ちゆうげん喜平でした。
小壺狩 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
かたわらのつきの木を楯にとり、大竹藪を背後にし、青竹の杖を差しつけたまま、頼春は途方にくれて立った。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
洋燈ランプめづらしいが、座敷ざしきもまだ塗立ぬりたての生壁なまかべで、たかし、高縁たかゑんまへは、すぐにかしつき大木たいぼく大樹たいじゆ鬱然うつぜんとして、めぐつて、山清水やましみづ潺々せん/\おとしづかながれる。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
てもてましものを山城やましろたかつきむらりにけるかも 〔巻三・二七七〕 高市黒人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
かれは道を隔てたつきの木の林の中へ身をひそめて、じっと二つの門を注視していた。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
つきと杉とがいつしよに生えていつしよに育ち
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
あのつき弓のように伏すにしても
「そのため不愍にも右源次は、不思議な盲人の杖で突かれ、命を奪われつきの木の根もとに……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ならかつら山毛欅ぶなかしつき大木たいぼく大樹たいじゆよはひ幾干いくばくなるをれないのが、蘚苔せんたい蘿蔦らてうを、烏金しやくどうに、青銅せいどうに、錬鉄れんてつに、きざんでけ、まとうて、左右さいうも、前後ぜんごも、もりやまつゝみ、やまいはたゝ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一〇 つき
その周囲をかこんでいるのは、えのきつきほおの巨木で、数百年をけみしているらしかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)