棺桶くわんをけ)” の例文
尤も近頃は少し彌太郎に飽きられて居るやうで——どうかしたら、あの女ぢやありませんか。親父が棺桶くわんをけに入つて居ると知らずに——
しな硬着かうちやくした身體からだげて立膝たてひざにして棺桶くわんをけれられた。くびふたさはるのでほねくぢけるまでおさへつけられてすくみがけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だが、まだ、これから棺桶くわんをけを買ひに行く富岡をつかまへて、一緒になる話は、さしひかへなければならない。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
着飾つた坊さん、はだし位牌いはい持ち、ひつぎ、——生々しい赤い杉板で造つた四斗だるほどの棺桶くわんをけで、頭から白木綿で巻かれ、その上に、小さな印ばかりの天蓋てんがいが置かれてある。
野の哄笑 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
あの救貧院の棺桶くわんをけに押し籠められて、貧民の墓の中で腐つて了ふのより、どれだけましか知れない。
持參ぢさん致し所化僧しよけそう一人檀家三人差添さしそへ千住燒場光明院へ火葬くわさうの者送込候處其後所化僧檀家だんか棺桶くわんをけすて置逃去候由光明院くわうみやうゐんより掛合越候へども當寺に於て右樣の覺え御座なく候に付此段御屆おんとゞけ申上おき以上いじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自然しぜん法則はふそく依然いぜんとしてもとまゝです、人々ひと/″\猶且やはり今日こんにちごとみ、い、するのでせう、甚麼立派どんなりつぱ生活せいくわつあかつきあらはれたとしても、畢竟つまり人間にんげん棺桶くわんをけ打込うちこまれて、あななかとうじられてしまふのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
法被はつぴてらとも棺桶くわんをけいた半反はんだん白木綿しろもめんをとつて挾箱はさんばこいれた。やが棺桶くわんをけ荒繩あらなはでさげてあかつちそこみつけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
越前守殿コリヤ平左衞門何と斯樣かやうの屆書是有る上は其方儀そのはうぎ主税之助と申合しまがいして其死骸をかくさん爲淺草了源寺よりのおくりなりといつはりを構へ其手段てだてをせし所光明院にて差拒さしこばみし故彼處へ棺桶くわんをけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しなかうしてつめたいかばねつてからもあしそこ棺桶くわんをけいたまいへだてただけでさら永久えいきうつちあひせつしてるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一昨夜亥刻よつどき前淺草阿部川町了源寺れうげんじ切手を持參致し所化僧しよけそう一人檀家三人差添さしそへ棺桶くわんをけおくり越候處掛あひ中右棺桶を置捨おきすてに致し候間相改ため候に女の死骸しがいにて變死へんしまぎれ御座なく候依て御檢使けんし願ひたてまつり候以上いじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)