くれ)” の例文
遺恨に相違ありません谷間田はアノ、傷の沢山有ると云う一点に目がくれて第一に大勢で殺したと考えたから夫が間違いの初です成る程
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
長「真暗だから見えねえや、鼻アつままれるのも知れねえくれとこにぶっつわッてねえで、燈火でも点けねえ、縁起がわりいや、お燈明でも上げろ」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「天のはら富士の柴山木のくれの」までは「くれ」(夕ぐれ)に続く序詞で、空にそびえている富士山の森林のうす暗い写生から来ているのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「おめえ、うすっくれえところにボンヤリ立ってるから、ちっとも気がつかなかった。オオオオ、足へ水をかけてしまったが、まっぴらごめんなヨ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
俺たちは、そのぉ、朝のくれえうちから、草鞋わらじばきの尻端折で、吉植です、ええどうかよろしく、ええどうかよろしくさ。あっはっは、やりきれねえ、やりきれねえ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
こうみえてもまだ貴樣等きさまら臺所だいどころ土間どまにおすはりして、おあまりを頂戴ちやうだいしたこたあ、たゞの一どだつてねえんだ。あんまおほきなくちたゝきあがると、おい、くればんはきをつけろよ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
旦那様だんなさま、お荷物にもつつてめえりやした、まあ、くれとこなにてござらつしやる。』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くれえなら暗えで、我慢の仕様もあるけれど、暗えところへこんなものが舞い込んで来た日にゃあ、てんで提灯の火も見えやしねえ、お城のやぐらがどの辺にあったんだか、その見当もつかねえんだ。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
金糸でもつてヨくれエ血色の、森の夢なざ
多「それでもわしア斯うやってくれえ所で言葉を掛けちゃア済まねえが、あんたは本当の吉田八右衞門様にちげえねえかな」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
くれしげをほととぎすきてゆなりいまらしも 〔巻二十・四三〇五〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
空が半分くれエ頃
甚「何うだってたれえを伏せるのだよ、提灯ちょうちん其方そっちへ、えゝくれしんを切りねえ、えゝ出しねえ、出た/\オヽ冷てえなア、お手伝いでござえ、早桶をグッと引くのだ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はるさればくれ夕月夜ゆふづくよおぼつかなしも山陰やまかげにして 〔巻十・一八七五〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼奴あいつ己のこせえた棚の外から三つや四つ擲ったッて毀れねえことを知ってるから、先刻さっき打擲ぶんなぐった時、わざッと行灯のかげになって、くれい所で内の方からたゝきやアがったのは
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多「踏抜きはしやせん、踏抜きをしねえように朝くれえうちに貝殻や小さい砂利だの瀬戸物の砕片かけがあると、ほじくって置き、清潔きれいに掃きやんすから平坦てえらになって居りやす」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わしくれい処で何か云っていても分らねいから、其処そこへ出やんしょう、これ八右衞門さん、アはゝゝゝ、どうもはアだますことは出来ねえもんだ、久しぶりで逢ったが、おめえ己を忘れたかい
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)