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「やあ作平さくべいさんか、」といって、その太わくの面道具おもてどうぐを耳からねじり取るよう、ぎはなして膝の上。口をこすって、またたいて
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何しろ太刀山たちやまみたいな強力ごうりきに押えられているんでゲスから子供に捕まったバッタみてえなもんで……ウッカリすると手足がげそうになるんです。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
最初は神尾の腕にとりすがってみたが、それをぎ離されると、今度は着物に取付きました。その着物が破れると、今度は井戸桁に取付きました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「秋茄子がこのように、たくさんにった。またすこしんで、冬の間に喰べられるよう漬けこんで置こう。いつもの籠を持って来てすこしいでたも」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて石榴も、葡萄も、柿も、柑子かうじも、目に立つ果実は、ことごとく枝から蔓からぎ取られる時が来た。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「これはしぼりたてですから召しあがって下さい。サラダもぎたてです。」場長さんはまた附け加えた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
と刀も抜かず、粂太郎は二度ほど身をかわしたが、一足飛び込み入身いりみになると、酒兵衛の刀をぎ取った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一人は「腕の喜三郎」という綽名あだなで呼ばれている三十二、三歳の男で、紡績工場の職工だった時、機械にはさまれてぎとられたとかで右の腕が附け根から無かった。
そうして突然いきなり「やろう」というや否や、自分の手から、碁石をぎ取るように手繰たくりました。私は何の気もつかずに、「よろしい」と答えて、すぐ打ち始めました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは、今の今まで信じてゐたものをぎ取られて行く驚愕のきはみであつた。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
塀を越すところまでぎつけた時、——こら待てツ——と、背後からお糸坊をぎ取られてしまつたんで、——はずみを喰つてあつしの身體は塀を越して向うの往來に轉げ落ち、肝腎のお糸坊は
我等の手と足とをいだでないか
プロパガンダ (新字新仮名) / 加藤一夫(著)
戴宗たいそうと宋江とは、騒ぎをきいてここへ馳けつけ、ほこる李逵をむりやりにぎ離して、なだめつすかしつ、やっと元の琵琶亭びわていの方へ連れて戻って行った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでも彼はぎょっとした。半身を床の上に起して、いきなり細君の手から髪剃をぎ取った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
弁信は、そうはさせじと死力を出して相争うこと前の如くであるが、結局、盲法師は神尾の敵ではありません。ついに井戸桁にしがみついた両の手をぎ離されてしまいました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
無残むざんや、なかにもいのちけて、やつ五躰ごたい調とゝのへたのが、ゆびれる、乳首ちくびける、みゝげる、——これは打砕うちくだいた、をのふるつたとき、さく/\さゝらにざう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このお波め! 手前この間あたいの小袖の、左片袖だけぎ取って、自分うぬの小袖へくっつけたくせに! 知らねえと思うと大あて違い、手前の小袖は縞物だのに、妾の小袖は飛白かすりなんだからね。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
日本では老年としより議員といふと、義歯いればの口で若いをんなの名前を覚える位が精々だが、このキヤノン爺さんは、性来うまれつき歯が達者なので、何よりもぎ立ての玉蜀黍を食ふのが一番好物だといつてゐる。
私はその葉の一つ二つを、早速にぎ採っている誰かから貰った。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
寧子は戻って来ると、二つの籠の一つを母に渡し、畑の土に母と並んで、自分もいでは籠へ入れた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一時間ののち、先生と私は目的どおり市を離れて、村とも町とも区別の付かない静かな所をあてもなく歩いた。私はかなめの垣から若い柔らかい葉をぎ取って芝笛しばぶえを鳴らした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
梅雨の寺湿らひふかし栗の穂とあとの梅の葉のにほひして
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのまま咽喉のんどにあてた剃刀をぎ取ったのは丹平で。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
井村は、いで振り捨てるように首を振る。
むつまじく畑に並んだ老母と嫁の手に、がれた茄子なすは、七ツ、十、二十といつか籠を瑠璃色るりいろに埋めた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭先に少しばかりのはたけがあって、そこに茄子なすとうもろこしが作ってあります。この茄子をいで食おうかと相談しましたが、漬物つけものこしらえるのが面倒なので、ついやめにしました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お通から自分の刀をぎ取ろうとして、彼女の手頸てくびをつかまえかけたが、狂った馬の後脚は、その二人を刎ね飛ばして、竿さお立ちの姿勢になると、鼻をふるわしてまた高くいななき
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして年からいえば叔父おじおいほどの相違があるのに、二人して能く座敷の中で相撲すもうをとっては姉からおこられたり、屋根へ登って無花果いちじくいで食って、その皮を隣の庭へ投げたため
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「鼻がげそうだの」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)