按配あんばい)” の例文
各防寨の内側では、居酒屋や門番小屋などが衛舎に変わっていた。その上この暴動は、きわめて巧妙な戦術によって按配あんばいされていた。
ふふ、京伝という男、もうちっと気障きざ気たっぷりかと思ったら、それ程でもなかった。あの按配あんばいじゃ、少しは面倒を見てくれるだろう。
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、敬称している三人のすぐれた子があり、ふもとのあちこちには、百戸、二百戸、また六、七百戸といった按配あんばいに、部族部族の村があった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし宇乃は榾火の按配あんばいや、串を廻すをよく教えてから、そこを出て隠居所へ戻った。——客というのは、奥山大学であった。
ただ眼のさきが、もやもやして、心臓がコトコトと響を立てて躍っているみたいな按配あんばいで、あれは、まったく、かなわない気持のものだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
モンタージュまた一つの場面の推移をはこぶコマ数の按配あんばい、テンポの緩急といったようなものに対する画家の計画には、ちょうど映画監督
山中常盤双紙 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして地べたに茶飲茶碗ちゃのみちゃわんほどの——いやもっと小さい、さかずきほどのあなをほりその中にとってきた花をいい按配あんばいに入れる。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それをどういうふうに按配あんばいしたらいいのか——そうしてしばらくのあいだ、それぞれに割付けねばならない、役割の事で悩まねばならなかった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その中で水蒸気の自然対流を適当に按配あんばいして結晶を作って見ると、わけなく天然のものに負けないような綺麗きれいな雪の結晶の片割れが出来たのである。
雪を作る話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
又は造物つくりもの床几しょうぎ等を出したり入れたり按配あんばいしたりする加減に注意するので、そんな仕事のない能では、初めからしまいまで唯座っているきりである。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
蝶子の姿を見ると柳吉は「どや、ええ按配あんばいに煮えて来よったやろ」長い竹箸たけばしで鍋の中をき廻しながら言うた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
有名なる夜会の事とて一千有余名の来賓につるその献立の如何いか按配あんばいされ、厨人ちゅうじんの如何に苦心せしやは料理法に重きを置かるる者の等しく知らんと欲するところならん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
叙述の曖昧あいまいな点はこれを明快な描写となし、資料が断片的な場合は不完全な類話を巧みに按配あんばいして無縫の天衣を織りだしたのではあるが、総じて提供せられた材料には
『グリム童話集』序 (新字新仮名) / 金田鬼一(著)
昨夜は十二時頃に雨が少し降った様子であったが、朝見ると好い按配あんばいに晴れていた。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「そうか。まず、誰にも見付からなくて、いい按配あんばいだったな」
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
健作——いい按配あんばいだったな、天気がよくて(立ちどまる)
探偵戯曲 仮面の男 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「ウム、空模様さえよければ、夜旅をかけて矢走やばせ渡船わたしに夜をかすのもいいが、この按配あんばいでは危なッかしい……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盃というのは二つだけ、あとの者は湯呑で、飲めない与平と他の二人が、量の按配あんばいをしながら酌をしてまわった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ことにも、あの、「つくしにね、鈴虫が鳴いてるって言ってやって」以来、僕の気持は急速にはりつめて来ているような按配あんばいなのだし、それにまた、君への手紙に
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
咄嗟とっさに浜子の小言を覚悟して、おそるおそる上ると、いい按配あんばいに浜子の姿は見えず、父が長火鉢の前に鉛のように坐って、泣いている新次をぼんやりながめながら、煙草たばこを吹かしていました。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「風がなくてよい按配あんばいだった」
五階の窓:02 合作の二 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「それはそうじゃ。はなはだわしの方が損じゃ。帰ったら醤に、そういっていたと伝えてくれ。しかし神聖なるバーター・システムのちかいの手前、こっちでもぬかりなく按配あんばいしておいたと、あの醤めにいってくれ。さあ、引取るがよろしかろう」
そこで明晩の手筈ですが、なにしろそんな按配あんばいで、ただお身装みなりを変えたくらいでは、とても露顕ろけんせずにはおりませぬ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何かよい容れ物があるまいかと、かっぽれは前から思案にくれていたというような按配あんばいなのだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「並木町の天川だったそうだが」と大六は答えた、「それがじつは、おふくろが、やっぱりあの火事で焼け死んじまったそうで、すっかり途方にくれてるような按配あんばいだったもんだから」
ちいさこべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「なにさ、そのほうは残念ながら、まだ手懸りはねえんだが、いい按配あんばいに、弦之丞様の居所がやっと分った」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は聊斎志異りょうさいしいの中の一つの物語を骨子こっしとして、大いに私の勝手な空想を按配あんばいし、「清貧譚せいひんたん」という短篇たんぺん小説に仕上げて、この「新潮」の新年号に載せさせてもらった事があるけれども
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
客が多くてもぎっしり詰めず、ゆとりをおいて飲めるように按配あんばいしてあるらしい。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
職方の配置、頭数の振りあては、持場によってちがうゆえ、それは各組のかしら棟梁とうりょう按配あんばいにまかせおく。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小出さんの話のようすがどうもそんな按配あんばいだったよ、あの父子のあいだでは、どうやら平五の勝ちらしい、いや、小出一族ひっくるめて、と云うほうがいいかもしれない、平五のやつ
末っ子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこはお互いにいい按配あんばいの事であった。
薄明 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いい按配あんばい、蜂須賀家の探りでもないらしい、行ってしまったな——と思っていると、また同じ所から
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんのために逢うのかわからないという按配あんばいだったからだ。
屏風はたたまれた (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
久濶きゅうかつの情を誇張して、いかにも親しげな表情である。もう少し弦之丞が白い歯をみせれば、その図に乗って肩を叩き、あわよくば襟首にでもからみついてきそうな按配あんばい
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——他藩との折衝が多く、それには政治的なかけひきが付きものだし、ときには幕府の重職とも交渉に当らなければならない、話術にも特別な技巧が必要だろうし、酒席の設けかたにはむずかしい按配あんばいがあるそうだ」
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あの按配あんばいでは、さだめし斬合いになるだろうと思っていたら、イヤに馴れ合ってしまやがった」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは私がよく按配あんばいを致します。
つづいてまたも同じような一そうが漕ぎ寄せて来た。盧はギョッとして見廻すばかり……。何のことはない、三ぞう三ツどもえに、こっちの舟へからみ絡み漕ぎめぐっている按配あんばい
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかなか易々やすやすとは一致をみないままに、ここはお互いが、心の推移を待っているといった按配あんばいに——一先ず寧子の縁談は、家庭のうちでは、打ち切られたすがたになっているのであろう。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも拝領はいりょうしたその刀は、武田家伝来たけだけでんらいの名刀般若丸はんにゃまる尺七、八寸の丁字ちょうじみだれ、抜くにも手ごろ、斬るにも自在な按配あんばい、かの泣き虫蛾次郎がじろうがじまんする、あけびづるをまいた山刀などとは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いい按配あんばいだこと、明日あしたもこの分で晴れてくれると嬉しいけれど……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「は、は、は、罪はないな。だが、そこで居眠っていちゃ危ないから、今おじさんがいい按配あんばいにしてやろう、こっちへおいで、こっちへ——さあさあここならいくら寝ぼけたって腰掛から落ちる心配はない」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど、いい按配あんばいによりかかる物があった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)