いよい)” の例文
それにしても、文字もんじが彫ってあると云うのはすこぶる面白い問題で、文字もんじの解釈ができたら、𤢖の正体はいよいよ確実に判りましょう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こう考えて諦めようとすればする程、いよいよ作って見たくて仕様がなくなった。そうして、後にはこれが一種の強迫観念になってしまった。
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そしていよいよ日本植物志を世に出す準備を整えた。その時私の考えでは凡そ植物を知るにはその文章も無論必要だが図の方が早解りがする。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
いよい今夕こんせき、侯の御出立ごしゅったつまり、私共はその原書をなでくりまわし誠に親に暇乞いとまごいをするようにわかれおしんでかえしたことがございました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それに就けても、改心せずに死なしたのが、いよいよ残念で、早く改心さへしてくれたらば、この災難はのがれたに違無い。いや私はさう信じてゐる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いよいよ不可思議な大和めぐりだと自らあきれる、しかしこの狸の舌はなかなかに愛嬌あいきょうなめらかだ。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
いよいよ奥常念にかかる、麓には偃松で編んだこわれ小舎が傾いている、その辺は平坦な草原で、椀を伏せた形の石山を、草の中から天に向けて躍起しているのは、奥常念岳である
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
それで此方のオブジェクションが除かれた訳でも何んでもなかつたが、当時の私には美事にり去られたもののやうな気がしたと見えて、それぢやといふので、いよいよ会ひに行く事にする。
吉右衛門の第一印象 (新字旧仮名) / 小宮豊隆(著)
『何を言つてやがるんだよ。』とお大は血走つたやうな目で床屋をねめつけ、肉と血とでふくらんだ頬をいよいふくらましたが、『何とでも言ふがいよ。口は重寶なものさ。』ともう焦燥いら/\して口がけず
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
然れども彼れは又自己は如何ほど窮するとも友人の苦痛は決して坐視すること能はざる深くして切なる同情を有したりしなり。余は親しく之を其友人に聴きていよいよ透谷を尊敬するの念を長じたりき。
透谷全集を読む (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
殊に新参ながらも入婿の事情を薄々知っているお菊は、五百両の金の型に身を売ったような若いお内儀さんの不運にはいよいよ同情していた。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
恋愛曲線! これからいよいよ恋愛曲線の説明に移ろうと思うが、その前に一言、心臓が普通どんな方法で研究されて居るかを述べて置かねばならない。
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そこでいよいよ新に名所を造るとすれば土質桜に適し、かつ永久に何物かからの脅威もなく、その四周が景致に富み、いずれから行くにも便利な土地を選び
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
いよい兵端へいたんを開く時には浜御殿はまごてん、今の延遼館えんりょうかんで、火矢ひやげるから、ソレを相図あいずに用意致せとう市中に布令が出た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
女は唯いよいむせびゐたり。音も立てずしたりし貫一はこの時忍び起きて、障子の其処此処そこここより男を隙見すきみせんと為たりけれど、つひこころの如くならで止みぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
八ヶ嶽等の大嶽にして、高度いづれも一万尺に迫り、必ずしも我不二に下らざるが如し、不二は自らその高さを意識せざる謙徳の大君なり、裾野より近く不二を仰ぐにいよいよ低し
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
年上で嫉妬深いお杉は、明暮あけくれに夫の不実を責めて、ある時はお前を殺して自分も死ぬとまで狂いたけった。重蔵はいよいよお杉に飽いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが、はからずも、先日、ある人から、君と雪江さんとが、いよいよ結婚するという通知を受取ったのである。
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
今は疑ふべくもあらず、彼はまさしく人目を避けんと為るなり。すなはち人を懼るるなり。故は、自らとがむるなり。彼は果して何者ならん、と貫一はいよいよ深く怪みぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ソコデ母子のあいだと云うものはちゃんと魂胆こんたんが出来て仕舞しまって、ソレカラいよいよ出ようと云うことになる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
極めて稀れにこの苞腋から小梗が出て、いよいよその花序が聚繖的である証拠を提供する事がある。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
天はいよいよ明るい、氷の海は一層の白を加うると共に、一分の硬味を減じて来た雪になったのである、玉屑ぎょくせつ累々ともいうべき空に懸れる雪の大路を無形の手で、そりを縦横に掻き廻しはじめたと見え
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「ハイあれです、たしかにあれです、私はたしかに見ました」と辻褄つじつまのあわぬ返事、主人はいよいよ不思議そうに眉をひそめたが、やがてにわかに笑い出して
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この会話をきいた時、自分は待ちに待った機会がいよいよ到来したことを知った。自分は急ぎ足で彼の文化住宅に近づき、やがてこっそり家の中へしのびこんだ。
鼻に基く殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
仰げば無量無数の惑星恒星、らんとして、吁嗟ああ億兆何の悠遠いうえんぞ、月は夜行性のの如く、けていよいよ白く、こゝに芙蓉ふようの蜜腺なる雲の糸をたぐりて、天香を吸収す、脚下紋銀白色をなせる雲を透かして
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
以テ正確ニシテ従フベキト為サズ反覆討尋其正ヲ得テ以テ時ニ或ハ書説ニ与シ時ニ或ハ心ニ従フ故ヲ以テ正ハいよいヨ正ニ誤ハますます遠カル正ナレバ之ヲ発揚シテ著ナラシメ誤ナレバ之ヲしりぞけテ隠ナラシム故ニ身ヲ終ルト雖ドモ後世ニ益アリ是レ書ヲ以テ家屋トズシテ書ヲ友トナスノ益ニシテ又植学ヲ修ムルノ主旨ハ則チ何ニ在ルナリ
𤢖はの雪の夜に、何処どこからか若い女をさらって来たのであろう。お葉はいよいよ驚きあやしんで、なおひそかに成行なりゆきを窺っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いよいよ私は腹部を解剖することにしました。円形のドームを見るような女の腹にメスを入れたとき、男の頸部前面に出て居る所謂咽喉仏が一度上下致しました。
三つの痣 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そうして、いよいよ二人きりになりました時も、私にとっては、あの柔かいしとねがいわば針のむしろで御座いました。
秘密の相似 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
心柄こころがらとは云いながら誠にお気の毒な事で、それからのちいよいの奥様が若様を殺したに相違ないと決定して、今まで優しい方だ、美しい奥様だと誉めた者までが、継子殺しの鬼よ
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
然しながら、午後警視庁へ帰って来た霧原警部の顔には緊張の色がみなぎって居た。朝井刑事はその顔を見て、いよいよ今日は「特等訊問法」が行われるのだと推察した。
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
仏壇にあった骨袋を調べたら、奥歯ばかりしかなかったので、いよいよ推定が当った訳だ。さすがに谷村も、人の血で汚された歯骨をもとの所へ置く気にならなかったのだろう。
謎の咬傷 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「そうだ、これで第三者の存在がわかった。けれど、それがため事件はいよいよ面倒になった」
謎の咬傷 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
信之はいよいよ慌てて水を取りに走り、それを沢の口へそそぎかけました。沢は凡そ二時間あまりも意識を恢復しませんでしたが、やっと、眼をさますと、むっくり起きて、室内の一隅を指し
暴風雨の夜 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
深窓に育った妹も遂に恐しい世間にほうり出されてしまいまして、私の家の言い伝えのとおり、妹の唖であることが世間へ知れる日が一家の全滅だという迷信がいよいよ実現されたように思われました。
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
いよいよ三日目になって繃帯を取ることになりました。
痴人の復讐 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)