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ひだりづま
ふりがな文庫
“
左褄
(
ひだりづま
)” の例文
お角は二十四五の年増盛り、柳橋に
左褄
(
ひだりづま
)
を取っている頃から、江戸中の評判になった女で、その
濃婉
(
のうえん
)
さは水の
滴
(
したた
)
るばかりでした。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
極
(
きま
)
り
羞
(
はづ
)
かしさうに離れて行くのも好い気持ではなかつたが、それよりも
左褄
(
ひだりづま
)
を取つてゐた
曾
(
か
)
つての自分に魅力はあつても
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
廓
(
さと
)
に
馴
(
な
)
れた
吾妻下駄
(
あずまげた
)
、かろころ
左褄
(
ひだりづま
)
を取ったのを、そのままぞろりと青畳に敷いて、
起居
(
たちい
)
に
蹴出
(
けだ
)
しの水色
縮緬
(
ちりめん
)
。伊達巻で素足という芸者家の
女房
(
おんなあるじ
)
。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
摺
(
す
)
りきれた浪人の草履、女の白い
踵
(
かかと
)
、
袴
(
はかま
)
の折目正しい
白足袋
(
しろたび
)
、
裾模様
(
すそもよう
)
、と思うと——あだな
左褄
(
ひだりづま
)
、物売りの疲れた足。
脚
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この夢八こそは、当り矢のお艶、というよりも、諏訪栄三郎の妻お艶が、ふたたび浮き世の浪に押され揉まれて、慣れぬ
左褄
(
ひだりづま
)
を取る仮りの名であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
我
(
われ
)
この草のことをば八重より聞きて始めて知りしなり。八重その頃(明治四十三、四年)
新橋
(
しんばし
)
の
旗亭花月
(
きていかげつ
)
の裏手に
巴家
(
ともえや
)
といふ看板かかげて
左褄
(
ひだりづま
)
とりてゐたり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
私は
従姉
(
いとこ
)
をたずねていって、
暗澹
(
あんたん
)
たる有様に胸をうたれて途方にくれたことがある。これが、あのはなやかに、あでやかに見える、
左褄
(
ひだりづま
)
をとる
女
(
ひと
)
の
背
(
せびら
)
に負う影かと——
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そうして、およそ
裾
(
すそ
)
さばきのもつ媚態をほのかな形で象徴化したものがすなわち
左褄
(
ひだりづま
)
である。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
暗い入口に人のささやきがうごめき、お
洒落
(
しゃれ
)
な旅行者の捨てた煙草に六本の手が伸び、同じ男と女に何度も会い、めりんす二〇三高地の輸出向日本芸者がしゃなりと自動車から
左褄
(
ひだりづま
)
を取り
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
柳橋
(
やなぎばし
)
で
左褄
(
ひだりづま
)
とったおしゅんという
婀娜物
(
あだもの
)
ではあるが、今はすっかり
世帯染
(
しょたいじ
)
みた小意気な
姐御
(
あねご
)
で、その上心掛の至極いゝ
質
(
たち
)
で、弟子や
出入
(
ではい
)
るものに目をかけますから誰も悪くいうものがない。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
小僧等の目をさへ驚かしたる篠田方の
二個
(
ふたり
)
の
女性
(
をんな
)
、老いたるは
芸妓殺
(
げいしやころし
)
を以て満都の口の
端
(
は
)
に
懸
(
かゝ
)
りたる石川島造船会社の職工兼吉の母にて、若きは近き頃迄
烏森
(
からすもり
)
に
左褄
(
ひだりづま
)
取りたる花吉の変形なり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
お角は二十四五の年増盛り、柳橋で
左褄
(
ひだりづま
)
を取つてゐる頃から、江戸中の評判になつた女で、その
濃婉
(
のうゑん
)
さは
滴
(
したゝ
)
るばかりでした。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ここで栄螺を放した方は、上の壇に栄螺が乗って、下に横にして供えられた
左褄
(
ひだりづま
)
の人形を、私とは御存じないの。」
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
次第に昔、
左褄
(
ひだりづま
)
を取っていたらしい面影も浮かんで来て、何とも不思議な存在であることに気がついたのであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お半二度
左褄
(
ひだりづま
)
取る気やらまた晴れて
活弁
(
かつべん
)
と世帯でも持つかその
後
(
ご
)
の事はさっぱり承知致さず。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
河合の手を組んで、
左褄
(
ひだりづま
)
を、
自暴
(
やけ
)
にはしょって、稲荷裏の家へ、よろめいて帰って来た。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若くて死んだお母さんは、柳橋でお
良
(
りょう
)
さんと名乗り、
左褄
(
ひだりづま
)
をとった人だった。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その時、人ごみのなかを
左褄
(
ひだりづま
)
をとっていそぐ粋な姿があった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
学校の
帰途
(
かえるさ
)
、
驟雨
(
にわかあめ
)
に逢えば、四辻から、紺蛇の目で
左褄
(
ひだりづま
)
というのが出て来て、
相合
(
あいあい
)
で手を
曳
(
ひ
)
いて帰るので、八ツ九ツ時分、梓は
酷
(
ひど
)
く男の友人に
疎
(
うとん
)
じられた。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女たちのなかには、京橋の八丁堀で産れて、長く東京で
左褄
(
ひだりづま
)
をとっていたという一人もあった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
三十そこそこでしょうが、昔
左褄
(
ひだりづま
)
を取ったことがあるとかで、抜群の年増振りです。
銭形平次捕物控:049 招く骸骨
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
内の都合で、生れると直ぐ
音信
(
いんしん
)
不通の約束で他へ養女に遣わしたのが、年を経て風の
便
(
たより
)
に聞くと、それも
一家
(
いっけ
)
流転して、同じく、
左褄
(
ひだりづま
)
を取る身になったという。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かつて深川で
左褄
(
ひだりづま
)
を取っていた師匠は、万事ゆったりしたこの町の生活気分が気に入り、大弓場の片手間に、昔し覚えこんだ清元の稽古をして
約
(
つま
)
しく暮らしているのだったが
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
卓子台
(
ちゃぶだい
)
の前へ、右のその三角帽子、外套の
態
(
なり
)
で着座して、
左褄
(
ひだりづま
)
を
折捌
(
おりさば
)
いたの、部屋着を
開
(
はだ
)
けたのだのが、さしむかいで、盃洗が出るとなっては、そのままいきなり、泳いで
宜
(
よろ
)
しい
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし新橋や柳橋に
左褄
(
ひだりづま
)
を取るものが、皆が皆まで玉の
輿
(
こし
)
に乗るものとは限らず、今は世のなかの秩序も
調
(
ととの
)
って来たので、二号として顕要の人に囲われるか、
料亭
(
りょうてい
)
や待合の、主婦として
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
間もなく
落籍
(
ひか
)
され、銀子もその身分を知ったのだったが、ずっと後になって、彼はその女に二人の子供をおいて
行方
(
ゆくえ
)
知れずになり、自身の手で子供を教育するため、彼女は新橋で
左褄
(
ひだりづま
)
を取り
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
昨夜ふと一人の友達をつれて川沿いの
家
(
うち
)
に現われ、師匠も小夜子も、時代は違っても、昔しは同じ新橋に
左褄
(
ひだりづま
)
を取っていたこともあるので、話のピントが合い、楽しい半夜を附き合ったのであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
左
常用漢字
小1
部首:⼯
5画
褄
漢検1級
部首:⾐
13画
“左”で始まる語句
左
左様
左右
左手
左樣
左程
左舷
左袒
左側
左衛門尉