しょう)” の例文
「あれ、あの石橋しゃっきょうの欄干に腰かけて、さっき散々さんざん、わが輩を苦しめやがったさい坊主と行者のきゅうしょう一が、まだ執念ぶかく見張っている」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らは強いてみずからを愚弄ぐろうするにあらずやと怪しまれる。世に反語はんごというがある。白というて黒を意味し、しょうとなえて大を思わしむ。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大きいものは一こくるれば小さきものは一しゃくも容れ得ぬ。しかしいかにしょうなるも玩具がんぐにあらざる限りは、皆ひとかどの徳利と称する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しょう松浦王はまだ立ったままだが、温和な微笑をかおに漂わして、謙遜に、しかも何処かに闊達な意気をひそめている。口数が極めて少い。やさしい眼だ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
人間にんげんもうすものは兎角とかく自分じぶんちから一つでなんでもできるようにかんがちでございますが、じつだいなり、しょうなり、みなかげから神々かみがみ御力添おちからぞえがあるのでございます。
長「腹などは立たんからお云いよ、大それたとは思いません、しょうそれたぐらいに思います、云って下さい」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼の奇怪な顔は火焔の為に真赤に彩られ、大きな口が顔一杯にいとも不気味な嘲笑を浮べていた。彼こそはこの世に火のわざわいを持って来たしょう悪魔ではないかと思われた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「で、その何でありますが、そうそう、あの電話中に、長期性時限爆弾の大きさについてのお話がありましたが、極くしょうなるものに至ってはコンパクトぐらいだそうで……」
世にはこれよりも更にだいなる悪、大なる罪を犯しながら白昼大手を振りて、大道だいどう濶歩かっぽする者も多かるに、だいわすれてしょうを拾う、何たる片手落ちの処置ぞやなど感ぜし事も数〻しばしばなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ことしょうなりといえども、こんな奴等も剛勇を誇る日本国民の一部かと思うと心細くなる。半死半生の病人や色の黒くなるのを困る婦女子ではあるまいし、太陽の光線ひかりがなんでそんなにこわいのだ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
観音丸かんのんまるは船体しょうにして、下等室はわずかに三十余人をれて肩摩けんますべく、甲板デッキは百人をきてあまりあるべし。されば船室よりは甲板デッキこそ乗客を置くべき所にして、下等室は一個の溽熱むしあつ窖廩あなぐらに過ぎざるなり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「君はあの時、ビラに寺小屋てらこやしょうの字を書いたね?」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
だいしょう十三人云々うんぬん
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さらには、げんしょう二、阮小五、阮小七、白勝はくしょうといったような頭立かしらだったもの十七人に、部下百余人の徒党だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むこうのしょうデスクの上においてある、古くなって黒っぽくみえる、もようのある銀の箱、その中におさめてある二千数百年まえの、ふるいふるい巻き物、それがふしぎな魔力をもっていて
おれは二十面相だ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ここには、崔道成さいどうせいという悪僧と、きゅうしょう一という行者ぎょうじゃの悪いのが、わがもの顔に住んでおる。……わしらはその二人に寺を奪われて、やっと粟粥あわがゆをすすって生きているばかりなのじゃ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)