小造こづくり)” の例文
その養子というのは、日にやけた色の赤黒い、巌乗がんじょうづくりの小造こづくりな男だっけ。何だか目の光る、ちときょときょとする、性急せっかちな人さ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年のきません二人の子供は家の潰れる訳ではないが、白島村の伯父多右衞門たえもんが引取り、伯父の手許てもとで十五ヶ年の間養育を受けて成人致しまして、姉は二十二歳おとゝは十七で、小造こづくり華者きゃしゃな男で
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
してをとこみゝと、びんと、すれ/\にかほならべた、一方いつぱう小造こづくりはうではないから、をんな随分ずいぶんたかい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
十歩ばかり先に立って、一人男のつれが居た。しまがらは分らないが、くすんだなりで、青磁色の中折帽なかおれぼうを前のめりにした小造こづくりな、せた、形の粘々ねばねばとした男であった。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蛇目傘じゃのめを泥に引傾ひっかたげ、楫棒かじぼうおさえぬばかり、泥除どろよけすがって小造こづくりな女が仰向あおむけに母衣ほろのぞく顔の色白々と
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はやまことにお情深い、もっとも赤十字とやらのお顔利かおききと申すこと、丸顔で、小造こづくりに、ふとっておいで遊ばす、血の気の多い方、髪をいつも西洋風にお結びなすって、貴方
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母親はやがて、繻子しゅすの帯を、前結びにして、風呂敷包ふろしきづつみを持つてあらわれた。お辻の大柄な背のすらりとしたのとは違ひ、たけも至つて低く、顔容かおかたち小造こづくりな人で、髪も小さくつて居た。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「いらっしゃい、誰方どなた、」と可愛い目で連合つれあいの顔をちょいと見る、年紀としは二十七だそうだが、小造こづくりで、それで緋の菱田鹿の子の帯揚というこのみであるから、二十はたちそこそこに見える位
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちやがなかつたら、うちつてつてな。鐵瓶てつびんをおかけ。」と小造こづくり瀬戸火鉢せとひばち引寄ひきよせて、ぐい、と小机こづくゑむかひなすつた。それでも、せんべい布團ぶとんよりは、居心ゐごころがよかつたらしい。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三十五六の屈竟くっきょうおのこ、火水にきたえ上げた鉄造くろがねづくりの体格で、見るからに頼もしいのが、沓脱くつぬぎの上へ脱いだ笠を仰向あおむけにして、両掛の旅荷物、小造こづくりなのを縁にせて、慇懃いんぎん斉眉かしずく風あり。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(おゝ、御坊様おばうさま、)と立顕たちあらはれたのは小造こづくりうつくしい、こゑすゞしい、ものやさしい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(おお、お坊様ぼうさま。)と立顕たちあらわれたのは小造こづくりの美しい、声もすずしい、ものやさしい。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これがために不思議に愛々しい、年の頃二十三四の小造こづくりやせぎすなのが、中形の浴衣の汗になった、垢染あかじみた、左の腕あたりに大きな焼穴のあるのを一枚引掛ひっかけて、三尺の帯を尻下りに結び
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小造こづくりな、十五六とも見える、女が一人、蝶鳥なんどのように、路を千鳥がけに、しばらくね廻っておりましたが、ただもう四辺あたりは陰にこもって、はげしい物音がきこえますほど、かえってしんとして
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)