小菊こぎく)” の例文
なかいたやうな……藤紫ふじむらさきに、浅黄あさぎ群青ぐんじやうで、小菊こぎく撫子なでしこやさしくめた友染いうぜんふくろいて、ぎんなべを、そのはきら/\とつてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
阿關は紙入れより紙幣いくらか取出して小菊こぎくの紙にしほらしく包みて、録さんこれは誠に失禮なれど鼻紙なりとも買つて下され
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と紙入を出して萠黄金襴もえぎきんらんの金入から取出しました、其の頃はガクで入って居りますから、何十両だか勘定の分らん程ざくりと掴出つかみだして小菊こぎくの紙に包み
「お内儀さん、綺麗な小菊こぎくを一枚頂けませんか、あつしの鼻紙ぢや、お孃さんが痛々しい」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
荷風は『歓楽』の中で、「其の土地では一口にねえさんで通るかと思ふ年頃の渋いつくりの女」に出逢であって、その女が十年前に自分と死のうと約束した小菊こぎくという芸者であったことを述べている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
……ほかなんにもなしに、撫子なでしこ小菊こぎく模様もやう友染いうぜんふくろはいつた、ちひさいまる姿見かゞみと、それだけはひつてたんです。……おこゝろおもられますこと。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
廣小路ひろこうぢいづればくるまもあり、阿關おせき紙入かみいれより紙幣しへいいくらか取出とりいだして小菊こぎくかみにしほらしくつゝみて、ろくさんこれはまこと失禮しつれいなれど鼻紙はながみなりともつてくだされ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手紙は小菊こぎくを一枚、小さく疊んだもので、中には文字がたつた三行
白衣びやくえかすかに、撫子とこなつ小菊こぎくの、藤紫地ふじむらさきぢ裾模様すそもやう小袖こそでを、亡体ばうたいけた、のまゝの、……友染いうぜんよ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
薄紅ときいろ撫子なでしこと、藤紫ふじむらさき小菊こぎくかすかいろめく、友染いうぜんそつ辿たどると、掻上かきあげた黒髪くろかみ毛筋けすぢいて、ちらりと耳朶みゝたぼと、さうして白々しろ/″\とある頸脚えりあしが、すつとて、薄化粧うすげしやうした、きめのこまかなのさへ
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
およしなさればいのに、りもののかごに、つてたしぼりの山茶花さゞんくわしろ小菊こぎく突込つツこんで、をかしくつまんだり、えだいたり、飴細工あめざいくではあるまいし……つゐをなすもののひとがらもちやうい。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)