小戻こもど)” の例文
つかつかと行懸ゆきかけた与吉は、これを聞くと、あまり自分の素気そっけなかったのに気がついたか、小戻こもどりして真顔まがおで、眼を一ツしばだたいて
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さっき「今日は」と真先に立って来た娘がしげしげと私を振りかえって見ていたが小戻こもどりして不意に私を抱き上げて何も言わないで頬ずりした。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
るせ、かなんかで、入口いりぐち敷居しきゐこしをかける、れいのがりてくつをぬがせる、ともいほどむつましいとふはれのこと旦那だんなおくとほると小戻こもどりして、おともさん御苦勞ごくらう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つか/\と行懸ゆきかけた與吉よきちは、これをくと、あまり自分じぶん素氣そつけなかつたのにがついたか、小戻こもどりして眞顏まがほで、ひとしばだたいて
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と、かへつて坂下さかした小戻こもどりにつか/\とちかづいたが、あまそばると、もやが、ねば/\としてかほきさうで、不氣味ぶきみひかへた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小戻こもどりして、及腰およびごしに、ひつくやうにバスケツトをつかんで、あわててすべつて、片足かたあしで、怪飛けしとんだ下駄げたさがしてげた。どくさうなかほをしたが、をんなもそツとつてる。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんでございます、まあ、」と立停たちどまつてたのが、ふたツばかり薄彩色うすさいしき裾捌すそさばきで、にしたかごはなかげが、そでからしろはださつ透通すきとほるかとえて、小戻こもどりして、トなゝめに向合むきあふ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、滝のある位置は、柳の茶屋からだと、もとの道へ小戻こもどりする事に成る。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)