いぶか)” の例文
勿論もちろん外形ぐわいけいあらはれてもなにいぶかしいてんはないが、すこしくわたくし異樣ゐやうおぼえたのは、さう噸數とんすう一千とんくらゐにしてはその構造かうざうあまりに堅固けんごらしいのと
しおらしい女人ひとかと思いめぐらすときに、あまりに違った有様に、もしや違った人のページを繰って見たのではないかといういぶかしみさえも添った。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
五十だ、君はきっと、その年でといぶかしく思うだろうね。実際親父はもう、半分位気が違っていたのかも知れない。若い時分からの女と酒の毒でね。
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
(間)消えたように無くなったのか、始めから此処に居なかったのか、人々は互いにいぶかり合うほどに、素早く身を隠してしまったのでござります。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時代と云ふものは誰が作るのかと、自分はいぶかしくなつた。彼が消極的な言葉を吐くと、その反対に自分は何か勇しいことが云ひたくてならなかつた。
現代詩 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
いずれもいぶかりながらそちらへ駆け付けて見ると、一間四方もあるような四角な天然石を立てて、それに何やら彫刻してある。側によってその字を読むと、英文と日本文とで
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
栗原は主馬より三つ年長である、彼は主馬の話を聞いていぶかしさに眼をすぼめた。
山椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
老人はいぶかしさうな眼つきをしながら、ぢつと杜子春の顔を見つめました。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いぶかしげに家の中を見廻す。ふと、二階の声を聞きつける。
世帯休業 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
と私はいぶかつた。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
成程なるほど此處こゝから大佐等たいさらすまへる海岸かいがんいへまでは三十以上いじやうとりでもなければかよはれぬこの難山なんざんを、如何いかにして目下もつか急難きふなん報知ほうちするかといぶかるのであらう。
「今日はほんとに変な日じゃ」長者は左膳の走って行くその大仰おおぎょうな様子を見て、いぶかしそうに云うのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
親友の口からそうきわめがつけられているのを、見も逢いもせぬ私が、何故なぜ美人にしてしまうのかと、いぶかしまれもしようが、私が作物を通して知っている一葉女史は
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
老人はいぶかしそうな眼つきをしながら、じっと杜子春の顔を見つめました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と私はいぶかった。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
其人そのひといま新聞しんぶん題目だいもくとなつて世人よのひといぶか旅路たびぢこゝろざしたといふ、その行先ゆくさき何地いづこであらう、その目的もくてきなんであらう。
そういうのへ、九女八はいぶかしそうに顔を向けた。静枝へいっているのではないと思ったからだった。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
紋太郎は心中いぶかりながら、逢っては面倒と思ったので林の中に身を隠し木の間から様子を窺った。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
理智光院は最初は解らないかのように、いぶかしそうに眺めたが、急に地上へひざまずいた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おや君はどなたです?」その少年はいぶかしそうに訊いた。その言葉は土人語である。
それにしても甥御が変装して、闘牛場へわざと出て行かれて、角に突かれて何故死なれたかと、閣下にはいぶかしく思われましょうが、それは甥御にこの私が謎をかけたからでございます。
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その人猿は最初のうちは地に落ちている肉の片をいぶかしそうに見ていたが、とうとう片手で取り上げて口へ持って行って噛み付いたが、生肉の味とは似ても似つかぬ微妙な味に驚いたか
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とお島は意外だったので、黒布くろぬのの中で声を上げた。しかしその次の瞬間には、黒布くろぬのは既に取り去られていた。お島は鏡中の世界を見た。三人の男女がいぶかしそうに、人形を取り上げて調べている。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「竹原入道の二人の息子、この頃の振る舞いちといぶかしく……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
茅野雄には浪江の云った言葉が、いぶかしいものに思われた。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とオースチン師はいぶかしそうに、相手の顔を見詰めたが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その様子を鬼王丸はいぶかしそうに眺めていたが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「何んだ?」と信玄はいぶかしそうに訊いた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、ややあって、いぶかしそうにいった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と佐原嘉門がいぶかしそうに訊いた。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、いぶかしそうに早瀬が訊くと
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いぶかしそうにそういった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と信玄はいぶかしそうに
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)