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嬌態
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きょうたい
ふりがな文庫
“
嬌態
(
きょうたい
)” の例文
みんなほっと上気して眼を潤ませて、起ち居それぞれに
嬌態
(
きょうたい
)
の
粋
(
すい
)
を見せるという次第だから、若さまの御満悦は断わるまでもなかろう。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女はごくすらりとした身体つきで、服の着つけもよく、誘惑的な
挑戦
(
ちょうせん
)
的な姿だったが、わざとらしい馬鹿げた
嬌態
(
きょうたい
)
をいつも見せていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
女性に
殊
(
こと
)
に著しい美的
扮装
(
ふんそう
)
(これは
極
(
きわ
)
めて外面的の。女性は
屡〻
(
しばしば
)
練絹
(
ねりぎぬ
)
の外衣の下に
襤褸
(
つづれ
)
の肉衣を着る)、本能の如き
嬌態
(
きょうたい
)
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それは栄養不良の子供が一人前の女の
嬌態
(
きょうたい
)
をする正体を発見したような、おかしみがあったので、彼はつい失笑した。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
この時、この
嬌態
(
きょうたい
)
を覗いてくれるものは如法の闇だけ、岩太郎はお滝の柔らかい膝に
凭
(
もた
)
れ、お峰の忍び駒で、近頃覚えたばかりの小唄を
唸
(
うな
)
って居たのです。
銭形平次捕物控:245 春宵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
肌のすてきに美しい裸女が一人、一糸もかけずに
嬌態
(
きょうたい
)
を長椅子にもたせて、一種異様な笑みを浮べている。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雅子の悩ましく唇をそらせたそんなポーズは、もとより悩ましい印象を意識してのものではないだろうが(と私は思ったが)、それはまさに
嬌態
(
きょうたい
)
には違いなかった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
卒業式、卒業の祝宴、初めて席に
侍
(
はべ
)
る
芸妓
(
げいしゃ
)
なるものの
嬌態
(
きょうたい
)
にも接すれば、
平生
(
へいぜい
)
むずかしい顔をしている教員が
銅鑼声
(
どらごえ
)
を
張
(
は
)
り上げて調子はずれの
唄
(
うた
)
をうたったのをも聞いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
葉子のような天性の
嬌態
(
きょうたい
)
をもった女の周囲には、無数の無形の恋愛幻影が想像されもするが——それよりも彼女自身のうちに、恋愛の卵巣が無数に
蔓
(
はびこ
)
っているのであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
嫂のこの
恍
(
とぼ
)
け
方
(
かた
)
はいかにも嫂らしく響いた。そうして自分にはかえって
嬌態
(
きょうたい
)
とも見えるこの不自然が、
真面目
(
まじめ
)
な兄にはなはだしい不愉快を与えるのではなかろうかと考えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
太く短い環、古代の貞節な女に似て垂れ下った醜い肩、まるで病み疲れてサタンに生育を阻止された女が奇妙な
嬌態
(
きょうたい
)
をして、流行の衣裳と近代の手管をもって私の前に現れたのだ。
恋の一杯売
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
その中の
嬌態
(
きょうたい
)
自
(
おのずか
)
ら春の如き温情を含む。門の外にて
小
(
ち
)
さな声「あのあまっちょめが」
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
だが、あなたが、あんまり私の話を避けよう避けようとするものだから、そしてあんな
嬌態
(
きょうたい
)
でごまかそうとするものだから、僕もつい興奮してしまったのですよ。
勘弁
(
かんべん
)
して下さいね。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
極端な無邪気は極端な
嬌態
(
きょうたい
)
に近い。彼女は彼にごく素直にほほえんでみせた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
良人の機嫌を取るという事も、現在の程度では
狭斜
(
きょうしゃ
)
の女の
嬌態
(
きょうたい
)
を学ぼうとして及ばざる位のものである。男子が教育ある婦人を
目
(
もく
)
して心
私
(
ひそ
)
かに高等下女の観をなすのは甚しく不当の評価でない。
婦人と思想
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
蝋
(
ろう
)
のように青褪めた中から潤んだ眼を一パイに見開きつつ、白い歯を誇らし気に光らして見せたのであったが、そうした彼女の
嬌態
(
きょうたい
)
を、ポケットに両手を突込んだまま見下しているうちに、私はフト
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
家鴨
(
あひる
)
の愉悦するような女の
嬌態
(
きょうたい
)
が、しきりとくすぐったく思えた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女たちが示した
嬌態
(
きょうたい
)
や叫び声の強烈な印象が、眼にも耳にもなまなましく
灼
(
や
)
きついていて、それが神経をかき乱し、血をわきたたせた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
(
嬌態
(
きょうたい
)
の魂とキリストとの対話が。)——クリストフはそれに胸を悪くした。ダンスの足取りをしている
豊頬
(
ほうきょう
)
の天使を見るような気がした。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼は今まで
如何
(
いか
)
なる名匠の美人画にも単なる艶冶や
嬌態
(
きょうたい
)
を示したものに、これほど心を引かれたことはなかつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
朧
(
おぼろ
)
げに感得していたものの、先きは人も知った人格者であり、
尊
(
とうと
)
いあたりへも伺候して、限りない光栄を
担
(
にな
)
っている博士なので、もし葉子の
嬌態
(
きょうたい
)
に魅惑された人があるとしても
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ミサコが廻転扉から出納口につかつかと進むと、コケットな彼女の
嬌態
(
きょうたい
)
に
狼狽
(
ろうばい
)
した行員が自覚を失った指先で紙幣をかきあつめた。奥の大
卓子
(
テーブル
)
の支配人が彼女にかるく会釈をかえした。
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
俺より外の男には心を移さないと誓って呉れ……併し、あの女はどうしても私の頼みを聞いては呉れない。まるで商売人の様な巧みな
嬌態
(
きょうたい
)
で、
手練手管
(
てれんてくだ
)
で、その場その場をごまかすばかりです。
白昼夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
時雄は黙ってこの
嬌態
(
きょうたい
)
に対していた。胸の騒ぐのは無論である。不快の情はひしと押し寄せて来た。芳子はちらと時雄の顔を
覗
(
うかが
)
ったが、その
不機嫌
(
ふきげん
)
なのが一目で解った。で、すぐ態度を改めて
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
半
(
なか
)
ば細君の
嬌態
(
きょうたい
)
に応じようとした津田は
半
(
なか
)
ば
逡巡
(
しゅんじゅん
)
して立ち留まった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二つの芽の一つというは
嬌態
(
きょうたい
)
であって、他の一つは恋である。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
凡庸な
嬌態
(
きょうたい
)
と利己心とを現わし、自分の肉体に印刻されてる恐ろしい力にたいしては、なんらの観念をももっていない。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それは娘たちがなにか摘むときに小指だけ離して美しく曲げる、あの手の
嬌態
(
きょうたい
)
ほどの曲り方である。
日本婦道記:小指
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、顔と、むき出しの五体とで、何とも云えぬ
嬌態
(
きょうたい
)
を示した。蘭堂はそれをマザマザと見た。うら若き女性の余りにも大胆なる肉体的表情をマザマザと見た。そして、恐ろしさに震え上った。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「あらまア先生!」と言って、笑って体を
斜
(
はす
)
に
嬌態
(
きょうたい
)
を呈した。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その上にまた、無心より来る
嬌態
(
きょうたい
)
を持っていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それでもなお彼女は、弱々しい点もあり、日々の風向きに身を任せることもあり、一種の
嬌態
(
きょうたい
)
を見せることもあった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
初めは適当に受けながしていたが、しだいに熱を帯びてくる女の囁きと、その柔軟なからだで表現する不謹慎な
嬌態
(
きょうたい
)
とは、ともすると万三郎の意志を
昏
(
くら
)
ませ、抵抗の力をぬき去ろうとした。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いつも自然のままだった。そして単純な怠惰な彼女も、時によると、別に悪気なしに
嬌態
(
きょうたい
)
を作ることを知っていた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼女は小さな女らしい直覚によって、コレットの
嬌態
(
きょうたい
)
とレヴィー・クールが彼女に寄せてる
執拗
(
しつよう
)
な
追従
(
ついしょう
)
とをクリストフが苦しんでるのを、よく見て取った。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
たとい最初には、つとめて笑顔をして彼を迎えたとはいえ、それは小娘の本能的な
嬌態
(
きょうたい
)
からだった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
多くは彼よりも年上であって、その
嬌態
(
きょうたい
)
で彼を
怯
(
おび
)
えさせ、その拙劣なひき方で彼を失望さした。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかも、だれかが——だれでも構わない——道に姿を現わすと、また
嬌態
(
きょうたい
)
が始まった。すぐに彼女は、元気よく口をきき、笑声をたて、騒ぎたて、変な表情をし、人目を引いた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そしてやや露骨すぎるそういう
嬌態
(
きょうたい
)
は、クリストフを当惑させ悩ました。それらの大胆な二人の娘は、ふだん家で彼をとり巻いてる無愛想な人々の顔つきとは、まったく別種の観があった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それには少しも
嬌態
(
きょうたい
)
を装う考えは交っていなかった。浮気心は少しも頭に浮かんでいなかったし、もし浮かんだにしろそれは知らず知らずにであった。彼女の求めるところはわずかなものだった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
“嬌態”の意味
《名詞》
艶かしく色っぽい態度やさま。
(出典:Wiktionary)
嬌
漢検1級
部首:⼥
15画
態
常用漢字
小5
部首:⼼
14画
“嬌”で始まる語句
嬌
嬌羞
嬌声
嬌瞋
嬌笑
嬌名
嬌艶
嬌然
嬌嗔
嬌娜