威丈高いたけだか)” の例文
威丈高いたけだかにわめき立てると、執拗しつような上にも執拗にいどみかかりましたので、等しく群衆がはらはらと手に汗をにぎった途端——。
庸三も口をきいたが、黒須は腹にすえかねることがあるように、何か威丈高いたけだかな態度で、金属のケイスから、両切りを一本ぬいてふかしていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ズカズカと茶袋ちゃぶくろが一人入って来ました。入って来ると共に茶袋は、店前みせさきに落ちていた紙片を手早く拾い取って、威丈高いたけだかに店の者をにらみつけます。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「その方はここをどこだと思う? すみやかに返答をすれば好し、さもなければ時を移さず、地獄の呵責かしゃくわせてくれるぞ」と、威丈高いたけだかののしりました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「だってえ、おさらいといっても、僕は今日まだ、何にも先生にしてもらっていないんだもの。」と、鼻にかかった声でいうと、夫人はすぐ威丈高いたけだか
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「シッ、静かに、その黒い男を見ましたな。」と、青腫れのした爺さんは威丈高いたけだかになって、女を捕えようとした。
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お約束が違いはしませんか……と、引きとめられた四人の侍は、一時に、作爺さんを振りかえって、威丈高いたけだか——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
交際つきあえば悪びれた幇間ほうかんになるか、威丈高いたけだか虚勢きょせいを張るか、どっちか二つにきまっている。瘠我慢やせがまんをしてもひがみを立てて行くところに自分の本質はあるのだ。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ここで彼は、アカーキイ・アカーキエウィッチならずとも、ぎょっとしたに違いないような威丈高いたけだかな声を張りあげながら、どしんと一つ足を踏み鳴らした。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
正してあんた知ったこッちゃないッといてと威丈高いたけだかになって云ったわてほんまにせてやってるねんで
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
とそういって威丈高いたけだかになった倉地には葉子はもう目もくれなかった。愛子ばかりが葉子の目には見えていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
新兵が古兵にトッチメられるように威丈高いたけだかしかられたり、正月の年始が遅れたとか近火の見舞をいわなかったとかいうので勘気をこうむったりしたものもあった。
祖五郎はこれを受取り、ひらいて見ましたところ、頓と文意が分りませんから、祖五郎は威丈高いたけだかになって
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と畳みたる枕を抱えながら立ち上る。そんなことを言わずに、これ、出してくれよと下から出れば、ここぞという見得みえに勇み立ちて威丈高いたけだかに、私はお湯に参ります。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
見ると受附は硝子窓の中に威丈高いたけだかに突立って、自分を眼下に睥睨へいげいしている。自分は控所を出た。右へ折れて、廊下伝いに診察場へ上がったら、薬のにおいがぷんとした。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
威丈高いたけだかで、熱狂的で、祖師をも食ろうという末世の坊主にも甚だ似ているようにしか考えられぬ。
安吾史譚:01 天草四郎 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「宣戦を布告する……どんなものだろう?」と彼が肩をそびやかして威丈高いたけだかになるのに対して
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
ミンナがいらだって、威丈高いたけだかに答え返そうとすると、ケリッヒ夫人は事もなげに、もう他のことを言っていた。しかしそのとげは残っていて、ミンナはそれに傷つけられた。
判事は威丈高いたけだかに云って、テーブルの下から、もみくちゃになった一枚の浴衣を取出し、幸吉の前に差出した。見ると、浴衣の袖や裾に、点々として黒い血痕が附着している。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
神職 (あばき出したる形代かたしろわら人形に、すくすくと釘のささりたるを片手に高く、片手に鉄槌をかざすと斉しく、威丈高いたけだか突立上つッたちあがり、お沢の弱腰よわごしどうる)汚らわしいぞ! 罰当ばちあたり。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
閑子はそれが野村の決定的な欠点であるかのように威丈高いたけだかな口をいた。野村の手紙で閑子より先にあらましを知っていたのだが、聞いていてミネは、ますます絶望せずにいられなかった。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
私の前の女中ニウラのような十八、九の女が威丈高いたけだかに声をかける。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
船長ノルマンは、威丈高いたけだかになって、竹見をきめつけた。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
威丈高いたけだかになって迫りますと
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
が、不思議な感激と陶酔とに心の底までを腐らされていた雄吉は、威丈高いたけだかになるばかりに
青木の出京 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
男はますます威丈高いたけだかに、仁王立ちになって怒号しつづける。外の見物があの男をどうかしろと騒ぎ出す。おかげで折角の真打ちの語り物がとうとう滅茶々々にされてしまった。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
威丈高いたけだかになって、今しも、ムク犬を追って、外へ出ようとする犬殺しを呼び留めました。
そういって倉地は言葉の激昂げきこうしている割合に、また見かけのいかにも威丈高いたけだかな割合に、充分の余裕を見せて、空うそぶくように打ち水をした庭のほうを見ながら団扇うちわをつかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
磯五は、そういうお駒ちゃんの眼を無視して、ますます威丈高いたけだかになっていった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しょせん逃げられないとさとった彼は、目を相手の上にすえると、たちまち別人のように、凶悪なけしきになって、上下じょうげの齒をむき出しながら、すばやくほこをかまえて、威丈高いたけだかにののしった。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鴎外の気質はおおよそ呑込のみこんでるから、威丈高いたけだかに何をいおうと格別気にも留めなかったが、誰だか鴎外に注意したものがあったと見えて、その後偶然フラリと鴎外を尋ねると、私の顔を見るなり
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
警部が威丈高いたけだかに呶鳴りつけた。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
常陸介は威丈高いたけだかになって、君が斯くまで言う甲斐のないお方であろうとは存じませなんだ、只今伏見へお越しなされたら、二度と都へはお帰りになれませぬ、高野へお登りなさるゝか
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
直也は、吃々きつきつとどもりながら、威丈高いたけだかののしった。が、荘田はビクともしなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
電灯のの下に熟柿じゅくしのように赤くなってこっちを向いて威丈高いたけだかになっていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
二人の悪ざむらいは、威丈高いたけだかになりました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、威丈高いたけだかに罵りました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ややともするとおびえて胸の中ですくみそうになる心を励まし励まし彼れは巨人のように威丈高いたけだかにのそりのそりと道を歩いた。人々は振返って自然から今切り取ったばかりのようなこの男を見送った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
田山白雲が威丈高いたけだかになりました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)