天満てんま)” の例文
旧字:天滿
渡辺祥益といって天満てんまに住んでいた四条派末期の先生の作で、その画風は本格的で温柔そのものであった。図は箕面みのおの滝の夏景である。
大阪では天満てんまの与力内山彦次郎が殺されたというに、まだその犯人がわからない、江戸では、上使の中根一之丞が長州で殺された。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鈴木町すゞきまちの代官根本善左衛門ねもとぜんざゑもん近郷きんがう取締とりしまりを托したのが一つ。谷町たにまちの代官池田岩之丞いはのじよう天満てんまの東照宮、建国寺けんこくじ方面の防備を托したのが二つ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「それッ、江戸の廻しもの唐草銀五郎、またしきりにそこらをぎまわる天満てんま浪人や、手先の犬どもを、一もう打尽だじんにしてしまえ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京の祇園会ぎおんえ大阪おおさか天満てんま祭りは今日どうなっているか知らないが、東京の祭礼は実際においてほろびてしまった。しょせん再興はおぼつかない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
やがて天満てんまから馬場の方へそれて、日本橋の通りを阿倍野まで行き、それから阪和電車の線路伝いに美章園という駅の近くのガード下まで来ると
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
大塩中斎おおしおちゅうさいに諌言をし、一揆(天満てんまから兵を挙げ、大阪の大半を焼き打ちにかけ、悪富豪や城代を征め、飢民を救済しようとしたので、世人、天満焼てんまやけと称したが)
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
同じ月の十四日には大坂にも打ちこわしが始まって、それらの徒党は難波なんばから西横堀上町へ回り、天満てんま東から西へ回り、米屋と酒屋と質屋を破壊して、数百人のものが捕縛された。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
歩行あるき出す、と暗くなり掛けた影法師も、はげしい人脚の塵に消えて、天満てんま筋の真昼間まっぴるま
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
市の職業紹介所の門を出ると、天満てんま行きの電車に乗った。紹介された先は毛布の問屋で、私は女学校卒業の女事務員です。どんより走る街並を眺めながら私は大阪も面白いと思った。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あるいは又ヨジユムを作って見ようではないかと、色々書籍しょじゃく取調とりしらべ、天満てんま八百屋市やおやいちに行て昆布荒布あらめのような海草類をかって来て、れを炮烙ほうろくいっ如何どう云うふうにすれば出来ると云うので
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
後の鬼丸(これは大和の前鬼後鬼より採った名か)、天満てんまの力蔵、今日の命知らず、今宮の早鐘、脇見ずの山桜、夢の黒船、髭の樊噲はんかい神鳴なるかみの孫助、さざ波金碇かねいかり、くれないの竜田、今不二の山
摂津の国東成ひがしなり郡に属し、東に大和、西に摂津、南に和泉、北に山城を控えて、畿甸きでんの中央にあり、大和川の長流東より来り、淀の大江また北より来って相合して、天満てんま川の会流となりて、城北を廻りて
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
水のべの天満てんまの祭篝焚き空翔りし我やそぐはず
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大阪の天満てんまに、原惣右衛門をたずね、不破数右衛門に会い、中村勘助をたずね、潮田又之丞をさがし、東奔西走、陽焦ひやけと汗にまみれていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝五つ時に天満てんまから始まつた火事は、大塩の同勢が到る処に大筒を打ち掛け火を放つたので、風の余り無い日でありながら、おもひほかにひろがつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
楢雄は煙草は刻みを吸ひ、無駄な金は一銭も使ふまいと決めてゐたが、ただ小宮町へ行つた帰りにはいつも天満てんまの京阪マーケットでオランダといふ駄菓子を一袋買つてゐた。
六白金星 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
ところがここにまた、天満てんま浪人の常木鴻山こうざんたわら一八郎などと申す者あって、江戸の隠密どもと結託けったくなし、御当家の内秘を探りにかかっております
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「京都において大嘗会だいじょうえ御執行相成りそろてより日限にちげんも相立たざる儀につき、太郎兵衛事、死罪御赦免仰せいだされ、大阪北、南組、天満てんまの三口御構くちおかまいの上追放」
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と叫んで、天満てんまの万吉、土橋の欄干を飛び離れたが、その一方には、まなこらんとかがやかして身を屈している者がある。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天満組てんまぐみとは北組の北界きたざかひになつてゐる大川おほかはより更に北方に当る地域で、東は材木蔵ざいもくぐらから西は堂島だうじま米市場こめいちばまでの間、天満てんま青物市場あをものいちば天満宮てんまんぐう総会所そうくわいしよ等を含んでゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それも、計らぬ災難であったが、ここに、なお重大な異変に遭遇したのは、ふたりの舟をはずして、久しぶりに、自分の家をのぞきに帰った天満てんまの万吉。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
撫院は為川辰吉の家に入る。余は伏見屋庄兵衛の楼上に寓す。此楼下は大河に臨み、舟に乗来し処、天満てんま橋天神橋難波橋より西は淀屋橋辺を望て、遊船商艎しやうくわう日夜喧嘩なり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
天満てんまのお屋敷で伺いましたので。はい、常木様がおっしゃいました。伝書鳩を古く使ったのはたしかからちょうれいが元祖じゃ、一八郎が初めではないと」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十日辰後に客舎を発し、難波橋を渡り天満てんまの天神へいたり、巳時十䨇じふさう村に到る。此地平遠にして青田広濶なり。隴畝ろうほの中数処に桔槹井けつかうせいを施て灌漑の用をなす。十䨇川を渡り尼崎城下をすぐ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こんど此処の合戦では、十四日の天満てんまもりの衝突を除くほかは、ほとんど、鉄砲と鉄砲との撃ち合いが多かった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よせよ、万吉、そのジタバタが野暮というものだ。てめえも天満てんまの万吉とかいって、二十五万石の大国へ十手を
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天満てんまの河岸で、やっと、うるさいひもをきって逃げたお米は、あれからすぐに、お吉の所へ頼ってきていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「私は天満てんまの目明し万吉と申すものでござります——。しばらく、御猶予ごゆうよを願いとう存じます」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれも天満てんまの万吉だ。ポカンとしたつらをして、江戸に待っていられるものか。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天満てんまノ森の合戦などでも、織田方の前線は、七花八裂しちかはちれつの粉砕をうけた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天満てんまへ行け、天満へ行け」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)