大廈たいか)” の例文
正義を守るこれ成功せしなり、正義よりもとるまた正義より脱する(たとい少しなりとも)これを失敗という、大廈たいかくうそびえて高く
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
(いろは)のことなり、れば大廈たいか嵬然くわいぜんとしてそびゆれども奧行おくゆきすこしもなく、座敷ざしきのこらず三角形さんかくけいをなす、けだ幾何學的きかがくてき不思議ふしぎならむ。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
弥之助は都会のどんな大廈たいか高楼にも魅惑を感じないが、この原始的生活の植民情味というものには、渾身の魅惑を感じない訳には行かない。
「ラテラノ」の寺、丈長き尖柱オベリスコス、「コリゼエオ」の大廈たいかあと、トラヤヌスの廣こうぢ、いづれか我舊夢を喚び返すなかだちならざる。
村の旧家であるが貧困のために極度の節約をしてゐたので、がらんどうの大廈たいかには火気と人の気配が感じられなかつた。
(新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「吉岡家もすたったなあ。やはり清十郎様、伝七郎様の二つの柱がもう抜けてしまったのだ。大廈たいかくつがえるとはこのことか」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帝都の中央に大審院や司法省の大廈たいか高楼が巍然ぎぜんとして立っているのを見、またこれを写真にとり絵端書などに造って誇っている世上のありさまを見て
理想的団体生活 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
はじける水の中で、群衆の先端と巡羅とが転がった。しかし、大廈たいかの崩れるように四方から押し寄せた数万の群衆は、たちまち格闘する人の群れを押し流した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
これをたとえば、大廈たいか高楼の盛宴に山海の珍味をつらね、酒池肉林しゅちにくりんの豪、糸竹しちく管絃の興、善尽し美尽して客を饗応するその中に、主人は独り袒裼たんせき裸体なるが如し。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
誰がにかけてみがきいだしけん、老女が化粧けはひのたとへは凄し、天下一面くもりなき影の、照らすらん大廈たいかも高楼も、破屋わらやの板間の犬の臥床ふしども、さてはもれみづ人に捨てられて
琴の音 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
轟然たる物の音響ひびきの中、頭を圧する幾層の大廈たいかに挾まれた東京の大路を、苛々いらいらした心地ここちで人なだれに交つて歩いた事、両国近い河岸かし割烹店レストーラントの窓から、目の下を飛ぶ電車、人車
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
時代に在って、人には無い。大廈たいかの覆る時、一木はこれを支える力がない。時の運はその力その価なき匹夫にも光栄を担わせ、その才ありその心ある偉人にも失墜の恥辱を与える。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だんだんそのいうところを聞くと、教育云々うんぬんというのは第三次の考えで、大臣になりたいということは第二次の考えで、第一次的根本の考えは馬車に乗り大廈たいかすまいすることが理想なのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
仁和寺にんなじの十四大廈たいかと、四十九院の堂塔伽藍どうとうがらん御室おむろから衣笠山きぬがさやまの峰や谷へかけて瑤珞ようらく青丹あおにの建築美をつらね、時の文化の力は市塵しじんを離れてまたひとつの聚楽じゅらくをふやしてゆくのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加州かしう金沢市古寺町ふるでらまち両隣りやうどなり一宇いちう大廈たいかは、松山なにがしが、英、漢、数学の塾舎となれり。もと旗野はたのへりし千石取せんごくどりやかたにして、邸内に三件の不思議あり、血天井ちてんじよう不開室あかずのま、庭の竹藪これなり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
竜動ロンドン巍々ぎぎたる大廈たいか石室せきしつなり、その市街に来往する肥馬軽車なり、公園の壮麗、寺院の宏大、これを作りてこれを維持するその費用の一部分は、遠く野蛮未開の国土より来りしものならん。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
小栗上野おぐりこうずけがある、勝安房かつあわがある、永井玄蕃げんばも、水野痴雲ちうんも、向山黄村むこうやまこうそん川路聖謨かわじせいぼ、その他誰々、当時天下の人物としても恥かしい人物ではないが……なにぶん大廈たいかくつがえる時じゃ、いたずらに近藤勇
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
洛陽の全殿大廈たいかふるい崩るるような鳴動を時々耳に聞くのだという。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうッと地鳴りが響いたら一朝のまに鎌倉の大廈たいかは世にあるまい
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに、関門の大廈たいかが、近々と彼方の山峡やまあいに見えた頃である。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)