啊呀あなや)” の例文
ただ一呑ひとのみ屏風倒びょうぶだおしくずれんずるすさまじさに、剛気ごうき船子ふなこ啊呀あなやと驚き、かいなの力を失うひまに、へさきはくるりと波にひかれて、船はあやうかたぶきぬ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
言下ごんか勿焉こつえんと消えしやいばの光は、早くも宮が乱鬢らんびんかすめてあらはれぬ。啊呀あなやと貫一のさけぶ時、いしくも彼は跂起はねおきざまに突来るきつさきあやふはづして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其時そのとき小犬こいぬほどな鼠色ねづみいろ小坊主こばうずが、ちよこ/\とやつてて、啊呀あなやおもふと、がけからよこちゆうをひよいと、背後うしろから婦人をんな背中せなかへぴつたり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
血気勃々ぼつぼつたる大助は、かくと聞くより扼腕やくわんして突立つったつ時、擦違う者あり、横合よりはたと少年に抵触つきあたる。啊呀あなやという間にげて一間ばかり隔りぬ。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小親啊呀あなやと叫びしを聞き棄てに、振放ちて、つかつかとぞ立出でたる。背後うしろひとはいかにすらむ、前には槍をしごいたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとえば歩行の折から、爪尖つまさきを見た時と同じさまで、前途ゆくてへ進行をはじめたので、啊呀あなやと見る見る、二けんげん
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三人奇異の思いをなすうち、が手を触れしということ無きに人形のかずきすらりと脱け落ちて、上﨟じょうろうかんばせあらわれぬ。啊呀あなやと顔を見合す処に、いと物凄き女の声あり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤得、赤得。背後うしろかたにてまた別人の声、「赤城様、得三様。啊呀あなや背後うしろを見返れば以前の声が、 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれという声、啊呀あなやと叫びたまいし声、いかでそのままに差置きて、小親と楽しく眠らるべき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
啊呀あなやと、駆け寄った丹平は、お夏が刃物を引きつけるように、我を殺すもののうなじを、両のかいなでしっかと絞めて抱いたのを見た。その身は坂を上の方、兇漢は下に居た。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といいつつ四辺あたりを見廻すに、今しがた泰助の手より奪い返してお録に此室ここへ入れ置くよう、いいつけたりしお藤の姿、またもや消えて見えざりければ、啊呀あなやとばかり顔色がんしょく変じぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うるみをもった目を見据え、うつつおもてで受取ったが、両方掛けた手の震えに、ぶるぶると動くと思うと、坂になったふたすべって、啊呀あなやと云う間に、袖に俯向うつむいて、火を吹きながら
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれという声、啊呀あなやと姉上の叫びたまいしと、わが覚ゆる声の、猫をば見たまいて驚きたまいしならばし。さなくて残忍なる養子のために憂目うきめ見たまいしならばいかにせむ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
トタンに、背後うしろからわたし身體からだ横切よこぎつたのはれいのもので、其女そのをんなあしまへ𢌞まはつて、さきにえた。啊呀あなやといふうち引摺込ひきずりこまれさうになつたので、はツとするとまへたふれた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
啊呀あなやと思うと、自分の足は、草も土も踏んではおらず、沼の中なる水の上。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五六名どやどやと入来いりきたりて、正体もなき謙三郎をお通の手より奪い取りて、有無を謂わせず引立ひったつるに、啊呀あなやとばかり跳起はねおきたるまま、茫然として立ちたるお通の、歯をくいしばり、瞳を据えて
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身の毛よだちて、思わず啊呀あなやと叫びぬ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身の毛よだちて、思はず啊呀あなやと叫びぬ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
啊呀あなやと見ると、女のおもかげ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)