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べつしつ
奈美子は
白い
布で
頭をくる/\
捲いて、
寂しい
彼の
送別の
席につれ
出されて、
別室に
待たされてゐたことなぞも、
仲間の
話柄に
残された。
院長は
不覺に
哀れにも、
又不氣味にも
感じて、
猶太人の
後に
尾いて、
其禿頭だの、
足の
踝などを
眴しながら、
別室まで
行つた。
御殿づくりでかしづいた、が、
其の
姫君は
可恐い
蚤嫌ひで、
唯一
匹にも、
夜も
晝も
悲鳴を
上げる。
其の
悲しさに、
別室の
閨を
造つて
防いだけれども、
防ぎ
切れない。
『
例へば
隅の
別室を
藥局に
當てやうと
云ふには、
私の
考では、
極く
少額に
見積つても五百
圓は
入りませう、
然し
餘り
不生産的な
費用です。』
弔礼のために、
香川家を
訪れたものが、うけつけの
机も、
四つばかり、
応接に
山をなす
中から、
其処へ
通された
親類縁者、それ/″\、
又他方面の
客は、
大方別室であらう。
あ、エウゲニイ、フエオドロヰチの
有仰るには、
本院の
藥局が
狹隘ので、
之を
別室の一つに
移轉しては
奈何かと
云ふのです。
幸ひ
美少年録も
見着からず、
教師は
細君を
連れて
別室に
去り、
音も
其ツ
切聞えずに
濟んだ。