刃先はさき)” の例文
悴はよくよく磨ぎたる大鎌を手にして近より来たり、まづ左の肩口を目掛けて薙ぐやうにすれば、鎌の刃先はさき炉の上の火棚に引掛かりてよく斬れず。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
あつさにへぬそばかれ退すさつてまたつた。かれ刃先はさきにぶるのをおもいとまもなく唐鍬たうぐはで、またつて木材もくざいけてたふさうとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのうちに八つのの中の、中ほどの尾をお切りつけになりますと、その尾の中に何かかたい物があって、剣の刃先はさきが、少しばかりほろりと欠けました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
あなどり切って刀へは手をかけず、脇差の抜打ちで払った刃先はさきをどうくぐったか、旅の男は飛鳥ひちょうの如く逃げて行きます。
寒い話では、鍬の刃先はさきにはさまった豆粒まめつぶを噛みに来た鼠の舌が鍬に氷りついたまゝ死に、鼠をげると重たい開墾かいこんぐわがぶらり下ってもはなれなかった話。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あえぐ呼吸は火焔のよう……殊に、その手に杖ついている鍬の刃先はさきが、この数十日の砂掘り作業の如何に熱狂的に猛烈であったかを物語るべく、波形に薄くり減って
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
子供こどもは、かわぶちまでんでくると、あひるは、いまにものどをくくられてにそうなかなしいごえをあげていました。子供こどもは、刃先はさきするど小刀こがたなで、あししばったなわりました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ですからものるためにはあまれるものとはおもはれません。また刃先はさきすこひろがつて三味線さみせんばちのようになつてゐるのもあり、やいば一方いつぽうからつけたのみのようなかたちをしてゐるのもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
せがれはよくよくぎたる大鎌を手にして近より来たり、まず左の肩口を目がけてぐようにすれば、鎌の刃先はさきうえ火棚ひだなっかかりてよくれず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのうちに肉屋はほうちょうをとぎおえて、刃先はさきをためすために、そばの大きな肉のはしの、ざらざらになったところを、少しばかり切り落しました。そして
やどなし犬 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
あたりは、おだやかで、のどかでありました。くわの刃先はさきが、ちかり、ちかりとはたけなかからえて、ひばりはあちらのそらでさえずっています。それは、もうねむくなるのでありました。
からすの唄うたい (新字新仮名) / 小川未明(著)
……このさきであんたの心臓をヒイヤリと刺しとおして、その血のついた刃先はさき
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その矛の刃先はさきについた潮水しおみずが、ぽたぽたと下へおちて、それがかたまって一つの小さな島になりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)