二箇ふたつ)” の例文
その裸蝋燭の光で朦朧もうろうとしてそこに二箇ふたつばかりの人影が、卓子を囲んでいることを能登守は認めることができました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
二階は十二畳敷二間ふたまで、階段はしごを上つたところの一間の右の一隅かたすみには、けやき眩々てら/\した長火鉢が据ゑられてあつて、鉄の五徳に南部のびた鉄瓶てつびん二箇ふたつかゝつて
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ふた突起つまみついては、中央ちうわう一箇ひとつ突起つまみゆうするのと、二箇ふたつ突起つまみゆうするのと、二箇ふたつ突起つまみ上部じやうぶおいがつるのと、大概だいがいこのしゆ區別くべつすること出來できるとおもふ。
そうしておの/\糸経をかぶり、男が二人のぬいだ日和下駄を風呂敷包ふろしきづつみにして腰につけ、小婢こおんなにみやげの折詰二箇ふたつ半巾はんかちに包んで片手にぶら下げて、尻高々とからげれば
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
(おつむ一箇ひとつ、一箇枕におさせ申して、胸へ二箇ふたつ鳩尾みぞおちへ一箇、両足の下へ二箇です。)
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……あゝ、こりゃあんまり厚顏あつかましかった。おれうてゐるのではい。大空中おほぞらぢゅういっうつくしい二箇ふたつほしが、なにようがあって餘所よそくとて、其間そのあひだかはってひかってくれとひめたのんだのぢゃな。
色沢いろつやの悪い顔を、土埃ほこりと汗に汚なくして、小い竹行李二箇ふたつ前後まへうしろに肩に掛け、紺絣こんがすり単衣ひとへの裾を高々と端折り、重い物でも曳擦る様な足調あしどりで、松太郎が初めて南の方からこの村に入つたのは
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二箇ふたつ揃っていたものをいかに過失とは云いながら一箇ひとつにしてしまったが、ああ情無いことをしたものだ、もしやこれが前表ぜんぴょうとなって二人が離ればなれになるような悲しい目を見るのではあるまいかと
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また二箇ふたつ髑髏どくろを与え、いでや出陣と立上たちあがれば
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
二箇ふたつの径五寸ばかりの管は大空に向つて烈しい音を立てながら、盛んに迸出へいしゆつして居るのを認めた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
三十六ねんつて大成功だいせいかうをした。一ぐわつ十六にちには、土器どきしゆもつ緻密ちみつなる模樣もやうゑがいてあるのを、二箇ふたつまで掘出ほりだした。それから四十二ねん今日こんにちまでにくのごと珍品ちんぴんまたでずにる。
何十哩の曠野の中に、生命ある者は唯二箇ふたつ
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)