驚駭おどろき)” の例文
窃と蚊帳を捲りながら飛び出しました。棍棒を手にすることは咄嗟の間にも忘れませんでした。然しながら爺さんの驚駭おどろきはどんなでしたらう。
白瓜と青瓜 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
振離ふりはなすと、ゆかまで落ちず、宙ではらりと、影を乱して、黒棚くろだなに、バツと乗る、と驚駭おどろき退すさつて、夫人がひたと遁構にげがまへのひらきもたれた時であつた。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今はへ難くて声も立ちぬべきに、始めて人目あるをさとりてしなしたりと思ひたれど、所為無せんなくハンカチイフをきびしく目にてたり。静緒の驚駭おどろきは謂ふばかり無く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と冬木は明らかに驚駭おどろきの色を面に現しながら、しいてさりげない口調で言った。
五階の窓:02 合作の二 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
馬琴物ばきんものから雪中梅型せっちゅうばいがたのガラクタ小説に耽溺たんできして居た余に、「浮雲うきぐも」は何たる驚駭おどろきであったろう。余ははじめて人間の解剖室かいぼうしつに引ずり込まれたかの如く、メスの様な其筆尖ふでさきが唯恐ろしかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
喜太郎は、驚駭おどろきとも何とも付かない、調子外れの声を出した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そのなかに肥満ふとりたる古寡婦ふるごけの豚ぬすまれし驚駭おどろき
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
驚駭おどろきむねはふたぎぬ、危篤あつしれぬ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
振離ふりはなすと、ゆかまでちず、ちうではらりと、かげみだして、黒棚くろだなに、バツとる、と驚駭おどろき退すさつて、夫人ふじんがひたと遁構にげがまへのひらきもたれたときであつた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もとより恨を負へる我が身なれば、ことばなど懸けらるべしとは想はねど、さりとてなかなか道行く人のやうには見過されざるべし。ここに宮を見たるその驚駭おどろきは如何ならん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おもはず……をとこ驚駭おどろきみはつた。……とおびはさんで、胸先むなさきちゝをおさへた美女たをやめしべかとえる……下〆したじめのほのめくなかに、状袋じやうぶくろはしえた、手紙てがみが一つう
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
驚駭おどろきれて、いくらか度胸も出来たと見え、内々ふうする心持もあったんですね。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
驚駭おどろきのあまり青年わかものは、ほとん無意識むいしきに、小脇こわきいだいた、一襲ひとかさねの色衣いろぎぬを、ふねむかつてさつげる、とみづへはちたが、其処そこにはとゞかず、しゆながしたやうにかげ宿やどうきくさたゞよふて、そであふ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
安来やすぎぶしのおんなは、驚駭おどろきの声を合せた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と云って、境は驚駭おどろきの声を揚げた。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)