重立おもだ)” の例文
家がそんな摸様もやうになつてゐて、そこへ重立おもだつた門人共の寄り合つて、けるまで還らぬことが、此頃次第に度重たびかさなつて来てゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その頃柳橋やなぎばしに芸者が七人ありまする中で、重立おもだった者が四人、葮町よしちょうの方では二人、あとの八人はい芸者では無かったと申します。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
秋田氏に導かれて奥の住居の二階へといった。抱月氏のおりには芸術座の重立おもだった人はみんな明治座へ行っていたので、座員の一人が
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
先日こなひだ東京の銀行集会所へ全国の重立おもだつた銀行家が集まつて、地震学で名高い大森博士を招待せうだいして、講演を頼んだ事があつた。
その某大臣はじめ重立おもだった恋人たちに手紙を書いて、あの第二号とのいきさつ、彼女のこうむった「迷惑」などを訴えている。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
一番目は「酒井の太鼓」で、栄升の左衛門、雷蔵の善三郎と家康、蝶昇の茶坊主と馬場、高麗三郎の鳥居、芝三松の梅ヶ枝などが重立おもだったものであった。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小さな停留場には一切止まらず一気に走って、重立おもだった停留所や乗り換え場所だけ拾って行く。或る意味から見れば、東京がそれだけ広くなったとも云えよう。
組下の両名家、井上、稲富が争いを続けていては、世上への聞え、部下の示しも如何いかんと、自分の宅へ二人呼寄よびよせ、部内の重立おもだった者を立会として、和解の宴を催しました。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
重立おもだった三人の女たちは、首をいじくっている手を休めて、まっすぐ少年に凝視を向けたが、一番年嵩としかさらしいのが丁寧に頭を下げると、外の女たちもそれで心づいたように
信者の重立おもだつ人々を追放し、ミカエル伊東、マシヤス小市、レオ北喜左衛門等は斬首され、レオは上意打によつて突然首を刎ねられたが、切支丹の正しい死に方をするために
発行所で今夜は、同人どうにん重立おもだつた人々に来てもらつて、今日までして居つた島木赤彦君の病気の経過を報告しようとしたのであつた。席には土屋文明君、橋本福松君もすでに見えてゐた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
故に福田はこれらの人によりてかの国有志の重立おもだちたる人々に交わりを求むるもかたからず、またかの国法務大臣徐洪範じょこうはんは、かつて米国遊学中の同窓の友なれば重ね重ね便宜ありと勇みすすみて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
少年せうねんにまで寢太郎ねたらうられたかと、わたくしいそ清水しみづかほきよめ、兵曹へいそう案内あんないしたがつて用意ようゐ一室ひとまると、食卓しよくたく一端いつたんには、櫻木大佐さくらぎたいさは二三の重立おもだつた水兵すいへい相手あひてに、談話はなしふけつてつたが
西村商会の応接室の円卓テーブルを囲んで、数名の人々が厳粛な会話を取交していた。裁判所と警察の人達は、西村商会の重立おもだった社員、それに新聞記者の山本も事件の発見者として同席を許されていた。
彼等の集まったのは、竜之助の隣りの十畳の間を二つ打抜いたので、竜之助のはそれにつづいた六畳一間であったが、いま向うでその襖をはずせと言ったのは、集まった浪人の中の重立おもだった者らしい。
その話が決まるまでには、お庄も媒介人なこうどから事をわけていろいろに言って聴かされた。火災保険の重立おもだちの役員であった媒介人なこうどの中村の言うことには、お袋などの所思おもわくとはまた違ったところもあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それで早速重立おもだった方に相談してね。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
その重立おもだつた人々の顔には、言ひ合せた様な失望の色がある。これは富豪をこらすことは出来たが、窮民をにぎはすことが出来ないからである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と一同を制して、其の中の重立おもだちたる一人いちにんを案内に立たせまして、流罪人取締の屋敷へまいりますると、二三の若者が抜刀ばっとうで立って居ります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
市中しちゅうを散歩しつつこの年代の東京絵図を開き見れば諸処しょしょ重立おもだった大名屋敷は大抵海陸軍の御用地となっている。
兎に角唯事たゞごとでないと云うので、城内では一閑斎を始め重立おもだった武将たちが寄り/\評定を凝らしたけれども、誰も好い加減な当て推量をするばかりだから、群議まち/\でらちが明かない。
で、立続けに五十幾回の宴会を開いて、市民の重立おもだつた者を招待せうだいした。
彼女達の重立おもだった者は、数名一団となって或る店に雇われていた。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
重立おもだつた四五人のものが急いで出て行つた。
フアイヤ・ガン (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
平八郎はしばらくそれを見てゐたが、重立おもだつた人々を呼び集めて、「もう働きもこれまでぢや、好く今まで踏みこたへてゐてくれた、銘々めい/\此場を退いて、しかるべく処決せられい」
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)