運動場うんどうば)” の例文
地理の時間が終ると、運動場うんどうばのアカシヤの木の下へいって、葉子はぼんやり足もとを見つめていた。何ということなしに悲しかった。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
わずかに劇場の運動場うんどうばに売っている写真ぐらいに過ぎなかったので、その生気ある舞台のおもかげをあまねく後に伝え得なかったことである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
Mも蝙蝠こうもりのように体を壁へくっつけくっつけして学生を追って往った。階段を降りた処に運動場うんどうばへ出る扉があって、それには錠をおろしてあった。
死体を喫う学生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
学校の運動場うんどうばで、彼が書物を読んで居なければ必ず鉄棒かなぼうか並行棒にしなやかな体をからませて遊んで居るのです。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれども僕は出来るだけ知らない振りをしていなければならないと思って、わざと平気な顔をしたつもりで、仕方なしに運動場うんどうばすみに連れて行かれました。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
運動場うんどうばへ出て来ても我々われ/\の仲間にはいつた事などは無い、超然てうぜんとしてひとしづかに散歩してるとつたやうなふうで、今考へて見ると、成程なるほど年少詩人ねんせうしじんつた態度たいどがありましたよ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
やがて運動場うんどうばから裏庭の方へ廻つて、誰も見て居ないところへ来ると、不図何か思出したやうに立留つた。さあ、丑松は自分で自分を責めずに居られなかつたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ぼく大島學校おほしまがくかうあがつてから四五日目で御座ございました、四十をえたくらゐ一人ひとりをとこ學校がくかう運動場うんどうばて、校長かうちやうしきりに何事なにごとはなしてましたが、其周圍そのまはりに七八名の生徒せいとつて
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
運動場うんどうばても、賢吉けんきちのほうから、はなしをしなければ、だまっているというふうでありました。遠足えんそくが、ちかづいたときでした。みんなは、あつまれば、たのしそうに、そのはなしをしていました。
宿題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其の下に廣々した運動場うんどうばが、乾いて白くなつた砂利交りのおもてを擴げて居る。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
私は煙草たばこがなくなったから、背後うしろ運動場うんどうばへ買いに出た。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昼御飯がすむとほかの子供達は活溌かっぱつ運動場うんどうばに出て走りまわって遊びはじめましたが、僕だけはなおさらその日は変に心が沈んで、一人だけ教場きょうじょう這入はいっていました。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
その当時は劇場内に広い運動場うんどうばというものがなかったのと、もう一つには幕間が随分長いのとで、大勢の観客は前にいったような太い鼻緒の福草履を突っかけて、劇場外の往来
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
も少しはるとつたやうな多芸たげい才子さいしで、学課がくくわ中以上ちういじやう成績せいせきであつたのは、校中かうちう評判ひやうばんの少年でした、わたしは十四五の時分じぶんはなか/\のあばれ者で、課業くわげふの時間をげては運動場うんどうばへ出て
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
学校がっこう運動場うんどうばにはおおきなさくらのがあって、きれいにはなきました。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
教場の窓は皆な閉つて、運動場うんどうば庭球テニスする人の影も見えない。急に周囲そこいら森閑しんかんとして、時々職員室に起る笑声の外には、さみしい静かな風琴の調しらべがとぎれ/\に二階から聞えて来る位のものであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
光治こうじは、そのしたにきたのでありました。そこは運動場うんどうばかたすみであって、かなたには青々あおあおとしていねのがしげっているえ、そのあいだうまいてゆく百しょう姿すがたなどもえたりするのでした。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)