トップ
>
遂々
>
とうとう
ふりがな文庫
“
遂々
(
とうとう
)” の例文
遂々
(
とうとう
)
お怪我までなすって、書記生さんの白石さんが馳けつけて来なかったら、どんな事になったか分りませんでしたそうでございます。
機密の魅惑
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
それがだんだん進歩して現今の高等学校になったのであるが、僕は其時腹膜炎をやって
遂々
(
とうとう
)
二級の学年試験を受けることが出来なかった。
落第
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お雪を初めその
母親
(
おや
)
や兄すらも、最初こそ二足も三足も譲っていたものだが、それすら後には向からあの通り
遂々
(
とうとう
)
愛想を尽かして了った。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「もっと、とっぷりと
浸
(
つ
)
かるような
飲
(
のみ
)
ものはない?」「しとしとと、こう手で
触
(
ふ
)
れるような
音曲
(
おんぎょく
)
が
聴
(
き
)
き
度
(
た
)
いなあ。」母は
遂々
(
とうとう
)
、
匙
(
さじ
)
を投げた。
桃のある風景
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
日本東京を出発してから十六日目、いよいよ月に近いた時に、不意に飛行器に狂いが生じて
遂々
(
とうとう
)
こんな珍事が出来したのだ。
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
▼ もっと見る
しかし、
遂々
(
とうとう
)
最後に
流石
(
さすが
)
の彼女も死を期して、悪魔たちの要求を退けました。彼は彼女に盗みをすることを命じたのです。
内気な娘とお転婆娘
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
「
不可
(
いけ
)
ねえ……」と彼は
呻
(
うめ
)
き出した。「不可ねえ、
遂々
(
とうとう
)
見付かった! 泥棒、人殺、て云やァがる! 不可ねえ不可ねえ見付かっちゃった……」
人間製造
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彷徨
(
さまよい
)
あるき、なにかの幸福を
手掴
(
てづか
)
みにしたい
焦慮
(
しょうりょ
)
に、
身悶
(
みもだ
)
えしながら、
遂々
(
とうとう
)
帰国の日まで過してしまいました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「
遂々
(
とうとう
)
、事件の波動がこの図書室にも及んできましたよ。最近この潜り戸を通った人物を御記憶でしょうか」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
遂々
(
とうとう
)
猪が飛出しました。猪は
全
(
まった
)
く
勇
(
いさま
)
しい
獣
(
けだもの
)
でした。猪はほんとうにやっていって火をつけてしまいました。
赤い蝋燭
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
かんさんも同じこの厭らしい處に引き入れられ、あぶあぶやつてゐるうちに
遂々
(
とうとう
)
咥へ込まれたのであらう。
渚
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
良雄は
遂々
(
とうとう
)
自分の両眼をもって自分の罪をあがなったが、自分の罪が、
無辜
(
むこ
)
な花嫁にまで及んだことを思うと、今更ながら自分のあさ子に対する行為が後悔された。
血の盃
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
と云って
遂々
(
とうとう
)
泣き出した。私は、それで気付いたが、上級生が笑ったのは、私の父の輜重輸卒は、兵隊のうちでも、一等ビリの役目だから、笑ったのだなぁと思った。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
行
(
ゆき
)
つ
戻
(
もど
)
りつして
躊躇
(
ためら
)
っていらっしゃるうちに
遂々
(
とうとう
)
奥方にと
御所望
(
ごしょもう
)
なさったんだそうです。
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
で、
遂々
(
とうとう
)
ここへこんな風にしてもう生きる希望さえも捨てて、死を待ってるんだろう。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
これまた慌てて帰ったとの事だが、この噂が
溌
(
ぱっ
)
と
立
(
たっ
)
て、客人の足が絶え営業の継続が出来ず、
遂々
(
とうとう
)
この
家
(
いえ
)
も
営業
(
しょうばい
)
を
廃
(
やめ
)
て、
何処
(
どこ
)
へか
転宅
(
てんたく
)
してしまったそうだ、それに付き或る者の話を聞くに
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
遂々
(
とうとう
)
奥様は御声をちいさくなすって、打開けた御話を私になさいました。その時、私は始めて歯医者とのこれまでの関係を聞きましたのです。私は手を堅く握〆られて、妙に顔が
熱
(
ほて
)
りました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
遂々
(
とうとう
)
母は彼の方を一度も見なかった。汽車が見えなくなると、彼は姉夫婦から離れて
前
(
さき
)
に急いで改札口から外へ出た。子よりも孫の方が可愛いらしい、そう思うと、その日一日彼は
塞
(
ふさ
)
いでいた。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「おい、
遂々
(
とうとう
)
、彼奴等、白東会を雇いやがったぜ」
十姉妹
(新字新仮名)
/
山本勝治
(著)
あいつも
遂々
(
とうとう
)
、お台所へ落ちて行った。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どうぞまあ噂だけであって欲しいと希っていたほどでしたから、お祝いにもまいりませんでしたし、
遂々
(
とうとう
)
披露会にも出席いたしませんでした。
蛇性の執念
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
遂々
(
とうとう
)
、また彼女は再び、自身で直接に事の結末をつける為めに帰郷した。長い苦しみの後にも、その解決はつかなかつた。
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
そうして
遂々
(
とうとう
)
ドイルス博士が私のワナに引っかかり、その密室まで来た時に、博士は
復
(
また
)
も他愛なく私のワナに引っかかり
木乃伊の耳飾
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
京子が
遂々
(
とうとう
)
言ってしまった。京子の声は低くて透る。加奈子は、あとを言わせまいとしたが、傍の患者に附き添って居た四十男が聞いてしまった。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼女
(
あれ
)
も私と一緒に、自分の
福運
(
うん
)
を只夢を見ていたのだ。私は
遂々
(
とうとう
)
其の夢を本当にしてやることが出来なかった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「よくそこに気がついたね、あれは本物の女ではないんだ、きみが金魚屋に行く途中で田村ゆり子のことを、考えながら歩いて、
遂々
(
とうとう
)
、本物に作り上げてしまったのだ。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彼は鼻の穴を気にしながら
遂々
(
とうとう
)
十一時間、——その間に昼飯と三時休みと二度だけ休みがあったんだが、昼の時は腹の
空
(
す
)
いてる為めに、も一つはミキサーを掃除していて暇がなかったため
セメント樽の中の手紙
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
申しますと、その蛾は
遂々
(
とうとう
)
、蝙蝠の
餌食
(
えじき
)
になってしまったのでございます。何故なら、私にあの難行をお命じになったのが、クリヴォフ様なんでございますものね。——それも、独りで
三十櫓楼船
(
ブチントーロ
)
を
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
... 地球の引力に左右されていたのが、
俄
(
にわか
)
に月の引力に曳かれたからで。」……と苦笑しつつ「僕も勿論始めにこの研究もして充分の設備はしておいたつもりなんだけれど、まだ設備が足りなかったと見えて、
遂々
(
とうとう
)
こんな目にあわされたんだ。これは全く僕の手落なんだ。」
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
一年ばかりさう云ふ事が続いた末、内儀さんは
遂々
(
とうとう
)
死んでしまひました。婆さんは死ぬる際まで狐に対する苛責の手を少しもゆるめませんでした。
白痴の母
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
私達はかれこれ一時間余りも見物席に納まっていたが、夫人が探し求めているという肝心の女は
遂々
(
とうとう
)
見出せなかった。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
遂々
(
とうとう
)
塾は廃止になり佐藤は全くの浪人となった。で、百姓家の二階を借り、
為
(
す
)
ることもなく日を暮らした。
国事犯の行方:―破獄の志士赤井景韶―
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これは此の六月の初めに、
遂々
(
とうとう
)
話が着いて、
彼女
(
あれ
)
が彼の女中の心配までして置いて、あの関口台町から
此家
(
ここ
)
へ帰って来る時分に、
彼家
(
あすこ
)
の庭によく育っていたのを
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
しかし僕は令嬢というものに対してはどうしても感情的なことが言い出せない性質です。だから
遂々
(
とうとう
)
ボーナスを貰って社を辞めようとした最後の日まで来てしまったのです。
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
だが、何でもかでも、私は
遂々
(
とうとう
)
女から、十言
許
(
ばか
)
り聞くような運命になった。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
と見る間にその目が大きくなって丸窓一杯にひろがり、
遂々
(
とうとう
)
その窓が一つの目になってしまった。瞬きもしないで、その大きな瞳が私の顔を見詰めている。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
しかし、どうした事か
遂々
(
とうとう
)
看守は彼の番号を呼ばずに引つこんでしまつた。彼はぼんやりと立つてゐた。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
遂々
(
とうとう
)
椅子から飛び上がって、室の中をドシドシ歩き廻わり乍ら腹を抱えて笑うのであった。
死の航海
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
加奈子ははっと思った。それから行くたびに何かかにか愚痴が出るようになり、程なく
遂々
(
とうとう
)
お京さんはアンリーから逃げ出した。行先を知っているのは母親と加奈子だけだった。
豆腐買い
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「それじゃ、あの女とお前たちはどんな関係だ」
遂々
(
とうとう
)
私は切り出した。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
忙しい仕事に追われている私は
遂々
(
とうとう
)
告別式にさえも行かれなかった。それがまた気になるので、恰度半日ばかり閑が出来たのを幸に、急に墓参を思い立った。
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
夫婦の
強請
(
せが
)
み方はなかなかそのくらいでは退けようもなく、また私自身書きものの都合からいっても
何処
(
どこ
)
かところを換え、気を換える必要があったので、
遂々
(
とうとう
)
温泉滞在を切り上げ
健康三題
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
……ところが彼奴は、不良青年ですが、
遂々
(
とうとう
)
こんなことを云い出しましたんで『一緒に寝ましょうよ、三人揃って』——勿論これだけは奥さんも、はっきりと断わって了いましたよ。
奥さんの家出
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
□哥津ちやんから何か頂ける筈でしたが今月は駄目でした来月号には
屹度
(
きっと
)
おかき下さるさうです。私も何か長いものを書く気でゐました処前のやうなわけで忙しくて
遂々
(
とうとう
)
書けませんでした。
編輯室より:(一九一四年一一月号)
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
遂々
(
とうとう
)
鼻にまで手が届かなかった——の間、鼻を掃除しなかった。
セメント樽の中の手紙
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「ご厄介になってすみません。——臆病のようですが、どうも気になって、昨夜も
遂々
(
とうとう
)
眠れませんでした。夜中に誰か忍び込んで来るような気がしたりしてね——」
鳩つかひ
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
京女の生地の白い肌へ夕化粧を念入りに施したのが文字通り水もしたたるような美しさです。円通は先程からまじまじと女達の姿に見入っていましたが
遂々
(
とうとう
)
感嘆の声を立てました。
茶屋知らず物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それから私は追い駈けて行った。長い廊下には遠い間を置いて電燈が
幽
(
かすか
)
に灯もっている。
四辺
(
あたり
)
は朦朧と薄暗い。泥棒はズンズン逃げて行く。
遂々
(
とうとう
)
廊下の曲がり角で
其奴
(
そいつ
)
の姿を見失なった。
闘牛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さうして彼女は日夜かなしんで
遂々
(
とうとう
)
死を決心した。
女絵師毒絵具を仰ぐ:(三面記事評論)
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
その花は旦那様のお気に召したばかりに、奥様の御機嫌を損じ、
遂々
(
とうとう
)
お暇を出されてしまいました。
美人鷹匠
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
遂
常用漢字
中学
部首:⾡
12画
々
3画
“遂”で始まる語句
遂
遂行
遂事
遂得
遂次
遂良
遂高