這入へえ)” の例文
伊「悔みをいわれちゃ、穴へでも這入へえりてえくれえでげすが、それにしてもお前さんこそ何うして其様そんなお姿におなんなすったんですえ」
「いけねえ、いけねえ。そんな服装で這入へえれるもんか。ここへ親分とこから一枚いちめえ借りて来てやったから、此服こいつを着るがいい」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三日前に這入へえって来たバツクの(東京くだりのハイカラ)なまれエ給仕上りの野郎に聞いたんだが、議会で政府のアラ捜しより能の無え議員が
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
かねさん自分じぶん這入へえんのにけむつたけりや、おんしてからへえつたらかんべなあ、それに怎的どうしたもんだ一同みんな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「だからね。おいらァくなってるが、いまもそいったとおり、帳場ちょうばかけてからがみっともなくて仕様しようがねえんだ。あんなにおいなか這入へえっちゃいかれねえッてのよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「変っているな。もそッと致せとおっしゃったって、旦那のような変り種の殿様に出られりゃ気が抜けちまわあ。じゃ何ですかい。止めに這入へえったんじゃねえんですかい」
ンまの先、別荘の前さ通ると、裏口が開いてるでねえかよ。おら不審に思って庭さ這入へえって見ると、雨戸が一枚こじ開けてあるだ。おら、大きな声で呼ばったゞ。何の返辞もねえだ。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ハッハッハッ……でもヒョット支那人チャンチャンの泥棒か何かが這入へえりやがって……あっちでは泥棒といったら大抵チャンチャンなんで、それも旧の師走しわす頃が一番多いんですが、そんな奴がコイツを見付けたら
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「この間、獄門橋でわかれた時から、とうとう湯にも這入へえらずさ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しの「どなたか知りませんが、馬鹿野郎で取次一つ出来ねえもんでがすが、何か御用が有らば此方こっち這入へえっておくんなせえましよ」
恐々こわ/″\中さ這入へえって見ると旦那さアが書斎の籐椅子に腰さ掛けて眠っているでねえか。あれまア、こんな所で転寝うたゝねさして、風邪引くでねえかとそばさ寄ると、おらもう少しで腰さ抜かす所だったゞ。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「シキへ這入へえると、いつ死ぬか分らねえからな。だれだって、そうだろう」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
われ自分じぶん梯子はしごけて這入へえんのか」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
與「うも檐先のきさきへ顔を出すと蚊が舞って来て、鼻孔はなめどから這入へえって口から飛出しそうな蚊で、アヽ何うもえれえ蚊だ、誰も居ねえようで」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
這入へえって見るか」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
作「おめえあの事を聞いたか、是ハア困ったなア、実は銭がねえで困るから這入へえる真似しただア、だが余り這入へえたくはねえんだ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仙「わっちは通りがゝりのものだが、見兼たからなけ這入へえったのだ、よええ町人を斬るのるのと仰しゃるが、弱えものを助けるのが本当のお侍だ」
半「有難ありがてえ、成程これを持ってけば大丈夫だ、時に彼処あすこへ夜這入へえるには何処から這入へえるか隠れて出這入でへえりする処は何処だえ」
百「ハイ、ここ此の村で生立おいたちましたから、ちっけえ時分から新利根川へ這入へえっちゃア泳ぎましたから、泳ぎは知って居やす」
半「成らんも成るもあるものか、くもお蘭さんを生埋いきうめにしやアがったな、此の坊主、ふてえ奴だ、お蘭さんの代りに此の中へ這入へえれ、間抜めが」
へえ、そうか、もう宜いのか、あんたも骨が折れるねえ、あんたも早く云えば仲人ちゅうにんだ、おらアも仲人にべえ頼まれて、能く村で仲人に這入へえって人の事を
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
甚「ナニ些とも驚くこたアねえやア、二十五座の衣裳でめん這入へえってるんだ、そりゃア大変に価値ねうちのある物で、一個ひとつでもって二百両ぐれえのがあるよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伴「そんな這入へいりようがあるものか、なんてえ這入へいりようだ、突立つッたって這入へえッちゃア蚊が這入へえって仕ようがねえ」
五八「なに身い投るって、止しなせえ、止すがえよ、此んなちっけえとこ這入へえって死ねるもんじゃアねえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
若い衆をなぐっていけえこともねえ皿を打壊ぶちこわしたりして見兼ねたから、仲へ這入へえって何故なぜ此様こんな事をすると段々尋ねたとこが、仲人ちゅうにんわしがに悪口あっこういてって掛るから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
汚い物は見ぬ方が宜うございます、見ぬ事清してえから……お湯へ這入へえってお出でなさい
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
半「縁側の戸が開いて居たから其処そこから這入へえって、大層てえそう大勢様で、おにぎやかで」
女「はアそうけえ、お湯へ這入へえりますけえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
勝「だって左様そうじゃげえせんか……、これが伯父さんに知れたら何うなさる御了簡でげすえ、伊之さんおめえだって左様じゃねえか、いくらお嬢さんがなんと仰しゃるにしろよ、ノメ/\這入へえりこんでそゝのかすてえことはねえ筈」