責苦せめく)” の例文
そいつらを皆病気にかからせて自分のように朝晩地獄の責苦せめくにかけてやったならば、いずれも皆尻尾を出して逃出す連中に相違ない。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「嫌になるなア、あつしの行つたのは千駄木ですよ。尤もそれから谷中三崎町で引留められて、三日三晩の責苦せめくに逢ひましたがね」
これはここへ落ちて来るほどの人間は、もうさまざまな地獄の責苦せめくに疲れはてて、泣声を出す力さえなくなっているのでございましょう。
蜘蛛の糸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
清盛は大笑いして勝ちほこったようにふすまをあけて出ていった。その時の父には無念の表情よりもむしろ責苦せめくをのがれた安堵あんどの色が見えた。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
私はイッタイ人間世界に居るのであろうか……それとも私はツイ今しがたから幽瞑あのよの世界に来て、何かの責苦せめくを受けているのではあるまいか。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところでわれわれ近代の人間にとっては極楽の蓮華れんげの上の昼寝よりはのあたりに見る処の地獄の責苦せめくの方により多くの興味を覚えるのである。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
彼女は叶わぬ恋人を、あらん限りの愛撫で、よろこばせてやるかわりに、この世からなる地獄の責苦せめくを浴びせかけてやる外はない破目になった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
すくひ出し申上候處其事私しへうたがかゝり夫は/\誠におそろしき責苦せめくを受候御事詞にも筆にもつくしがたく斯樣かやうの儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……こうした責苦せめくは、ほうっておいてもおそらく長くは続かなかったろうが……そこへ降ってわいた出来事が、まるで落雷らくらいのように一挙にすべてに落着らくちゃくをつけ
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「うぬ、後悔するな。地獄の責苦せめくをみせてやるぞ。死ぬよりもおそろしいめに、あわせてやるぞ……。」
透明怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「将軍。察するところ、過日、衆人の中であの責苦せめくをうけられたのは、何か苦肉くにくの計ではないのですか」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殿の屋形にいてからの姫は日夜拷問ごうもん責苦せめくい、そのはてはとうとう屋形のうしろの断崖から突き落されてこと切れた。無慚むざんな伝説であるが、伝説はまだ終らない。
お前もものの命をとったことは、五百や千ではくまいに、早うざんげさっしゃれ。でないと山ねこさまにえらい責苦せめくにあわされますぞい。おおおそろしや。なまねこ。なまねこ。
蜘蛛となめくじと狸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さ候へば私事わたくしこと如何いかに自ら作りし罪のむくいとは申ながら、かくまで散々の責苦せめくを受け、かくまで十分に懺悔致ざんげいたし、此上は唯死ぬるばかりの身の可哀あはれを、つゆほども御前様には通じ候はで
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
如何に悪の報いとは申しながら、繼立の仁助おかくの両人は丹治のために殺され、丹治は又小平のために殺されるという、悪人同士互に修羅の責苦せめくうとは実に恐るべき事でございます。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それどころか、この愛とそれから来る責苦せめくとに、身を任せているのである。
ある幸福 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
わたしがこの世に生きていたあいだの生活の半分はラヴェンデルの草の優しいにおいのように、この部屋の空気に籠っている。人の母の生涯というものは、かなしみが三一で、あとの二は心配と責苦せめくとであろう。
じょあん孫七まごしち、じょあんなおすみ、まりやおぎんの三人は、土のろうに投げこまれた上、天主てんしゅのおん教を捨てるように、いろいろの責苦せめくわされた。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
……これは子供につばを吐いたばちだ。子供に禁じた事を、親が犯した報いだ。だからコンナ責苦せめくうのだ……。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
取直とりなほし我が身ながらも未練みれん繰言くりごとてもかくても助かり難き我が一命此上は又々嚴敷きびしき責苦せめくこらへんよりはいつそのこと平兵衞を殺せしといつはり白状して此世の責苦せめくのがれん者とこゝに心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたしの本当の責苦せめくは、その瞬間しゅんかんから始まった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
地獄の責苦せめくが始まったのではなかろうか。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この責苦せめく
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それから右にじょあんなおすみ、中央にじょあん孫七、左にまりやおぎんと云う順に、刑場のまん中へ押し立てられた。おすみは連日の責苦せめくのため、急に年をとったように見える。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あのさつきまで地獄の責苦せめくに悩んでゐたやうな良秀は、今は云ひやうのない輝きを、さながら恍惚とした法悦の輝きを、皺だらけな満面に浮べながら、大殿様の御前も忘れたのか
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
役人は互にうなずき合いながら、孫七夫婦になわをかけた。おぎんも同時にくくり上げられた。しかし彼等は三人とも、全然悪びれる気色けしきはなかった。霊魂アニマの助かりのためならば、いかなる責苦せめくも覚悟である。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あらゆる責苦せめくに遇はされたのです。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あらゆる責苦せめくわされたのです。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)