てい)” の例文
一人は丁字ちょうじ屋の小照といい、一人は浜田屋のやっこだと聞いていた。小照は後に伊井蓉峰いいようほうの細君となったおていさんで、奴は川上のおさださんであった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
細君は名をおていう、年紀としは二十一なれど、二つばかり若やぎたるが、この長火鉢のむこうにすわれり。細面にして鼻筋通り、遠山の眉余り濃からず。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あっちこっちからおくったビラがいっぱいに下げてあって、ていさんへという大きな字がそこにもここにも見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
適間たまたまとぶらふ人も、宮木がかたちのめでたきを見ては、さまざまにすかしいざなへども、三二ていかしこみさをを守りてつらくもてなし、後は戸をてて見えざりけり。
昔々むかし/\ところに三にんちひさな姉妹きやうだいがありました』と福鼠ふくねずみ大急おほいそぎではじめて、『其名そのなを、えいちやん、りんちやん、ていちやんとつて、三にんともみん井戸ゐどそこんでゐました——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それはほかでもない、大阪市助役の関一氏と三井物産大阪支店の武村ていらう氏。
師匠はおていと云って、四十を越しているのに、まだどこやら若く見える所のある、色の白い女である。前田家の奥で、三十になるまで勤めて、夫を持ったが間もなく死なれてしまったと云う。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
さての梅には四徳を具すというがうかも知れませぬ、若木を好まんで老木おいきの方を好む、又梅の成熟するをていたり、とか申して女子おなご節操みさおあるを貞女というも同じ意味で、春は花咲き、夏は実を結び
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
毅堂の母は丹羽郡赤見村の豪農磯貝氏の女で名をていとよばれた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ていや、もう表をしめておしまひなさい。」
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
てい冥土めいどつまつく
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
しかるに御老職ごらうしよく末席ばつせきなる恩田杢殿方おんだもくどのかた一家内いつかないをさまり、妻女さいぢよていに、子息しそくかうに、奴婢ぬひともがらみなちうに、陶然たうぜんとして無事ぶじなることあたか元日ぐわんじつごとくらされさふらふ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『始めからさううまい訳には行かないぢや……』笑つて見せて、『けれど、正公しやうこう成長おほきくなつたし、定公さだこうも学問が出来るから、おていさん、もう安心なもんぢゃ。これからはらくが出来る』
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
『おてい、それは酒だからな……こぼさぬやうにして呉りやれ』
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「おお、ていさんか。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かうおていさんが言つた。
晩秋の頃 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)