西施せいし)” の例文
西施せいし小観音こかんのん小槌こづち、おだまき、獅子丸、於呂知おろち、箱根、沖波などという白拍子しらびょうし名をそれぞれに持っており、わけて於呂知というのは
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
双無塩ふたりのあくぢよひとり西施せいしかたるは蒹葭けんが玉樹ぎよくじゆによるが如く、皓歯しろきは燦爛ひか/\としてわらふは白芙蓉はくふようの水をいでゝ微風びふううごくがごとし。
彼女は近処きんじょで評判の「豆腐西施せいし」で白粉おしろいをコテコテ塗っていたが、頬骨もこんなに高くはなく、唇もこんなに薄くはなく、それにまたいつも坐っていたので
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
……しかも真中まんなかに、ズキリと庖丁目を入れた処が、パクリと赤黒い口をいて、西施せいしの腹の裂目をさらす……
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実際又西施せいし竜陽君りゅうようくんの祖先もやはり猿だったと考えることは多少の満足を与えないでもない。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
子が生れたら気が改まるかとも思ふてゐたのであらうなれど、たとへ小町と西施せいしと手を引いて来て、衣通姫そとほりひめが舞ひを舞つて見せてくれても私の放蕩のらは直らぬ事に極めて置いたを
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
西施せいしのひそみにならえるか。靄々あいあいたるまゆのあたりに。すこししわをよせて。口の中で手紙をよんでいるところへ。来かかりたる女生徒。目は大きやかなれどどこにか愛敬あるが。そっと障子を明けて。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
留む これ子生涯快心の事 を亡ぼすの罪を正して西施せいしを斬る
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
支那の諺に、「西施せいしひそみに倣う」ということあり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
送りけるが彼の十兵衞の娘お富お文はそろひも揃ひし容貌きりやうにて殊に姉のお文は小町こまち西施せいしはぢらうばかりの嬋妍あでやかもの加之そのうへ田舍ゐなかそだちには似氣にげもなく絲竹いとたけの道は更なり讀書よみかきつたなからずいとやさしき性質成れば傍輩はうばい女郎もいたはりて何から何まで深切しんせつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やさしい西施せいしふんして
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
が、そのためには、最愛な美女西施せいしを呉王へ献じなければならなかったが、范蠡は主君をいさめて、あえてその愛人西施をすら敵の呉宮へささげさせた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
双無塩ふたりのあくぢよひとり西施せいしかたるは蒹葭けんが玉樹ぎよくじゆによるが如く、皓歯しろきは燦爛ひか/\としてわらふは白芙蓉はくふようの水をいでゝ微風びふううごくがごとし。
うまれたらあらたまるかともおもふてたのであらうなれど、たとへ小町こまち西施せいしいてて、衣通姫そとほりひめひをつてせてれてもわたし放蕩のらなほらぬことめていたを
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
後宮こうきゆう佳麗かれい三千人と云ふと、おれは何時いつもお前たちが、重なり合つた楼閣の中に、巣を食つた所を想像する。そら、西施せいしいもの皮をじつてゐると、楊貴妃やうきひは一生懸命に車をまはしてゐるぢやないか。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
洗い髪に大絞りの浴衣ゆかたを着て、西施せいしいきにしたような年増の阿娜女あだものが、姿とはやや不調和な、りの勾欄こうらんに身をもたせて、不思議そうに美しい眼をみはっていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何のそんな事で私が放蕩のやむ事か、人は顏の好い女房を持たせたら足が止まるか、子が生れたら氣が改まるかとも思ふて居たのであらうなれど、たとへ小町と西施せいしと手を引いて來て
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これすなわち范蠡はんれいが美姫西施せいしを送って強猛な夫差ふさを亡ぼしたのと同じ計になるではありませんか
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西施せいし、小観音、おだまき、箱根、小槌、獅子丸などどれひとり道誉と馴じみ少ないものはない。わけて白拍子茶屋の白龍は極道ごくどうな道誉をウラのウラまで知りつくしているおかみであった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)