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襟頸
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えりくび
ふりがな文庫
“
襟頸
(
えりくび
)” の例文
「これじゃ(といってほこりにまみれた両手をひろげ
襟頸
(
えりくび
)
を抜き出すように延ばして見せて渋い顔をしながら)どこにも行けやせんわな」
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼は
昂然
(
かうぜん
)
とゆるやかに胸を
反
(
そ
)
らし、踏張つて力む私の
襟頸
(
えりくび
)
と袖とを持ち、足で時折り
掬
(
すく
)
つて見たりしながら、実に
悠揚
(
いうやう
)
迫らざるものがある。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「それはもう親分さん、——飛起きて聲を立てようとすると
襟頸
(
えりくび
)
を押へて枕に仰向に押付けられ、喉笛を脇差でピタピタと叩くぢやありませんか」
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
男のふところ深くへ細やかな
襟頸
(
えりくび
)
を曲げ、また
仰
(
の
)
け
反
(
ぞ
)
っては、狂わしげに唇をさがしぬく黒髪にたいして、彼は意地わるく唇を与えないのだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お妾は
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
にした
襟頸
(
えりくび
)
ばかり驚くほど真白に塗りたて、浅黒い顔をば拭き込んだ
煤竹
(
すすだけ
)
のようにひからせ、
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しの
両鬢
(
りょうびん
)
へ
毛筋棒
(
けすじ
)
を挿込んだままで
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
その方向へたしか十歩ばかり歩いたとき、ルグランは大きな
呪
(
のろ
)
いの声をあげながら、ジュピターのところへ大股につかつかと歩みより、彼の
襟頸
(
えりくび
)
をひっつかんだ。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
霧のような雨がひやひやと
襟頸
(
えりくび
)
に入るので、舌打ちして『星どころか』と
微
(
かす
)
かに言ったが、荒々しく戸を閉めたと思うと間もなく家の内ひっそりとなってしまった。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
いつもはしっかり北の方に
纏
(
まつ
)
わり着き、隙間もなく手足を
絡
(
から
)
み着かせて、二つの体が一つ塊のようになって寝ているのに、今朝は
襟頸
(
えりくび
)
や
腋
(
わき
)
の下や方々に隙間が出来
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
纏
(
まと
)
まった詩だの歌だのを面白そうに
吟
(
ぎん
)
ずるような
手緩
(
てぬる
)
い事はできないのです。ただ野蛮人のごとくにわめくのです。ある時私は突然彼の
襟頸
(
えりくび
)
を後ろからぐいと
攫
(
つか
)
みました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と云いつつ突然ぐいと
猿臂
(
えんび
)
を伸ばしてルパンの
襟頸
(
えりくび
)
を掴んだ。何たる無礼の振舞だ!ルパンたるものいかにしてかくのごとき
暴戻
(
ぼうれい
)
に忍び得よう。いわんや婦人の面前である。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
同時にかれは、寒さ以外のものを
襟頸
(
えりくび
)
に感じて
慄然
(
ぞっ
)
とした——物凄いとも言いようのない左膳の剣筋を、そして、狂蛇のようなその一眼を、源十郎は
歴然
(
れきぜん
)
と思いうかべたのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「……お宮はどうしても小間使というところだな。……それに
襟頸
(
えりくび
)
が坊主襟じゃないか」
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
キャディが三人、一人はスマートで一人はほがらかな顔をしているがいずれも
襟頸
(
えりくび
)
の皮膚が渋紙色に見事に染めあげられている。もう一人はなんだか元気がなくて襟頸もあまり焼けていない。
ゴルフ随行記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
グッと
癪
(
しゃく
)
に
障
(
さわ
)
って男の
襟頸
(
えりくび
)
を引っ掴んで力任せに投げ出したんです、するとちょうど
隧道
(
トンネル
)
に
支
(
つか
)
えた黒煙が風の吹き廻しでパッと私たちの顔へかかったんでどうなったか一切夢中でしたけれども
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
と怒鳴りながら駈けて来て、ギユツと、
襟頸
(
えりくび
)
を
捉
(
つか
)
んで
子供に化けた狐
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
丸刈の
襟頸
(
えりくび
)
が、顫へわななくのを感じてゐる
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
半分ほど
襟頸
(
えりくび
)
に水がこぼれたけれども、それでも八っちゃんは水が飲めた。八っちゃんはむせて、苦しがって、両手で胸の所を引っかくようにした。
碁石を呑んだ八っちゃん
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「それはもう親分さん、——飛起きて声を立てようとすると
襟頸
(
えりくび
)
を押えて枕に
仰向
(
あおむ
)
けに押付けられ、喉笛を脇差でピタピタと叩くじゃありませんか」
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
雪解の
雫
(
しずく
)
は両側に並んだ同じような二階
家
(
や
)
の軒からその下を通行する人の
襟頸
(
えりくび
)
へ
余沫
(
しぶき
)
を
飛
(
とば
)
している。
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
雨降る日は
二十
(
はたち
)
ばかりの女何事をかかしましく叫びつ笑いて町の片側より片側へとゆくに
傘
(
かさ
)
ささず
襟頸
(
えりくび
)
を縮め
駒下駄
(
こまげた
)
つまだてて飛ぶごとに後ろ振り向くさまのおかしき
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
淫猥
(
いんわい
)
とも云えば云えるような
陰翳
(
いんえい
)
になって顔や
襟頸
(
えりくび
)
や手頸などを
隈取
(
くまど
)
っているのであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
なに思ったか、クロの
襟頸
(
えりくび
)
をかるくたたいて、スーと下へ舞いおりてきた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
姉の
襟頸
(
えりくび
)
から両肩へかけて、妙子は
鮮
(
あざや
)
かな
刷毛目
(
はけめ
)
をつけてお
白粉
(
しろい
)
を引いていた。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ムズと兆二郎の
襟頸
(
えりくび
)
を
掴
(
つか
)
んだ。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼
(
か
)
の
女
(
じょ
)
は活発な足どりで、つかつかと舞台の前面に歩み出で、しなやかな
襟頸
(
えりくび
)
から肩の筋肉を、
蛇
(
へび
)
に
化
(
ば
)
けようとする人間のように、妙にくるくると波打たせながら、怪しい
嬌態
(
しな
)
を作って
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
長いこと風呂へ
這入
(
はい
)
らない顔や
襟頸
(
えりくび
)
を簡単に洗っただけで、鏡台の前に
坐
(
すわ
)
って見ると、いかにも貧血しているのがよく分る色つやをしてい、我ながら
窶
(
やつ
)
れが目立っていることを感じたが
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
猫に
頬
(
ほお
)
ずりをするたびに
襟頸
(
えりくび
)
の
俯向
(
うつむ
)
くのが見えるだけで、どんな顔つきをしているものとも分らないのであるが、でも幸子には、今雪子のお腹の中にある思いがどう云うことであるのか
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
襟
常用漢字
中学
部首:⾐
18画
頸
漢検準1級
部首:⾴
16画
“襟”で始まる語句
襟
襟飾
襟巻
襟元
襟首
襟髪
襟足
襟垢
襟度
襟脚