蒼味あをみ)” の例文
むきたての玉子のやうな、蒼味あをみがかつたすべすべした肌で、うつぶせになつて眠つてゐる。唇は開いたまゝ時々、とひに水の溜るやうないびきをあげてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
其時そのときすはつて蒲団ふとんが、蒼味あをみ甲斐絹かひきで、成程なるほどむらさきしまがあつたので、あだかすで盤石ばんじやく双六すごろく対向さしむかひにつたがして、夫婦ふうふかほ見合みあはせて、おもはず微笑ほゝえんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其三角のふちに当る赤錬瓦とくろい屋根の接目つぎめの所がほそい石の直線で出来てゐる。さうして其石の色が少し蒼味あをみを帯びて、すぐしたにくる派出な赤錬瓦に一種の趣を添へてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
西八條の花見の宴に時頼もつらなりけり。其夜更闌かうたけて家に歸り、其の翌朝は常に似ず朝日影まどに差込む頃やうやく臥床ふしどを出でしが、顏の色少しく蒼味あをみを帶びたり、終夜よもすがら眠らでありしにや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
わしそのまゝらしたが、の一だん婦人をんな姿すがたつきびて、うすけぶりつゝまれながらむかぎししぶきれてくろい、なめらかな、おほきいし蒼味あをみびて透通すきとほつてうつるやうにえた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
年紀としわかい、十三四か、それとも五六、七八か、めじりべにれたらしいまで極彩色ごくさいしき化粧けしやうしたが、はげしくつかれたとえて、恍惚うつとりとしてほゝ蒼味あをみがさして、透通すきとほるほどいろしろい。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぬまいろは、やゝ蒼味あをみびた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むねのあたりに蒼味あをみす。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)