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葩
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はなびら
ふりがな文庫
“
葩
(
はなびら
)” の例文
手に
辛夷
(
こぶし
)
の花を持っているが、ふっくらとした頬はその
葩
(
はなびら
)
よりも白く、走って来たために激しく
喘
(
あえ
)
いでいる唇にも
血気
(
ちのけ
)
がなかった。
春いくたび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
地は隈無く箒目の波を描きて、
斑
(
まだら
)
に
葩
(
はなびら
)
の白く散れる上に
林樾
(
こずえ
)
を洩るゝ日影濃く淡く
文
(
あや
)
をなしたる、
幾
(
ほとん
)
ど友禅模様の巧みを尽して
巣鴨菊
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
ぽとりぽとりと血の滴るように
葩
(
はなびら
)
が散って仕舞う、或は、奇岩怪石の数奇を凝らした庭園の中を、自分が
蜻蛉
(
とんぼ
)
のようにすいすいと飛んでいる。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
宮は
牀几
(
しようぎ
)
に
倚
(
よ
)
りて、
半
(
なかば
)
は聴き、半は思ひつつ、
膝
(
ひざ
)
に散来る
葩
(
はなびら
)
を拾ひては、おのれの唇に代へて
連
(
しきり
)
に
咬砕
(
かみくだ
)
きぬ。
鶯
(
うぐひす
)
の声の絶間を流の音は
咽
(
むせ
)
びて止まず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
幸ひ、一髮の違ひで避けましたが、帛紗は柱に碎けて、中から飛出したのは、小判で百枚、嵐に吹き散らした何かの
葩
(
はなびら
)
のやうに、バラバラと亂れ散ります。
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
極
(
きょく
)
の雪の様にいさゝか青味を帯びた純白の
葩
(
はなびら
)
、
芳烈
(
ほうれつ
)
な其香。今更の様だが、梅は
凜々
(
りり
)
しい気もちの好い花だ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その傍に婦人用の牡丹色の繻子のスリッパが、一つは伏し一つは仰向いて
葩
(
はなびら
)
のように美しく散っている。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
三月の末で、外は大分春めいて来た。裏の
納屋
(
なや
)
の蔭にある桜が、チラホラ白い
葩
(
はなびら
)
を
綻
(
ほころ
)
ばせて、暖かい日に柔かい光があった。外は人の
往来
(
ゆきき
)
も、どこか
騒
(
ざわ
)
ついて聞える。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
目を瞑ると、好い香のする
葩
(
はなびら
)
の中に魂が包まれた樣で、自分の
呼氣
(
いき
)
が温かな靄の樣に顏を撫でる。
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
暗褐色の髪を振り分けに編んだ小さなギリシャ型の頭や、情熱の泉のような菫色をした瞳、それに薔薇の
葩
(
はなびら
)
の如き唇、ドリアンは泪のために娘の顔が見分け難くなる程感動した。
絵姿:The Portrate of Dorian Gray
(新字新仮名)
/
渡辺温
、
オスカー・ワイルド
(著)
弄
(
もてあそ
)
び窓の上のカーネーションの
葩
(
はなびら
)
に戯れて眠り足りた私の頬に心地よく触れていった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
卓子の上にある、彫刻を施した
甕
(
かめ
)
の中には、一輪の素枯れた白薔薇が生けてある。其
葩
(
はなびら
)
は——一つだけ残つてゐたが——皆、香のいゝ涙のやうに落ち散つて、甕の下にこぼれてゐる。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
それは幾重にも幾重にも重つた莟の赤い
葩
(
はなびら
)
を、白く、小さく、深く
蕊
(
しべ
)
まで貫いて
穿
(
うが
)
たれてあつた、言ふまでもなくそれは虫の仕業である。彼は厭はしげに眉を寄せながら尚もその上に莟を視た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
はらはらと
葩
(
はなびら
)
のごと汗散ると暑き夏さへ憎からぬかな
晶子鑑賞
(新字旧仮名)
/
平野万里
(著)
泥まみれこれが櫻の
葩
(
はなびら
)
か
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
曉ひらく
葩
(
はなびら
)
の
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
私はベッドに半身を起して、窓越しに花壇一杯に咲乱れた、物凄く色鮮やかなダリヤの赤黒い
葩
(
はなびら
)
を見ながら、体温計を習慣的に脇の下に挟んだ。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
怪
(
あや
)
しと見返れば、更に怪し!
芳芬
(
ほうふん
)
鼻を
撲
(
う
)
ちて、
一朶
(
いちだ
)
の
白百合
(
しろゆり
)
大
(
おほい
)
さ
人面
(
じんめん
)
の
若
(
ごと
)
きが、満開の
葩
(
はなびら
)
を垂れて肩に
懸
(
かか
)
れり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
幸い、一髪の違いで避けましたが、帛紗は柱に砕けて、中から飛出したのは、小判で百枚、嵐に吹き散らした何かの
葩
(
はなびら
)
のように、バラバラと乱れ散ります。
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
すると彼女の顔いちめんが、露をはらったなにかの
葩
(
はなびら
)
のように、みずみずしい精気を発するのが感じられた。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
目を
瞑
(
つむ
)
ると、好い
香
(
にほひ
)
のする
葩
(
はなびら
)
の中に魂が包まれた様で、自分の
呼気
(
いき
)
が温かな
靄
(
もや
)
の様に顔を撫でる。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ちょうど、そこに赤い
葩
(
はなびら
)
がひとつ落ち散っているようにも見えるかたちのいい唇を、すこし開けて、竜太郎の顔をふり仰いだまま、返事もしなければ、まじろぎもしないのである。
墓地展望亭
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼女はその椿の
葩
(
はなびら
)
のような唇を二三度動かしたけれど、それは喋るつもりではなくただ微笑んだものらしかった。
植物人間
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼の病は
未
(
いま
)
だ快からぬにや、
薄仮粧
(
うすげしやう
)
したる顔色も散りたる
葩
(
はなびら
)
のやうに衰へて、足の
運
(
はこび
)
も
怠
(
たゆ
)
げに、
動
(
とも
)
すれば
頭
(
かしら
)
の
低
(
た
)
るるを、
思出
(
おもひいだ
)
しては努めて梢を
眺
(
なが
)
むるなりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
散った
葩
(
はなびら
)
は溢れる水に乗ってくるくるとまわり、やがて追いつ追われつ
井桁
(
いげた
)
の口から流れだしてゆく。
日本婦道記:桃の井戸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「こういう顔さ。肌は雪のように白く、
漆
(
うるし
)
のような眼に、椿の
葩
(
はなびら
)
よりも紅く可愛いい唇で……」
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
庭さきに暖い小春日の光が
溢
(
あふ
)
れていた。おおかたは枯れた
籬
(
まがき
)
の菊のなかにもう小さくしか咲けなくなった花が一輪だけ、茶色に縮れた枝葉のあいだから、あざやかに白い
葩
(
はなびら
)
をつつましく
覗
(
のぞ
)
かせていた。
鼓くらべ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
葉子の血の
葩
(
はなびら
)
のように赤い唇が、わなわなと顫えながら、近づいて来る……。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼女は、薔薇の
葩
(
はなびら
)
のような頬をして、わざと向うを向いてしまった。
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
あの
夢現
(
ゆめうつ
)
つのまどろみの中に現われるのだ——あの
素破
(
すば
)
らしい
弾々
(
だんだん
)
たる肉体、夢の様な瞳、
葩
(
はなびら
)
のような愛らしい
紅
(
くちびる
)
、むちむちとした円い体の線は、くびれたような四肢を持って僕にせまって来るのだ
蝕眠譜
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
葩
漢検1級
部首:⾋
12画
“葩”を含む語句
花葩
一葩
仙葩
奇葩
瓊葩綉葉
紅葩
紫蕊紅葩
芳葩
葩弁
葩煎袋