莫迦莫迦ばかばか)” の例文
もちろん後で考えると、それは震災の大きなショックから来た神経衰弱症にちがいなく、莫迦莫迦ばかばかしいことではあったけれども——。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それでも結婚しないとすれば、たといこのまちにいるように莫迦莫迦ばかばかしい非難は浴びないにしろ、自活だけは必要になって来るでしょう。
文放古 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、全く莫迦莫迦ばかばかしいことに、王、副王以下各大酋長の決議で「サモア支配権を英国にゆだねたい」旨を申出そうとしたのだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
源吉は、最初の(気が狂って仕舞ったのか)とも思えた、興奮の自分が、莫迦莫迦ばかばかしく、ウソのように感じられた。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「おや、人の家の生活費くらし算盤そろばんをするなんて自分のものにもなりゃしないのに。莫迦莫迦ばかばかしい、よそうよそう。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この現実性の強き存在と、その不思議なる立体感なき心の簡単なる超自然の超現実的亡霊などはあまりにも莫迦莫迦ばかばかしき童謡であり童話であるに過ぎない。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
そして持彦は悠然と加茂の土手をつたい、おそ秋の日ざしをあびながら、人間の心にあるものを神の形式によってあらためることの莫迦莫迦ばかばかしさを笑って行った。
花桐 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
善兵衛は莫迦莫迦ばかばかしいと云ったふうに、顔を外向そむけてしまった、こんどは渡邊の描いた見取図を受取て
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
で、莫迦莫迦ばかばかしいようだが、ドイツは、盲人めくらに、よいように手紙を読んでやる長屋の悪書生みたいなり方で、アフガニスタンを誤魔化ごまかしてなにかせしめようとした。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
莫迦莫迦ばかばかしい、今夜はどうかしてるんだナ、ふん……と心中呟いて、自分の率直な認識を否定して了いました、と云うのは、現在の妻が其の女程美しく装い得る筈が無いからで
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
その手紙を見るなり、おれは、こともあろうに損害賠償とはなんだ、折角これまで尽して来てやったのに……と、直ぐ呶鳴り込んでやろうと思ったが、莫迦莫迦ばかばかしいから、よした。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
莫迦莫迦ばかばかしいことだが、私は何度も林の中の空地で無駄むだに待ちせたものだった。男の子のように美しい田舎の娘がその林の中からひょっこり私の前に飛び出して来はしないかと。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
が、そのうちに今度は例の九号型というものが出来て見ると、我々の感激は更に新たなものとなり、前のラッパの付いたものなどは莫迦莫迦ばかばかしくて顧みる者さえなくなってしまった。
万吉郎は悦びのあまり、男の手をとってひき起し砂利場の上で共に抱きあって狂喜乱舞したとは、莫迦莫迦ばかばかしいほどの悦び方だ。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
何、莫迦莫迦ばかばかしい遠慮ばかりしてゐる?——東京人と云ふものは由来ゆらいかう云ふ莫迦莫迦しい遠慮ばかりしてゐる人種なのだよ。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
全く莫迦莫迦ばかばかしい話だが、その時の泥酔したような変な気持をあとで考えて見ると、どうやら私はちょっと熱帯の魔術にかかっていたようである。
夜は静かであるしお身の寝息がわたどののあたりで聞える、髪もにおうて来る、お身の話す言葉がながい列になって頭にうかんで来る、そうなると一人でいることが莫迦莫迦ばかばかしくなり
花桐 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
猥雑わいざつなレヴュウを観て居る裡に、忽ちそんな場所に居る事が莫迦莫迦ばかばかしくなり一刻も早く直接女との交渉を持った方が切実だと謂う気になりまして直ぐさま其処を飛び出して了いましたものの
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
しかしそれをそう云わなければ、この楽天家の中尉の頭に変態性慾へんたいせいよく莫迦莫迦ばかばかしい所以ゆえんきざみつけてしまうことは不可能だからである。……
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかも後でふりかえってみると、実に腹が立って腹が立ってたまらないくらい、僕ひとりで独楽こまのようにくるくる廻っていたという莫迦莫迦ばかばかしい精力浪費事件なのさ
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かつて大宰相グラッドストーンが「宝島」の初版を求めて古本屋をあさっていると聞いた時も、彼は真実、虚栄心をくすぐられる所でなく、何か莫迦莫迦ばかばかしいような不愉快さを
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
俊助は急に昨夜の一件を確かめたい気が強くなって来た。が、そのためにわざわざ席を離れるのは、面倒でもあるし、莫迦莫迦ばかばかしくもあった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
莫迦莫迦ばかばか手前てめえはなんて唐変木とうへんぼくなんだろう。自惚うぬぼれが強すぎるぜ。まだ仕事も一人前に出来ないのに……
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こう云うゲエムの莫迦莫迦ばかばかしさに憤慨を禁じ得ないものはさっさと埒外らちがいに歩み去るが好い。自殺も亦確かに一便法である。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十人ばかりの女が誰一人のこらず、てんでに帯の間から燐寸マッチを出し、シュッと火をつける。まるで燐寸すり競争をやっているようなものだ。莫迦莫迦ばかばかしくて見ていられない。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
保吉 何、莫迦莫迦ばかばかしさにごうやしたのです。それは業を煮やすはずでしょう。元来達雄は妙子などを少しも愛したことはないのですから。……
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
というところで、梅野十伍は後を書きつづけるのが莫迦莫迦ばかばかしくなって、ペンを置いた。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで、僕は志村のペパミントの話をして、「これは私の親友にひじを食わせた女です。」——莫迦莫迦ばかばかしいが、そう云った。主人役がもう年配でね。
片恋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「愛するミミよ。間違った信念を持つ艇長に、僕たちの尊い青春を形なしにされてしまうなんて莫迦莫迦ばかばかしいじゃないか。今のうちなら、地球へ戻ってくれといえば、艇長も承知してくれるよ」
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、おれは莫迦莫迦ばかばかしかったから、ここには福原ふくはらひとやもない、平相国へいしょうこく入道浄海にゅうどうじょうかいもいない、難有ありがたい難有いとこう云うた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そんな莫迦莫迦ばかばかしいことがあってたまるものではない。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何でもお民の言葉によれば、あの五段歩に近い畑を十円ばかりの小作に出してゐるのはどう考へても莫迦莫迦ばかばかしい。
一塊の土 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしそれよりも忘れられないのはお嬢さんと顔を合せた途端とたんに、何か常識を超越した、莫迦莫迦ばかばかしいことをしはしないかと云う、妙に病的な不安である。
お時儀 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それから僕に「莫迦莫迦ばかばかしいよ、クルシイクルシイですか、ヘトヘトだですかときいて来たんだ。」
講演軍記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
活動写真ならばまだいが、メリイ・ゴオ・ラウンドと来ているんだ。おまけに二人とも木馬の上へ、ちゃんとまたがっていたんだからな。今考えても莫迦莫迦ばかばかしい次第さ。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もっとも恋愛の円満えんまん成就じょうじゅした場合は別問題ですが、万一失恋でもした日には必ず莫迦莫迦ばかばかしい自己犠牲じこぎせいをするか、さもなければもっと莫迦莫迦しい復讐的精神を発揮しますよ。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これは一時でも市兵衛の計に乗つて、幾分の好奇心を動かしたのが、彼自身莫迦莫迦ばかばかしくなつたからである。彼はまづさうに煙草を吸ひながら、とうとうこんな理窟を云ひ出した。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
世間の奴等の莫迦莫迦ばかばかしさが、可笑をかしくつて、可笑しくつて、こてえられ無かつた。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ああ言う芸術家のひそみにならえば、わたしも亦一鑵六十銭の蟹の鑵詰めを自慢しなければならぬ。不肖行年六十一、まだ一度も芸術家のように莫迦莫迦ばかばかしい己惚うぬぼれを起したことはない。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしそんなことも今になって見れば、誰にも莫迦莫迦ばかばかしい心配だった。
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何、売りでございますか? 今になつて考へますと、莫迦莫迦ばかばかしいやうでございますが、確か三十円とか申して居りました。それでも当時の諸式にすると、ずゐぶん高価には違ひございません。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「なるほどそれじゃ莫迦莫迦ばかばかしい。危険をおかすだけ損のわけですね。」
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
僕はちょっと狼狽ろうばいし、莫迦莫迦ばかばかしいほどちゃんと坐り直しました。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大浦おおうらと云う守衛ですがね。莫迦莫迦ばかばかしい目にったですよ。」
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)