草色くさいろ)” の例文
帽も上衣うはきジユツプも黒つぽい所へ、何処どこか緋や純白や草色くさいろ一寸ちよつと取合せて強い調色てうしよくを見せた冬服の巴里パリイ婦人が樹蔭こかげふのも面白い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
けれど、まだうぐいすとしんじきれず、にとってると、草色くさいろをしたはねは、すでに生色せいしょくがなく、からだはこわばっているが、うぐいすにちがいなかったのです。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ばたばたと駈出して、その時まで同じところに、いたようにじっとして動かなかった草色くさいろ半纏はんてん搦附からみつく。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
草色くさいろ薔薇ばらの花、海の色の薔薇ばらの花、ああうみのあやしい妖女シレエヌほぞ草色くさいろ薔薇ばらの花、波に漂ふ不思議な珠玉しゆぎよく、指が一寸ちつとさはると、おまへは唯の水になつてしまふ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
湾内の水は草色くさいろかもを敷き詰めた如く、大小幾百の船は玩具おもちやの様に可愛かはいい。概して鳥瞰的に見る都会や港湾は美でないが、此処ここのは反対に美しい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さきたまのついた長杖ながづゑき、草色くさいろ石持こくもち衣類いるゐ小倉こくらおび胸高むなだかで、たけしやくあまりもあらうかとふ、おほき盲人まうじん)——とふのであるが、角帯かくおび胸高むなだか草色くさいろ布子ぬのこては
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
股引ももひきようのものを穿いている、草色くさいろの太い胡坐あぐらかいた膝の脇に、差置さしおいた、拍子木ひょうしぎを取って、カチカチと鳴らしたそうで、その音が何者か歯を噛合かみあわせるように響いたと言います。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
えりからの前垂まへだれ幅廣はゞびろやつを、遣放やりぱなしに尻下しりさがりにめた、あとのめりに日和下駄ひよりげた土間どま突立つツたち、あたらしいのをあてがつても半日はんにち駈破かけやぶる、つぎだらけの紺足袋こんたびひざツきり草色くさいろよれ/\の股引もゝひき
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)