茶釜ちやがま)” の例文
足袋たび穿かぬあしかふさめかはのやうにばり/\とひゞだらけにつてる。かれはまだらぬ茶釜ちやがまんでしきりにめし掻込かつこんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「お前が来ると知つて居りや、湯も沢山たくさんかして置いたのに」と伯母が炉上の茶釜ちやがまをせゝるを、「なに、伯母さん、雪路だから、足も奇麗きれいですよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「え、え、どうぞ、金の茶釜ちやがまも錦の小袖もありやしません。私は家搜しされるのを、指をくはへて見て居るのも變ですから、ちよいと遊びに出て來ます」
そのくせをかしいぢやありませんか。名所圖繪めいしよづゑなぞますたびに、めうにあのてらりますから、つてゐますが、寶物はうもつに(文幅茶釜ぶんぶくちやがま)——一名いちめい茶釜ちやがま)ありはうです。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
茶釜ちやがまと一緒に泥棒に持つていつてしまはれないのが、せめて、お慰みといつたわけである。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
富士同者イヤ若衆わかいしゆ夫は大きな了簡違れうけんちがひ誰しもわかい時は一日に迫詰せりつめ然樣さういふ氣にもなる者一體此方の國は何處で名は何とゝ聞かれ九郎兵衞は口から出任せ我が家にはきん茶釜ちやがまあるやう大層たいそう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たぬき茶釜ちやがまになつた話はあるが、人間が硯箱になつた話は、きいたことがない。こりやあ、私たちの言葉のつかひ方が悪かつた。硯箱になるのは、茂丸さんか、お前か、どつちだらうと言つたのは、かういふわけだ。」
硯箱と時計 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
ブンブク茶釜ちやがま
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
茶釜ちやがまめてたのである。それほど空腹くうふくかんぜぬかれはしるのがいやになつた。かれ身體からだ非常ひじやうえてることをつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おらあ、茶釜ちやがまと鶏一羽くれェ、くれてやつとくだ。あんなもなァ欲しくねェだ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
眞鍮しんちう茶釜ちやがま白鳥はくてう出居いでゐはしら行燈あんどうけて、ともしびあかく、おでん燗酒かんざけ甘酒あまざけもあり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
茶釜ちやがまがちう/\とすこひゞきてゝしたとき卯平うへいひからびたやうにかんじてのどうるほさうとしてだるしりすこおこしてぜんうへ茶碗ちやわんのばした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)