花房はなぶさ)” の例文
それに警視庁には花房はなぶさ一郎という者がある、花房一郎は、命にかけても大谷千尋を捕えずには置かないって、斯うも言うんです。
青い眼鏡 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
父が開業をしていたので、花房はなぶさ医学士は卒業する少し前から、休課に父のもとへ来ている間は、代診の真似事まねごとをしていた。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その中では近藤こんどうと云う独逸ドイツ文科ぶんかの学生と、花房はなぶさと云う仏蘭西フランス文科の学生とが、特に俊助の注意をいた人物だった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
揺るぎ無い御代みよは枝を吹く風のも静かに明け暮れて、徳川の深い流れに根をひたした江戸文明の巨木には、豪華艶美えんびを極めた花房はなぶさが、今をさかりに咲き盛かり
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
四月の初めに庭のふじの花が美しく咲いて、すぐれた紫の花房はなぶさのなびき合うながめを、もてはやしもせずに過ごしてしまうのが残念になって、音楽の遊びを家でした時に
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「駄目なことがあるもんか。馬を替えてみたらどうかな? 花房はなぶさならいいだろう?」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
藤棚には藤の花房はなぶさがさがって、その花が微暗うすぐらを受けて白く見えていた。両側の欄干には二三人ずつの人が背をもたせるようにして立ちながら、鼻のさきを通って往く人の顔をすかしていた。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
開放された自然の美と、閉されたトンネルの陰鬱いんうつと、この明暗を繰返し繰返し、列車は急斜面を登って行く。そのうち、私はがけに突出した松の枝に紫の花房はなぶさあざやかな山藤やまふじを見つけて思わず
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
ふく姿すがた高下かうげなくこゝろへだてなくかきにせめぐ同胞はらからはづかしきまでおもへばおもはるゝみづうをきみさまくはなんとせんイヤわれこそは大事だいじなれとたのみにしつたのまれつまつこずゑふぢ花房はなぶさかゝる主從しゆうじうなかまたとりや梨本なしもと何某なにがしといふ富家ふうかむすめ優子いうこばるゝ容貌きりやうよし色白いろじろほそおもてにしてまゆかすみ遠山とほやまがたはなといはゞと比喩たとへ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
事件の中へ、名探偵の花房はなぶさ一郎が飛込んで来ると、美保子にかかる疑いなぞは、薄紙を剥がすように消えてしまったのです。
悪魔の顔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
見兼ねたと云う容子ようすで、花房はなぶさ藤沢ふじさわとが、同時にやさしい声を出した。と、大井は狡猾ずるそうな眼で、まっ青になった近藤の顔をじろじろ覗きこみながら
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
花房はなぶさという、今年卒業して製造所に這入はいった理学士に、児髷ちごまげに結った娘が酌をすると、花房が顧みながら云った。
里芋の芽と不動の目 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
桜も山吹も並み並みでなくすぐれた花房はなぶさのものがそろえられてあった。南の御殿の山ぎわの所から、船が中宮の御殿の前へ来るころに、微風が出て瓶の桜が少し水の上へ散っていた。
源氏物語:24 胡蝶 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そこには躑躅つつじが咲き残り、皐月さつきが咲き、胸毛の白い小鳥は嫩葉わかばの陰でさえずっていた。そして、松や楢にからまりついた藤は枝から枝へつるを張って、それからは天神てんじん瓔珞やぐらのような花房はなぶさを垂れていた。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「それは放って置けない、明日にでも私から、警視庁の花房はなぶさ君に話して、何んとかして貰いましょう。まあ、あまり心配しない方がいでしょう」
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
目次を見ると、藤沢の「鳶色とびいろ薔薇ばら」と云う抒情詩的の戯曲を筆頭に、近藤のロップス論とか、花房はなぶさのアナクレオンの飜訳とか、いろいろな表題が行列していた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二階の広間には、丁度此時駆け付りた、警視庁の花房はなぶさ一郎を中心に、捜査の最初の会議が開かれて居たのです。
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
其処そこまで判って居るなら、なぜ恐れ乍らとやらかさないんだ、警視庁の花房はなぶさ一郎は、君の友人じゃないか」
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「わからないか。俺は警視庁の花房はなぶさ一郎だよ」
死の予告 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
花房はなぶさ一郎といいます」
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「私は花房はなぶさ一郎だ」
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「アッ花房はなぶさ——」
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
花房はなぶさ一郎」
古銭の謎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)