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翩々
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へんぺん
ふりがな文庫
“
翩々
(
へんぺん
)” の例文
その草原が尽きるあたりに、石の垣をめぐらせた、小さい赤塗りの家が一軒、岩だらけの山を後にしながら、
翩々
(
へんぺん
)
と日章旗を翻している。
長江游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
日中には、何千となき白い
蝶
(
ちょう
)
がそこに逃げ込んできた、そしてこの生ある夏の雪が木陰に
翩々
(
へんぺん
)
と
渦巻
(
うずま
)
くのは、いかにも
聖
(
きよ
)
い光景であった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
嘴
(
くちばし
)
で羽を抜き、
翩々
(
へんぺん
)
として白蓮の墜落するに似ているのを見て、犬が吠え人が集ったので、翼を
聯
(
つら
)
ねて天に沖し去り、遂に其所在を失った
マル及ムレについて
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
河水をわたる風は白く、
蕭々
(
しょうしょう
)
と鳴るは
蘆荻
(
ろてき
)
、
翩々
(
へんぺん
)
とはためくは両陣の
旌旗
(
せいき
)
。——その間一すじの矢も飛ばなかった。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
万歳が
袖
(
そで
)
を
翻
(
ひるがえ
)
して舞う。折から
翩々
(
へんぺん
)
と散るたびら雪を蝶と見て、万歳の上にとまれといったのであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
▼ もっと見る
暖国の雪一尺以下ならば山川村里
立地
(
たちどころ
)
に銀世界をなし、雪の
飄々
(
ひょうひょう
)
翩々
(
へんぺん
)
たるを観て花に
諭
(
たと
)
へ玉に比べ、勝望美景を愛し、酒食音律の楽を添へ、
画
(
え
)
に写し
詞
(
ことば
)
につらねて
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
居睡りをしているのか?「牡丹花下の
睡猫
(
すいみょう
)
は心
舞蝶
(
ぶちょう
)
にあり」という油断のならぬ猫の
空睡
(
そらね
)
,ここへ花の露を慕ッて
翩々
(
へんぺん
)
と蝶が飛んで来たが、やがて
翼
(
はがい
)
を花に休めて
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
彼はサイゴンの穀物の集散市場、その灰色の風景のなかの男であった。ドンナイ河に
翩々
(
へんぺん
)
と帆かけた米穀輸出船は彼の指揮によって
饑饉
(
ききん
)
と、戦禍の彼の本国に積出された。
新種族ノラ
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
市蔵は始め浮気を
軽蔑
(
けいべつ
)
してかかった。今はその浮気を渇望している。彼は自己の幸福のために、どうかして
翩々
(
へんぺん
)
たる軽薄才子になりたいと
心
(
しん
)
から神に念じているのである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然
(
しか
)
り、彼らが
八幡
(
はちまん
)
の旗は、
翩々
(
へんぺん
)
として貿易風に
翻
(
ひるがえ
)
り、その軽舟は、黒潮の暖流に乗じて、台湾、
呂宋
(
ルソン
)
より、
安南
(
アンナン
)
に及び、さらにスマタラ海峡を突過して、
印度
(
インド
)
洋に迫らんとす。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
麦畑は四方の白雪
皚々
(
がいがい
)
たる雪峰の間に青々と快き光を放ち、その間には光沢ある薄桃色の蕎麦の花が今を盛りと咲き競う、
彼方此方
(
かなたこなた
)
に
蝴蝶
(
こちょう
)
の数々が
翩々
(
へんぺん
)
として花に戯れ空に舞い
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
荒浪
(
あらなみ
)
の
鞺々
(
どう/\
)
と
打寄
(
うちよ
)
する
岬
(
みさき
)
の
一端
(
いつたん
)
には、
高
(
たか
)
き
旗竿
(
はたざほ
)
が
立
(
た
)
てられて、
一夜作
(
いちやづく
)
りの
世界
(
せかい
)
※國
(
ばんこく
)
の
旗
(
はた
)
は、
其
(
その
)
竿頭
(
かんとう
)
から
三方
(
さんぽう
)
に
引
(
ひ
)
かれた
綱
(
つな
)
に
結
(
むす
)
ばれて、
翩々
(
へんぺん
)
と
風
(
かぜ
)
に
靡
(
なび
)
く、
其
(
その
)
頂上
(
てつぺん
)
には
我
(
わ
)
が
譽
(
ほまれ
)
ある
日章旗
(
につしようき
)
は
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
例へば
蝶
(
ちょう
)
といへば
翩々
(
へんぺん
)
たる
小羽虫
(
しょううちゅう
)
の飛び去り飛び来る一個の小景を現はすのみならず、春暖
漸
(
ようや
)
く催し草木
僅
(
わず
)
かに
萌芽
(
ほうが
)
を放ち
菜黄
(
さいこう
)
麦緑
(
ばくりょく
)
の間に三々五々士女の
嬉遊
(
きゆう
)
するが如き光景をも聯想せしむるなり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
また、遊軍とみえ、有海ヶ原いちめんに、山県隊、高坂隊の旗じるしが、夜目にも
翩々
(
へんぺん
)
とうごいて見えた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
堤の両側は
平
(
ひら
)
一面の草原で、その草の青々とした間からすみれ、
蒲公英
(
たんぽぽ
)
、
蓮華草
(
れんげそう
)
などの花が春風にほらほら首をふッていると、それを面白がッてだか、蝶が
翩々
(
へんぺん
)
と飛んでいる。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
赫々
(
かくかく
)
たる太陽が漸く西に沈んで、雲は一面紅になっている。日はもう落ちたが、全く暮れるにはまだ間がある。そういう空を蝙蝠が
翩々
(
へんぺん
)
として飛びつつある、という句である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
否
(
いな
)
向側を登りつくしてあの高く見える
堞
(
ひめがき
)
の上に
翩々
(
へんぺん
)
と
翻
(
ひるがえ
)
っているに違ない。ほかの人ならとにかく浩さんだから、そのくらいの事は必ずあるにきまっている。早く煙が晴れればいい。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
左備えには、
翩々
(
へんぺん
)
と青旗が並んで見える。これは楽進のひきいる一船隊である。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭から云えば胡蝶のごとく、かく
翩々
(
へんぺん
)
たる公衆のいずれを
捕
(
とら
)
え
来
(
きた
)
って比較されても、少しも
恥
(
はず
)
かしいとは思わぬ。云いたき事、云うて人が
点頭
(
うなず
)
く事、云うて人が
尊
(
たっと
)
ぶ事はないから云わぬのではない。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼方
(
かなた
)
の城頭には
翩々
(
へんぺん
)
と、いく条かの
旗幟
(
きし
)
が流れている。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
翩
漢検1級
部首:⽻
15画
々
3画
“翩”で始まる語句
翩翻
翩飜
翩
翩乎
翩翩