羽子板はごいた)” の例文
今あの羽子板はごいたの少女はどうしているかしら、と羽子は考へました。眼のくりくりっとした、羽子板の少女の顔がはっきりと思い出せるのでした。
屋根の上 (新字新仮名) / 原民喜(著)
時子ときこさんは、二つ羽子板はごいたってきました。二人ふたりは、羽根はねをついていました。すると、近所きんじょ子供こどもたちがあつまってきて
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
家の内には竜子が生れた時から見馴みなれた箪笥たんす火鉢ひばち屏風びょうぶ書棚の如き家具のほかに茶の湯裁縫生花の道具、または大きな硝子ガラス戸棚の中に並べられた人形羽子板はごいた玩具がんぐのたぐい
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
江戸に正月せし人のはなしに、市中にて見上るばかり松竹をかざりたるもとに、うつくしよそほひたる娘たちいろどりたる羽子板はごいたを持てならび立て羽子をつくさま、いかにも大江戸の春なりとぞ。
何でも、切餅きりもちが二、三十切れと、魚の切身きりみが七、八つ、小さい紙袋が三つ四つ、それから、赤い紙を貼った三銭か五銭かの羽子板はごいたが一枚、それだけがその中から出て来た。
羽子板はごいたの役者の似顔の細工しか見たことがなかったが、そして、羽子板の細工にも、随分ずいぶん精巧なものもあるのだけれど、この押絵は、そんなものとは、まるで比較にもならぬ程
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ハタキと羽子板はごいた鉄砲てっぽうにしている並木と八津がやめずに歌いつづけ、走りまわっているなかで、大吉のふしんがっている気持をしずめてやるように、いきなり背中に手をまわすと
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ある時私は、柳編みの羽子板はごいたと、黄や青や緑の羽毛のついた羽子はねとを、お前に買ってやったことがある。お前はもう忘れているでしょう。お前はごく小さい時はほんとにいたずらだった。
羽子板はごいたなどが山と高く掲げられるのも見ものでありますが、酉町とりのまち熊手くまでなど、考えると不思議にも面白い装飾に達したものであります。玩具の犬張子いぬはりこなどにも、何かまがいない江戸の姿が浮びます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
沼南のインコ夫人の極彩色は番町界隈や基督キリスト教界で誰知らぬものはなかった。羽子板はごいたの押絵が抜け出したようで余り目に立ち過ぎたので、鈍色にぶいろを女徳の看板とする教徒の間には顰蹙するものもあった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ふるくよりもちつたへし錦繪にしきゑかず/\取出とりいだし、めらるゝをうれしく美登利みどりさんむかしの羽子板はごいたせよう、これはれのかゝさんがおやしき奉公ほうこうしてころいたゞいたのだとさ、をかしいではいかこのおほきいこと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
羽子板はごいたの箔にうけたり春の雪 吾仲
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
羽子板はごいたを口にあてつゝ人を呼ぶ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
かちんと、羽子板はごいたにはねられると、羽子はごは、うんと高く飛びあがってみました。それから、また板に戻ってくると、こんどはもっと思いきって高く飛び上りました。
屋根の上 (新字新仮名) / 原民喜(著)
江戸に正月せし人のはなしに、市中にて見上るばかり松竹をかざりたるもとに、うつくしよそほひたる娘たちいろどりたる羽子板はごいたを持てならび立て羽子をつくさま、いかにも大江戸の春なりとぞ。
東京とうきょうにいる時分じぶん羽子板はごいたたれて、そらがるたびに、もっと、もっとたかく、あの茜色あかねいろうつくしいそらがることができたらと、たかいところにあこがれたことがありました。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その他羽子板はごいた押絵おしえ飴細工あめざいく、菊人形、活人形いきにんぎょう覗機関のぞきからくり声色使こわいろつかいの雑技あり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
羽子板はごいた押絵おしえのようにまた一段と際立きわだって浮び出す。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたしいえへいって、羽子板はごいたってくるわ。」
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
羽子板はごいた押絵おしゑのやうにまた一段と際立きはだつてうかび出す。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)