義兄にい)” の例文
「いいえ、これまでは、妾ではなくて、納谷家の当主——妾の良人おっと、そうそうお前さんには義兄にいさんの、雄之進様がお洗いになったのだよ」
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「あんまりのぼせかへつたのよ。もう、これから戦争がないだけでも清々していゝわ。でも、よく義兄にいさんは兵隊にとられなかつたわね?」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「や、はんのおじいさんですか。退屈よりも、義兄にいさんや義姉ねえさんに、余りよくしていただくので、なんともはや相すまなくて」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「漢和何とかいうの引いたの。末っちゃんに考えてもらえってうちいうたのやけど、義兄にいさんったらきかはらへんのや。いややなアそんな名?」
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
梯子段の下に義兄にいさんが仰向けに倒れて居るので、介抱する積りで起してやりましたが、その時はもう正氣も無かつたんです
義兄にいさんも思いきって、正ちゃんをくれるといいんだがね。」叔母は色白の、体つきのすンなりした正雄に目を注いだ。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
義兄にいさんのうたほんをおみなさるのと、うつくしい友染いうぜん掛物かけもののやうに取換とりかへて、衣桁いかうけて、ながら御覧ごらんなさるのがなによりたのしみなんですつて。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仕合しあわせと義兄にいさんは子供の時から絵をき初められると、何日も何日もへやに閉じ籠って、決して人にお会いにならない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
義兄にいさんだつて、あたしがこんなことをしてるの見たら、気が狂つたのかと思ふでせう。あたし、相馬さんがうしろについててくれるから、安心なの。
私をちでもするかと思った。私、あれが新さんが厭なの。そりゃ姉の亭主だから義兄にいさんにいさんと下手したでに出ていれば親切なことは親切な人なんですけれど
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
おせいの親父おやぢ義兄にいさんが見えて、おせいを引張つて帰つて行つたのは、たしか五月の三十日だと思ふ。その時も、大変なんでしたよ。僕にはもと/\掠奪りやくだつの心はないんだ。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
そして今ではお義兄にいさまや与一郎さんの物をそうして縫っていらっしゃる、そればかりではないわ、お洗濯やお炊事にどれだけの水をお遣いになったでしょう、釜戸かまどや火桶で
日本婦道記:風鈴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
義兄にいさんは学者じゃけん、まァ一つ兄弟じゅうば代表して名前ばあげて下はりまッせ」
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
義兄にいさんの体重も、お知りになる必要があるんでしょう?」
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「やめるのなら、幸義兄にいさんには、あたしが話をつけるよ」
狂い凧 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「お義兄にいさんは? 時間おあきになっているんですか」
築地河岸 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「へえ? 義兄にいさんが? どうしてかしら?」
肌の匂い (旧字新仮名) / 三好十郎(著)
義兄にいさん、万歳! 防空飛行隊、万歳!」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
義兄にいさんは?」
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
義兄にいさんたら、金さんが来たら酢モロコを食べさすのやつて、こなひだからやい/\言うてやはるのえ。そんな物食べたうないわなア金さん?」
悲しめる顔 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
仕方なしに妾は此家ここの台所に寝起きをして、自分の身に附いたものは勿論のこと、義兄にいさん夫婦の家具家財や衣類なんぞを売り喰いにしていましたが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ううん、なんでもない、つまらないお金よ。あんたに聞かせるやうなことぢやないけどさ、あたしや、意地でも義兄にいさんにだけは云へないお金なのよ」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ね——義兄にいさん、……お可哀相かあいさうは、とつくのむかし通越とほりこして、あんな綺麗きれいかたうおなくなんなさるかとおもふと、真個ほんとう可惜あつたらものでならないんですもの。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ハイハイそれは申すまでもなく、今度の事は義兄にいさんのお蔭、仇や疎かには思いませぬ」
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「叔母と言つた處で、年はまだ若い。くなつたお信乃の母親の妹で、出戻りになつて義兄にいさんの伊八の處に厄介になり、細々ほそ/″\と賃仕事なんかをやつて居るが、これがね、親分」
「あんまり、寒かつたンで、お義兄にいさんとこの荷をほどいて、二三枚拝借したのよ」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
義兄にいさまに云いつかって、この品を持って本所のさるお家へいっておりました、たぶん危険なことが迫っているのを知っていらしったのでしょう、それでわたくしだけ助かったのでございます
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「お姉様あッ。お義兄にいさまが帰りましたよ。お義兄さまが」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ……誰かと思ったら、義兄にいさん!」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
義兄にいさんは?」ミサ子が訊いた。
舗道 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
お前一人は殺さない……と泣きながら譫言うわごと仰言おっしゃったので、サテは姉さんはモウお義兄にいさまの手にかかって
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
義兄にいさんに直ぐ来て貰うて、山寺さんや。」と早口に彼に云つた。
悲しめる顔 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
……義兄にいさんがおこゝろづくしの丸薬おくすりですわね。……わたし最初さいしよ見舞みまひつたとき、ことづかつてまゐりました……あのくすりを、お婿むこさんのから、葡萄酒ぶだうしゆちひさな硝子盃コツプあがるんだつて、——えゝ、先刻さつき……
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
義兄にいさん。あの西瓜はもう駄目ですね」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
義兄にいさんを呼んで来て、早う!」と姉は一口強く云つた。
悲しめる顔 (新字旧仮名) / 横光利一(著)