悲しめる顔かなしめるかお
京の娘は美しいとしきりに従弟が賞めた。それに帰るとき、 「此の雨があがると祇園の桜も宜しおすえ。」 そんなことを云つたので猶金六は京都へ行つてみたくなつた。 縁側で彼の義兄が官服を着たまゝ魚釣り用の浮きを拵へてゐる。金六は義兄の傍に蹲んだ。 …