はぢ)” の例文
「うむ、さうだあ、そんだからさあつとがさ/\すんだよ」ういつておつぎのこゑすこ明瞭はつきりとしてた。おつぎははぢふくんだ容子ようすつくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その面持おもゝちすこしも常に殊ならず。われは心の底に、言ふべからざるはぢいきどほりとを覺えて、口に一語をも出すこと能はざりき。
するとうれしさうに莞爾にツこりして其時そのときだけは初々うゐ/\しう年紀としも七ツ八ツわかやぐばかり、処女きむすめはぢふくんでしたいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
未だ世馴れざる里の子の貴人の前に出しやうにはぢを含みて紅し、額の皺の幾条の溝には沁出にじみ熱汗あせを湛へ、鼻のさきにも珠を湧かせば腋の下には雨なるべし。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
中央なる机には美しき氈を掛けて、上には書物一二卷と寫眞帖とを列べ、陶瓶にはこゝに似合はしからぬ價高き花束を生けたり。そが傍に少女ははぢを帶びて立てり。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「云ひません。」彼れは彼れ独特なそして極く秘密な闇の観照を私から発見された事にひどいはぢらひを感じてゐるらしく、その羞らひは彼れの心を多少とも不機嫌ふきげんへと転じた如くであつた。
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
私は、彼に對して恐れも、またいさゝかはぢらひも感じなかつた。
わたしのほかに聞き慣れぬ男の気息いきはぢらふか
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いかでかはぢは君の眼をおほふべき
君のねがひ (旧字旧仮名) / サッフォ(著)
中央なる机には美しきかもを掛けて、上には書物一二巻と写真帖とをならべ、陶瓶たうへいにはこゝに似合はしからぬあたひ高き花束を生けたり。そがかたはらに少女ははぢを帯びて立てり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
みやこなる父母ふぼかへたまひぬ。しうとしうとめらぬきやく許多あまたあり。附添つきそ侍女じぢよはぢらひにしつゝ、新婦よめぎみきぬくにつれ、浴室ゆどのさつ白妙しろたへなす、うるはしきとともに、やまに、まちに、ひさしに、つもれるゆきかげすなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)