紙袋かみぶくろ)” の例文
次郎は待ちかまえていたように、自分のそばに置いていた紙袋かみぶくろから、ガリ版の印刷物をとり出して、みんなに配布した。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
九百八十六部の「夢みつつ」は札幌さつぽろの或物置小屋の砂埃すなほこりの中に積み上げてあつた。が、それはしばらくだつた。彼の詩集は女たちの手に無数の紙袋かみぶくろに変り出した。
詩集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして日々にち/\飯米はんまいはかつて勝手へ出す時、紙袋かみぶくろに取り分け、味噌みそしほかうものなどを添へて、五郎兵衛が手づから持ち運んだ。それを親子炭火すみび自炊じすゐするのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
これははちなしをたべるものですから、はちをよけるために紙袋かみぶくろをかぶせるのです。お勝手かつてよこには祖父おぢいさんのゑたきりがありました。そのきりしたは一めん桑畑くはばたけでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
わたしは、紙袋かみぶくろなかへ、とりをいれてもらって、いえかえり、もっとおおきなかごにいれてやりました。とりは、らぬ場所ばしょにきたので、いっそう、ものおじして、をぱちくりしていました。
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
梅雨つゆがあけて、ももが葉っぱの間に、ぞくぞくとまるい頭をのぞかせるころになると、要吉の家の人びとはいっしょになって、そのひとつひとつへ小さな紙袋かみぶくろをかぶせるのでした。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
持て來し國土産くにみやげと心もあつ紙袋かみぶくろ蕎麥粉そばこ饂飩粉うどんこ取揃とりそろへ長庵の前へ差出せば然もうれしげに禮をのべの中にあつらおきさけさかな居間ゐまならべサア寛々ゆる/\と久しぶりにて何は無とも一こんくまんと弟十兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さっそく、あには、おとうとのそばにいって、紙袋かみぶくろつつんだうみぼたるをのぞいてみました。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
なしつて、なか/\べてもいゝとはひませんでした。そして、そのなしおほきくなつて、いろのつく時分じぶんには、丁度ちやうど御祝言ごしふげんばん花嫁はなよめさんのやうに、しろ紙袋かみぶくろをかぶつてしまひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)