目色めつき)” の例文
お島がてたような顔をして、そこへ坐ったとき、父親がかたい手に煙管きせるを取あげながら訊ねた。お島はうるんだ目色めつきをして、黙っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ひげ旦那だんなは、まゆうすい、ほゝふくれた、くちびるあつい、目色めつきいかつ猛者構もさがまへ出尻でつちりで、ぶく/\ふとつた四十ばかり。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「どうしたんでしょう、こんな弱い体で……。」といった目色めつきで、お作もきまり悪そうに、新吉の顔を見上げた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
対手あいてがソレ者と心安だてに頤杖あごづえついて見上げる顔を、あたかもそれ、わか遊女おいらん初会惚しょかいぼれを洞察するという目色めつきせた頬をふッくりと、すごいが優しらしい笑を含んでじっなが
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
風呂ふろに入ってから、二人はいつかの陰気な居間で休んだのだったが、しばらくすると葉子は細紐ほそひもをもって彼にのしかかって来たかと思うと、悪ふざけとも思えない目色めつきをして
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
寄居虫やどかりで釣る小鰒こふぐほどには、こんな伯父さんに馴染なじみのない、人馴れぬ里の児は、目を光らすのみ、返事はしないが、年紀上としうえなのが、の手を止めつつ、けろりで、合点の目色めつきをする。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女はまだうっとりした夢にでも浸っているような、どこか暗い目色めつきをしながら呟いた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
とばかり、僧は明の手のかげで、ともしびが暗くなりはしないか、とあやぶんだ目色めつきである。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『嘘なもんか。實際だよ。』と松公はひとりで笑つて、『第一おれは金さんに濟まないと云ふ、其も有るからね。が、どつちにしても行く。今夜必然きつと行く。』と胡散うさんくさい目色めつきをして、女を見下みおろす。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
心得こゝろえたか、とかたらせたまへば、羅漢らかん末席まつせきさぶらひて、悟顏さとりがほ周梨槃特しゆりはんどくこのもしげなる目色めつきにて、わがほとけ、わが佛殿ほとけどの道人だうじん問答もんだふより、ふすま男女なんによ睦言むつごと、もそつとおきなされとふ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
目色めつきりんと位はあるが、眉のかかり婀娜あだめいて、くっきり垢抜あかぬけのした顔備かおぞなえ
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
養父はまだ帳場の方を離れずにいたが、おとらは亭主にもことばもかけず、「はい只今」と、お島に声かけて、茶の間へ来て足を投げ出すと、せいせいするような目色めつきをして、庭先を眺めていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それでも寂寞ひっそり、気のせいかあかりも陰気らしく、立ってる土間は暗いから、くさめを仕損なったような変な目色めつきで弥吉は飛込んだ時とは打って変り、ちと悄気しょげた形で格子戸を出たが、後を閉めもせず
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新吉は不安らしい目色めつきで、妻の顔を見込んだ。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お蔦を見向いておもてを撫でると、涼しい瞳で、それ見たかと云う目色めつき
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
当人寝惚ねぼけている癖に、ひと目色めつき穿鑿せんさくどころか。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「可いわねえ。」と、可厭いや目色めつき
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)