トップ
>
目睫
>
もくしょう
ふりがな文庫
“
目睫
(
もくしょう
)” の例文
新しく計画した生活上のプロットが既に
目睫
(
もくしょう
)
に迫っている折からだったので、この行程は最も
速
(
すみ
)
やかに処置して来なければならなかった。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
来るものがあったら
拒
(
こば
)
むまいと思いながら年を送る
中
(
うち
)
、いつか四十を過ぎ、五十の坂を越して忽ち六十も
目睫
(
もくしょう
)
の
間
(
かん
)
に迫ってくるようになった。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あれ程な男も、今は、
目睫
(
もくしょう
)
にせまった当惑と、足もとの
情涙
(
じょうるい
)
に、意気地もなくうろたえて、手を合して、拝まないばかりに。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
午後一時に総員広場に集れの
布令
(
ふれ
)
が廻って、時は
愈
(
いよいよ
)
目睫
(
もくしょう
)
に迫った。山田は蒼白くなっては度々水で口を濡しながら「サア往こう」と昂然として言う。
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
イエスは死を
目睫
(
もくしょう
)
の間に見ていられる。死の間近い人を前にして、事業の相談、金の勘定でもあるまい。死ぬる人にいるものは葬りの備えだけです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
▼ もっと見る
かんじんのこけ猿は、いまだに行方不明。日光御着手の日は、
目睫
(
もくしょう
)
の
間
(
かん
)
にせまっておる。申し訳にこの大之進、腹を
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
始めて
濶眼
(
かつがん
)
を開き、なるべく多くの新材料、新題目を取りて歌に入れたる達見は、趣味を千年の昔に求めてこれを
目睫
(
もくしょう
)
に失したる真淵、景樹を驚かすべく
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「それそれ、遠からずその世が来るのじゃ、夜が明けますぞ、北条、足利の時代が終って、万民の待ち望む中興の時代が来るのは、ホンの
目睫
(
もくしょう
)
の
間
(
かん
)
である」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
遠く望めばブランデンブルゲル門を隔てて緑樹枝をさし
交
(
か
)
わしたる中より、半天に浮かびいでたる
凱旋塔
(
がいせんとう
)
の神女の像、このあまたの景物
目睫
(
もくしょう
)
の
間
(
かん
)
に
聚
(
あつ
)
まりたれば
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
が、右舷のはるかに、黒々と防波堤が見え、星のように
燦
(
きら
)
めくタラント軍港の燈火——いまや、戦艦「レオナルド・ダ・ヴィンチ」は
目睫
(
もくしょう
)
の
間
(
かん
)
に迫ったのである。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
若
(
も
)
しくは試験のはじまる直前であったか、私ははっきり覚えていないのだが、ともかくそういう落第という運命が
目睫
(
もくしょう
)
に迫っている時期に、私はまたもや家出を決行した。
遁走
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
青年の四肢が、ピクリ/\と
痙攣
(
けいれん
)
し始めた。もう、死期の
目睫
(
もくしょう
)
の間に迫っていることが
判
(
わか
)
った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
前野と敵地大崎領とは
目睫
(
もくしょう
)
の間であるから、或は
一揆方
(
いっきがた
)
の剛の者を手引して氏郷の油断に乗じて殺させ、そして政宗方の者が起って其者共を其場で切殺して口を滅して
終
(
しま
)
おう
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「諸君、——国会開設は今や
目睫
(
もくしょう
)
の間に迫りつつある、いやしくも日本国民として生をうけているかぎり学生といえども、われ等はこの国家の大問題を等閑視するわけにはゆかぬ」
早稲田大学
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
二階へ上がると部屋もざっと掃除がすんでおり、均平は縁側のぼろ
椅子
(
いす
)
に腰かけて、
目睫
(
もくしょう
)
の間に迫る雨後の山の
翠微
(
すいび
)
を眺めていた。寝しなに胸を圧していたあの感傷も
迹
(
あと
)
なく消えた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
目睫
(
もくしょう
)
に迫っている生命の危険。いや、生命と職業と全体全部の一大危険。少しもそれらを気がついていないばかりか、夜半の嵐を大きく胎んでいる我が世の春を大浮かれに彼らは浮かれていた。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
この峠に立ったなら、白峰は
指呼
(
しこ
)
の間に見えよう、信州
徳本
(
とくごう
)
峠から穂高山を見るように、
目睫
(
もくしょう
)
の間にその鮮かな姿に接することが出来ないまでも、
日野春
(
ひのはる
)
から駒ヶ岳に対するほどの眺めはあろう。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
今、西村先生ここに論及せざるものは、けだしこれを
目睫
(
もくしょう
)
に
失
(
しっ
)
するものならん。およそ人の万物に霊たるは、その思慮
考按
(
こうあん
)
のあるゆえんなり。これをもってよく古代の
籕文
(
ちゅうぶん
)
を読み、磨滅の
篆字
(
てんじ
)
を解す。
平仮名の説
(新字新仮名)
/
清水卯三郎
(著)
「いよいよ、
目睫
(
もくしょう
)
の間に迫ってまいりました」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
主人信雄と秀吉との開戦が
目睫
(
もくしょう
)
に迫ったと知るとたんに、彼が、はたと当惑したのは、羽柴家へ人質として取られてあるひとりの老母の身であった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
打ちあわすべきことは山ほどあって、着手の日は
目睫
(
もくしょう
)
にせまっているのですから、対馬守はそれどころではない。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そういう危険状態が
目睫
(
もくしょう
)
に迫っているにかかわらず、あえて警告に応じて、舟の針路を転向しようとも、変換させようとも試みないで、霧の中を出て、霧の中を平気で漂うがままに
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ともあれ、
若君
(
わかぎみ
)
のご一
命
(
めい
)
や忍剣や
龍太郎
(
りゅうたろう
)
を、いかにせば
救
(
すく
)
いうるか、それが
目睫
(
もくしょう
)
の大問題であると思う。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや……ご好意は、よく分っている。……だが
年暮
(
くれ
)
ではあるし、貴公にも話した如く、宮本武蔵というものとの大事な試合も、
目睫
(
もくしょう
)
のまに近づいている場合ゆえ」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の弟等も、老臣の経明も、また主なる郎党にしても、すべてが、それを
目睫
(
もくしょう
)
の急として
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その大事を
目睫
(
もくしょう
)
にひかえて、先にもいったとおり、殿には
無稽
(
むけい
)
な伝説などに
囚
(
とら
)
われて、
心神衰耗
(
しんしんすいもう
)
の御容態、また折も折に、俵一八郎の死と築城中の出丸
櫓
(
やぐら
)
の崩壊とが暗合したので
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
目睫
(
もくしょう
)
にひかえておる。お家のため、信ずることを申すのに、何の、
憚
(
はばか
)
りがあろうッ
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
目睫
(
もくしょう
)
の大決戦期に、敵前これを実施するのは無謀とも大胆ともいえる。もし
間隙
(
かんげき
)
に
敗
(
やぶ
)
れんか、敗因の罪は一に敵前土木の工などに、かかずらっていた
迂愚
(
うぐ
)
にありと、世に
嘲
(
わら
)
わるるは
必定
(
ひつじょう
)
である。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
金吾はこの不可解な旅人を前にして、ちょっと
目睫
(
もくしょう
)
のことを忘れながら
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
じつに、武田一
党
(
とう
)
の
致命的
(
ちめいてき
)
な
危難
(
きなん
)
は、
目睫
(
もくしょう
)
にせまっているのだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“目睫”の意味
《名詞》
目と睫毛。
非常に近いこと。目前。
(出典:Wiktionary)
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
睫
漢検1級
部首:⽬
13画
“目”で始まる語句
目
目的
目出度
目前
目標
目貫
目覚
目論見
目下
目論