そね)” の例文
所謂正統派の教うる神は怒り、そねむ暴君であったが、霊訓の教うる神は愛の神父である。しかもそはひとり名のみの愛ではない。
「……そんな裏面の消息を、唯二人の間の絶対の秘密として葬り去るべく……怨みも、そねみも忘れて……学術のために……人類のために……」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
白髯しらひげ土手どてあがるがはやいか、さあたすからぬぞ。二人乘ににんのり小官員こくわんゐんえた御夫婦ごふうふ合乘あひのりなり。ソレをそねみはつかまつらじ。きはいたさじ、なんともまをさじ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其上、朝令暮改、綸旨りんしたなごころを飜す有様である。今若し武家の棟梁とうりょうたる可き者が現れたら、恨を含み、政道をそねむの士は招かざるに応ずるであろう。
四条畷の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
つねにかの家に往って供養を受く、ある時居士遠来の僧を供養するをそねみ、今日の供養は山海の珍物を尽されたが、ただなき物は油糟あぶらかすばかりと悪口した。
たけびに猛ぶ男たちの心もその人の前にはやはらぎて、つひに崇拝せざるはあらず。女たちは皆そねみつつもおそれいだけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「当時我輩は月給二十五円。破格の抜擢で二回続けさまに昇給したんだから、同僚にそねまれていたんだね」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此のエゴの重荷に堪えない人は、路傍に坐して悲しむ事なくそねむことなく、通行者を眺めるがよい。
第四階級の文学 (新字新仮名) / 中野秀人(著)
というそねみも受け、中にも橋本貞吉という乱暴な奴は、時折変な悪戯いたずらをしかけるのであった。
劇団「笑う妖魔」 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかし友人からそねまれて、独立軍に忠実でないという嫌疑を受け、調べられたりしたので、ついに一七七五年に英国に逃げて来て(妻子は置いたまま)、殖民省の官吏になった。
そこがそれ情慾に迷って、思う儘欲しいまゝに貪り、憎いの可愛かあいいの、ねたみだのそねみだの、いつわひがみなどとあだならぬ人を仇にして、末には我から我身を捨てるような事になり
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふだんから塩子の村の者は、この山が発見されたために蒙る利益が、こちらの村にばかり落ることをそねんでいた。その感情を利用して、寅吉をそそのかしたに違いないと思った。
恨なき殺人 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
女同士の朋輩の妬みそねみは珍らしくないことで、その蔭口や悪口をっこにとって、こっちから改めて掛け合いめいたことを言い込むのは、却っておとなげない、穏やかでない。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「心愚痴にして女に似たる故、人をそねみ、富める者を好み、へつらへるを愛し、物ごと無穿鑿むせんさくに、分別なく、無慈悲にして心至らねば、人を見しり給はず」というような、心のつよさを欠いた
それは働きのない人間どもが他人の成功をそねんでいうことで、泥棒をして金を儲けたわけじゃなし、お前、金を儲けようという上は、泥棒をしない限り、手段に選み好みがあるべきわけがない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
此の様な発明をしたと云って学者の間へ出て行って御覧なさい、一時は今もいう通り、世界中の新聞雑誌にまで書き立てられましょう、けれど私の名が揚がれば揚がる丈、学閥のそねみは益々加わり
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
それをおうらまをすのではない。嫉妬ねたみそねみもせぬけれど、……口惜くちをしい、それがために、かたきから仕事しごと恥辱ちじよくをおあそばす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
新吾 近所ばかりでなく、留守番の奴等にもそねまれますよ。はゝゝゝゝゝ。
正雪の二代目 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
道理はずれた憎しみそねみで。彼奴きゃつが邪魔じゃと思うた揚句が。何のおぼえもない人間をば。巫女や坊主や役人ばらに。賄賂わいろ使うて引っくくらせます。有無うむを言わさずキチガイ扱い。国のおきての死刑にさせます。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そねめ/\か? ハッハヽヽ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ぜんから居る下役の媽々かかあども、いずれ夫人とか、何子とか云う奴等が、女同士、長官の細君の、年紀としの若いのをそねんだやつさ。下女に鼻薬を飼って讒言つげぐちをさせたんだね。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どの道、うつくしいのと、仕事の上手なのに、ねたそねみから起った事です。何につけ、かにつけ、ゆがみ曲りに難癖をつけないではおきません。処を図案まで、あの方がなさいました。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ねたそねみは、まだこうまで惚れない内だと考えるで。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)