トップ
>
狷介
>
けんかい
ふりがな文庫
“
狷介
(
けんかい
)” の例文
「イゴッソー」というのは郷里の方言で「
狷介
(
けんかい
)
」とか「強情」とかを意味し、またそういう性情をもつ人をさしていう言葉である。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
狷介
(
けんかい
)
不覊
(
ふき
)
なところがある。酒を飲めば、大気豪放、世の英雄をも
痴児
(
ちじ
)
のごとくに云い、一代の風雲児をも、野心家の
曲者
(
しれもの
)
のごとく
誹
(
そし
)
る。
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
腕に覺えのある良い職人が、酒と
狷介
(
けんかい
)
に
煩
(
わずら
)
はされて、初老を過ぎて貧乏から脱けきれないみじめさは、平次にもよく解るやうな氣がしました。
銭形平次捕物控:120 六軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
読んで行く
中
(
うち
)
に、
狷介
(
けんかい
)
にして善く
罵
(
ののし
)
り、人をゆるすことを知らなかった伯父の姿が鮮やかに浮かんで来るのである。羅振玉氏の序文にはまたいう。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
もっと
狷介
(
けんかい
)
な闘志満々たる態度と、舌端火を吐く熱弁家だと思っていたが、見たところ恰幅はまるで
村夫子
(
そんぷうし
)
然としているしその声調もひどく穏やかで
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
赤木医師は風貌に似ず
狷介
(
けんかい
)
な性格で、気に入らないとがみがみ叱ったり、診察を拒否したりするものですから、町内の評判はあまり良くないようです。
凡人凡語
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ぼくは、彼が
狷介
(
けんかい
)
なひねくれた態度を固執せずに、気持ちよくぼくにこたえてくれたことがむしょうに
嬉
(
うれ
)
しかった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
もちろん、性格の相違もその因をなしていた。忠右衛門は、穏和で寛宏であったが、左衛門は
精悍
(
せいかん
)
で
狷介
(
けんかい
)
であった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ウルリーケの顔は、血を薄めたような灯影の中で、妙に
狷介
(
けんかい
)
そうな、鋭いものに見えた。が、二人が座に着くと、それを待ち兼ねたように切りだした。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
随
(
したが
)
って土佐出身の名士には
親昵
(
ちかづき
)
があったが、文人特有の
狷介
(
けんかい
)
と
懶惰
(
らんだ
)
とズボラが累をなして同郷の先輩に近づかず
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それが故人は
厭
(
いや
)
だったからだそうであるが、故人のそう云う
狷介
(
けんかい
)
な性質が、処世的には大いに
禍
(
わざわい
)
したのであろう。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
削
(
そ
)
ぎ立てたようなトゲトゲした顔を
狷介
(
けんかい
)
にふり立て、けわしく眼を光らせながら、そっぽをむいている。
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ある人にとっては、
巷
(
ちまた
)
の医師柘植宗庵であり、ある人にとっては、いながらにして各種の商売を支配し、ひそかに驚くべき利を上げてゆく、
狷介
(
けんかい
)
なる江戸の富豪柘植宗庵であった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
孤高
狷介
(
けんかい
)
のこの四十歳の天才は、憤ってしまって、東京朝日新聞へ一文を寄せ、日本人の耳は
驢馬
(
ろば
)
の耳だ、なんて
悪罵
(
あくば
)
したものであるが、日本の聴衆へのそんな罵言の後には、かならず
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一人はKと云つて、豪放な人物、今一人は津下正高といつて、
狷介
(
けんかい
)
な人物だといふことであつた。弟は後に才子を理想とするやうになつたが、当時はまだ豪傑を理想としてゐたのである。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
從つて何方かといふと
狷介
(
けんかい
)
な、容易に人に親しまぬ態度も有つた。
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
頭の鋭い
狷介
(
けんかい
)
な老人で、非常な毒舌家であつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
才学たかく、奇舌縦横ですが、生れつき
狷介
(
けんかい
)
で舌鋒人を刺し、
諷言飄逸
(
ふうげんひょういつ
)
、おまけに、貧乏ときていますから、誰も近づきません。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
腕に覚えのある良い職人が、酒と
狷介
(
けんかい
)
に
煩
(
わずら
)
わされて、初老を過ぎて貧乏から脱けきれないみじめさは、平次にもよく解るような気がしました。
銭形平次捕物控:120 六軒長屋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
末路
寂寞
(
せきばく
)
として
僅
(
わずか
)
に
廓清
(
かくせい
)
会長として最後の幕を閉じたのは
啻
(
ただ
)
に清廉や
狷介
(
けんかい
)
が
累
(
わざわ
)
いしたばかりでもなかったろう。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
……自分では知らぬうちに、彼はこうして孤独好きな、幾らか
狷介
(
けんかい
)
でかたくなな人間になっていった。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
隴西
(
ろうさい
)
の
李徴
(
りちょう
)
は博学
才穎
(
さいえい
)
、天宝の末年、若くして名を
虎榜
(
こぼう
)
に連ね、ついで
江南尉
(
こうなんい
)
に補せられたが、性、
狷介
(
けんかい
)
、
自
(
みずか
)
ら
恃
(
たの
)
むところ
頗
(
すこぶ
)
る厚く、
賤吏
(
せんり
)
に甘んずるを
潔
(
いさぎよ
)
しとしなかった。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
老巧
狷介
(
けんかい
)
の刀士、もろに足をあおって栄三郎の頭上へ!……飛刀、白弧をひいて舞いくだった瞬間、体を斜めに腰かわした栄三郎の剣、チャリーン! 青光一散、見事に流すが早いか
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
いずれ写真ぐらいは見るだろうが、俺は父によく似た
狷介
(
けんかい
)
な容貌を持っている。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
大町
桂月
(
けいげつ
)
、福本日南等と交友あり、桂月を
罵
(
ののし
)
って、仙をてらう、と云いつつ、おのれも某伯、某男、某子等の知遇を受け、熱烈な皇室中心主義者、いっこくな官吏、孤高
狷介
(
けんかい
)
、読書、追及
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ともに
莱州
(
らいしゅう
)
の
産
(
うま
)
れだが、武芸はいずれ劣らない。
慨世
(
がいせい
)
の気があり過ぎてかえって世に
容
(
い
)
れられぬ
狷介
(
けんかい
)
の男どもだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
首尾よく合格して軍人となっても
狷介
(
けんかい
)
不覊
(
ふき
)
の性質が
累
(
わずらい
)
をなして到底長く軍閥に寄食していられなかったろう。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
今の玄龍はその聟養子で、先代に
優
(
まさ
)
ると言はれた人氣でした。少なくとも男つ振りも辯口も、養父の
玄策
(
げんさく
)
の粗野で
狷介
(
けんかい
)
なのとは、比較にならぬほどの文化人だつたのです。
銭形平次捕物控:196 三つの死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お
髯
(
ひげ
)
の伯父の
跋
(
ばつ
)
によれば、死んだ伯父は「
狷介
(
けんかい
)
ニシテ
善
(
よ
)
ク罵リ、人ヲ
仮
(
ゆる
)
ス
能
(
あた
)
ハズ。人マタ
因
(
よ
)
ツテ之ヲ仮スコトナシ。大抵視テ以テ狂トナス。遂ニ自ラ号シテ斗南狂夫トイフ。」
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
あの人は本当は
狷介
(
けんかい
)
なのかもしれない。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「それは、
狷介
(
けんかい
)
といふものです。」
清貧譚
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
いわゆる世に
容
(
い
)
れられない性格が、自然、世に対してそう云わせるものらしい。元来従順な典膳には、正直、師のそういう
狷介
(
けんかい
)
なところには、好きになれないところもあった。
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
例えば
西園寺
(
さいおんじ
)
侯の招宴を辞する如きは時の宰相たり侯爵たるが故に謝絶する詩人的
狷介
(
けんかい
)
を示したもので政治家的または外交家的器度ではない——という、こういう意味の手紙であった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
……酒や
我儘
(
わがまま
)
だけならよいが、桔梗は、あんな口達者で
狷介
(
けんかい
)
な人間は見たこともあるまいから、もし、彼の強引なわるさになど
懸
(
かか
)
らねばよいが、などと妙な不安にも襲われたりした。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二葉亭は本来
狷介
(
けんかい
)
不覊なる性質として迎合屈従を一要件とする俗吏を甘んじていられないのが当然であって、八年の長い間を官報局吏として辛抱していたのは、上に自由なる高橋健三を
戴
(
いただ
)
いて
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
……あんな
狷介
(
けんかい
)
な者のことばを、やすやす、お信じあそばす和子様も軽がるしい
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——延は
矜高
(
きょうこう
)
。儀は
狷介
(
けんかい
)
」
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“狷介”の意味
《名詞・形容動詞》
強情で自分の考えを押し通すこと。他者と打ち解けないこと。
(出典:Wiktionary)
狷
漢検1級
部首:⽝
10画
介
常用漢字
中学
部首:⼈
4画
“狷介”で始まる語句
狷介不羈
狷介不覊
狷介味
狷介固陋
狷介孤嶂