混血児あいのこ)” の例文
旧字:混血兒
混血児あいのこめ、そんなつもりならキングだけじゃァ済まねえぞ、とかなんとか吐かしながら、まるで半狂人のようになって飛び出して行った。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
どこを毎日遊んで廻るのか、不良少女の混血児あいのこちょうは、派手に着かざった身なりをして、相変らず二かんに口実をもうけては出歩いている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立派な日本人ですが、さすがに混血児あいのこの父親だけあって、海外生活でも送った人らしく人をそらさぬゆったりとした応対でした。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
何んとなく混血児あいのこではないかと思わせる節がないではありませんが、全体の印象が何んとなく端麗で、宗教的な美しさを持って居るのも不思議です。
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
小鉄を混血児あいのこだなんていったのは、あながちに人の悪口ばかりでもありません。小鉄は実際英国人と日本人とのあいだに生まれた女であったんです。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
生れた仔猫たちは混血児あいのこで、鼈甲猫のおもかげを幾分か備へてゐるものだから、割合に希望者が多かつたけれども、時にはそうつと海岸へ持つて行つたり
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ブリオシユは、カステラとパンの混血児あいのこみたいな菓子だが、舌ざわりは天下一品である。マロン・グラアセは栗の砂糖漬で、日本の甘納豆に当るだらう。
甘い話 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
早よう云うてみたなら詐欺インチキ盗人ぬすと混血児あいのこだすなあ。商売の中でも一番商売らしい商売かも知れませんが……。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
届書とどけしょを出す時、種類という下へ混血児あいのこと書いたり、色という字の下へ赤斑あかまだらと書いた滑稽こっけいかすかに胸に浮んだ。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、身なりはちゃんとしていますから、どこか相当な家の奥さんでしょう。のみならず二三度見かけたところではどこかちょっと混血児あいのこじみた、輪廓りんかくの正しい顔をしています。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
回鶻人の後裔達は——土耳古トルコ人との混血児あいのこだが——燐光を纒った狛犬を彼らの神の本尊とし、狛犬を祭った神殿に対し、もしも無礼を加えたものは恐ろしい神罰をこうむるだろうと
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二人の男は、たしか支那人らしいが、もう一人は、洋装した混血児あいのこのような女だった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
海豹あざらし海象ウォーラス混血児あいのこだ。学名を“Orca Lupinumオルカ・ルピヌム”といって、じつにまれに出る。その狂暴さ加減は学名の訳語のとおり、まさに『鯨狼』という名がぴたりと来るようなやつ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「うまく云ってらあ。君の子供だろう。混血児あいのこは……早いって云うからな。」
そうでなければ印度とそれに近い他人種との混血児あいのこに相違ない。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あのえびと蜘蛛の混血児あいのこみたいなやつさ
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
玄関へ出て見ると、混血児あいのこらしい顔をした廿五六の青年が、火のついた巻煙草をじだらくに口にくわえたまま、入口のドアにもたれて立っていた。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
生れた仔猫たちは混血児あいのこで、鼈甲猫のおもかげを幾分か備へてゐるものだから、割合に希望者が多かつたけれども、時にはそうつと海岸へ持つて行つたり
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
九州のこうこういうところで知り合った混血児あいのこの娘と、結婚したいなぞといい出したら、母なぞはびっくりして、眼を回してしまうかも知れません。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
あどけない笑顔を近づけて、伽羅油きゃらゆのにおいに馬春堂をせさせたのは、獄門橋で見た時とはまるで違って、いかにもおぼこらしい、混血児あいのこのお蝶であります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最近ラッドレー附近の一種馬場に於て飼育せられし一牝馬ひんばは、今より三年以前に見世物用の斑馬はんばと交尾して一匹の混血児あいのこを生み、飼主をして奇利を博せしめし事あり。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この二つの小さなきずを見つけ出して、神奈川生まれだけにおそらく混血児あいのこだろうなどと悪口をいう客もあったが、それとても別に取り留めた証拠があるのではなかった。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それじゃ善と悪の混血児あいのこはというとほとんど出て来ないんだから、至極しごく単簡たんかんで重宝であります。こう云う訳で一家町内芝居へ出てくるような善人で成り立っていたのであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一人は眼の鋭い毛の赤い、ひぐまのような感じのする若い男、一人は東洋人との混血児あいのこらしい、栗色の髪で額を隠し、宝石をうんとちりばめたギラギラする洋服を着た、妖婦型の若い婦人です。
天才兄妹 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
混血児あいのこらしい女も、いつの間にか逃げ出していて捕えることが出来なかった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そして可哀そうに大病だ。しかも病気は神経病だ。脅迫観念に捉らわれている。それから女中に逢って見ると、一見土耳古トルコの女だけれど支那人のようなところもある。しかしどのみち混血児あいのこだ。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さあね。……しかしかくこの人は混血児あいのこだったかも知れないね。」
蜃気楼 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
カフェーで混血児あいのこと綽名されてるそうだった。
「東水の尾の混血児あいのこ娘たちア、何であんなところにいつまでもこびり付いてるんだろうなア、一匹売り、二匹売り……もう馬だって一匹しか残ってやしねえや!」
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
呂宋兵衛は、まえにもいったとおり、南蛮なんばん混血児あいのこでキリシタンの妖法ようほうしゅうする者であるから、層雲そううんくずれの祈祷きとうも、じぶんが信じる異邦いほうの式でゆくつもりらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「似ているかどうか分らないけれど、でもみんなが私のことを混血児あいのこみたいだってそう云うわよ」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
両方の肱や膝は大きく破れたり泥まみれになったりして、ボタンが二つ程ちぎれて、カラーが右の肩にブラ下っている姿は恰度ちょうど酔漢よいどれと乞食との混血児あいのこを見るようである。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
丸くじゅくした、温室のメロンのような円満な日日を送っているふうだったが、そのころ、山川が、混血児あいのこじみた若い娘と、お茶の水の焼跡を歩いているのを見たというものがあった。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
かれは、和田門兵衛わだもんべえという、長崎からこの土地へ流れてきた南蛮なんばん混血児あいのこであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紐育の中央郵便局に居りましたのはその途中で逃げ出していた時分の事で、頭髪かみを酸化水素で赤く縮らして、くろ香水こうすい身体からだに振りかけて、白人と黒人の混血児あいのこに化けていたのです。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
相手は何処どこの猫か分らなかったが、生れた仔猫たちは混血児あいのこで、鼈甲べっこう猫のおもかげを幾分か備えているものだから、割合に希望者が多かったけれども、時にはそうっと海岸へ持って行ったり
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
保儀使ほぎしといえば軍人でも佐官に過ぎない。のみならずこの宣賛せんさんは、西蕃せいばんとの混血児あいのこである。ヒゲは赤く、ちぢれ毛で、鍋底なべぞこのような顔にまた念入りにも雄大なる獅子ッ鼻ときている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だって、帝劇の女優だって云う話じゃないか。………え、そうじゃないのか、活動の女優だと云ううわさもあるし、混血児あいのこだと云う説もあるんだが、その女の巣を云い給え。云わなけりゃ帰さんよ」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
唇を噛み、黒髪を乱し、かれの背後から組みついているのは混血児あいのこのお蝶。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうさ、まだあたしの方が混血児あいのこのように見えるわよ」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ヤ、呂宋兵衛るそんべえ混血児あいのこだ。京都の南蛮寺なんばんじにいるバテレンとそっくり……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「トム? ……混血児あいのこかい」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)