気振けぶり)” の例文
旧字:氣振
貧乏咄をして小遣銭こづかいせんにも困るような泣言なきごとを能くいっていても、いつでもゾロリとした常綺羅じょうきらで、困ってるような気振けぶりは少しもなかった。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
もしそれが日頃の誓約せいやくや態度とちがって、裏切るようなことでもあったら、嘲笑わらってやろうという気振けぶりさえ見えないこともない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今までドンナ悲況に陥っておりましても、私を見ると直ぐにニコニコして何か話かけたりしておりましたものが、この頃はソンナ気振けぶりも見せませぬ。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それからしばらくたって、鶴見はまた何か忘れていたことを思い起したという気振けぶりを見せて、そばの粗末な本立から、去年の日記帳を引きずり出して繰っている。
こう糸的きみはひとりで目の覚めた顔をして澄ましているが、内で話した、外で逢ったという気振けぶりも見せない癖に、よく、そんな、……お京さんいい名だなあ
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、たつてといふわけぢやないんだ」と、紅庵は再び表面うわべだけもぢ/\とためらふ気振けぶりをみせたが
雨宮紅庵 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
ほかの書生さんたちもそういう見送人に対して遠慮するらしい気振けぶりも見せようとはしない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
文化生活の基本であるこれらの問題について新しい運動を起される気振けぶりさえありません。
婦人指導者への抗議 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
此方こちら暢気のんきなものだから那様こんなこととはちつとも知らない、山田やまだまた気振けぶりにも見せなかつた、けれどもさきにも言ふごとく、中坂なかさかに社をまうけてからは、山田やまだまつた社務しやむあづからん姿であつたから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もし貴様が途中、穏かならぬ気振けぶりでもしようものなら、その瞬間に、そのでぶを二つに斬られてしまうのだ、おどかしではない、事実を言うのだ、よく見て置かっしゃい、あの長いのを——
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何事もなかったような気振けぶりで貞昌は座に帰った。そして静かな声でいった。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
併し岩や恋は思案のほかという諺もあって、是ばかりは解りませんよ、そんならばうちにいて気振けぶりでも有りそうなものだったが、少しも気振を見せない、もっとしゅう家来だから気をつめるところもあり
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「何だえ、今の音は?」お米がそこに出て見ると、表二階の客、蜂須賀家の森啓之助が、妙な気振けぶりでスタスタと植込みの中へ隠れて行った。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時々鍬を休めてボンヤリとそこいらを見まわしては又、思い出したように仕事にかかるらしい気振けぶりが見えて来た。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うるさい都会を避けて田園を楽しむような気振けぶりを見せたりして、そんなことを少しずつ書いたりしてもいた。
されども渠はいささかも心にましきことなかりけむ、胸苦しき気振けぶりもなく、しずかに海野に打向いて
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余り突然だったので、故郷くにに急な用事でも出来たかとくと、脚気かっけだといった。ソンナ気振けぶりはそれまでなかったのだからうそとは思ったが、その日ぎりで来なくなってしまった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
親たちも家になくてならぬ娘であるから、自分が結婚を望む気振けぶりもないのをい事にして格別勧めようともしなかった。そうして自分は出来るだけ従順に働いて、せわしい家業に心を尽していた。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
そこへゆくと、旅川周馬、腕に器量はないが人を食ってもいるし、鼻ッ先の機智もあるので、ギョッとした気振けぶりも見せずに
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されども渠はいささかも心にましきことなかりけむ、胸苦むねぐるしき気振けぶりもなく、静に海野に打向うちむかひて
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうかといって他に相当な生活の道を求める手段を講ずる気振けぶりもなかったから、一図いちずに我が子の出世に希望を繋ぐ親心おやごころからは歯痒はがゆくも思いあきれもして不満たらざるを得なかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
……が……しかし、Wがそんな気振けぶりでも見せるような男でない事は無論であった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あたかも十年の知己ちきを迎えたようですらある。一国一城の主といえばとかく威容を作りたがるものなのに、そんな気振けぶりはみじんもない。しかも予想以上その風采ふうさいは至って堂々たるものではなかった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
素振そぶり気振けぶりが精一杯、心は通わしたでしょうのに、普通なみの人より、色も、恋も、百層倍、御存じの貴方でいて、ちっとも汲んでお遣んなさらない!——いいえ、小雪さんの心は、よく私が存じております。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何かしら重大な秘密を隠しているらしい気振けぶりを見せた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長崎へ行かないかと云えば、一緒に逃げて来そうな気振けぶりもある。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と取っても附けない気振けぶりをしながら
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『誰か、そんな気振けぶりを、見たものはねえか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)